インターバル効果の実例報告①
この度ご縁があり、有名実業団チームの方の指導をさせていただくことが出来ました。
日本ホビーレース界の頂点の一角を担う、言えば誰でも知っているあのチームです...!
そこで、今回はインターバルを科学的根拠に基づいて勧めるいつもの記事ではなく、既に高度にトレーニングしている選手がインターバルを行った場合、テストの数値にどのような変化がみられるかを一例としてご紹介していきます。
短期間インターバルプラン
さて、今回ご依頼いただいたのは
「短期間インターバルプラン」
という、約8週間で16回のインターバル(週2回)を行うものです。
私の方で作成、解析、フィードバックを行うのはインターバルメニューのみになってしまいますが、私の研究の真髄であるインターバルを通常のプランよりお得にご提供さていただいております。
(あくまで約8週間なので、間に都合や体調不良でトレーニング出来ない週があって期間が10週間程度になってしまってもOKです。)
インターバル実施の度に解析、フィードバックを実施し、必要に応じてワーク・レスト負荷、時間の調整やメニュー自体の変更を行い、基本的には負荷を漸増していくものになります。
対象者の詳細
・30代後半 男性
・少なくとも4年以上の自転車競技歴あり
・週末のほか、平日 2-3日の練習を実施
(週1回いわゆるVO2max負荷のメニューも)
・期間前でVO2max 63-65ml/kg/min ※1
・過去の富士ヒルを60分台後半で完走
※1 GARMIN算出ではなく、テストの数値に基づき複数の計算式で推定。
個人の特定に繋がり、選手の競技活動に支障が出るおそれがあるため、あまり詳細には触れませんが、それでも既にかなりハイレベルはトレーニングステータスを有する方であることは十分にお分かりいただけるでしょう。
とりわけVO2maxに関しては私がこれまで参照してきた研究を元に算出すれば上記の数値になるものの、GARMINでは65-70ml/kg/minにまでなるようです。
正確さはともかく、多くの人が参考にしているこの指標でこれだけの数値が出る選手はごく僅かです。
よって、研究として正式な定義ではありませんが、日本人としてはWell-trained(よくトレーニングしている)部類として差し支えないと個人的には考えています
なぜインターバルなのか
さて、今回の選手のニーズとして
①FTPの頭打ちを打ち破りたい
②高出力を間欠的に繰り返す状況に強くなりたい(いわゆる"インターバル耐性"をつけたい)
という2点がございました。
今回の記事では①を中心にみていきましょう。
まず、これまでも週1程度、FTPペースでのワークアウト(SSTなど)を行っているにも関わらずFTPが頭打ちしている点から、VO2maxを更に向上させることでFTPにも変化が狙えるのでは?と仮定しました。
運動生理学的にみれば言うまでもなく、FTP(≒MLSS,OBLA程度)はVO2max(≒PPO)を超えて上昇することは通常考えにくく、更にVO2maxと20分TTの平均パワーに有意な相関性が認められている点から、今回のケースではインターバルトレーニングを用いてVO2maxを向上させることはおそらく有効である、と判断しご依頼を引き受けさせていただく運びとなりました。
VO2maxの重要性については以前に別の記事で解説している上、クソラジオ(ペダミミ)でもしつこいほど喋らせていただいているため、別途ご覧いただければと思います。
(無料記事です。エビデンスに関してもこちらをご参照ください。)
もちろん、実際にはVO2maxを高めたところですぐにFTP向上に直結するかと言われれば100%そうではなく、また別のインターバル、別の練習が必要となる場合がほとんどですが、これまでの理由から少なくとも今回のインターバルプランではVO2maxそのものの向上をゴールと設定しました。
2種類のテストでフィットネスの向上を追跡
今回の「短期間インターバルプラン」では期間前後にそれぞれ1週間程度お時間をいただき、2種類のテストを実施していただきました。
開始前のテストはメニューの負荷設定をより正確に行うため、そして終了後は16回のインターバルを経て、どの程度体力(主にVO2max)が向上したかをパワーとして確認していただくためです。
実施していただいたテストは
・RAMP test(1分毎に20w漸増)
・PPO test(3分毎に○w漸増)
の2種類になります。
どちらも疲労困憊に至るまで頑張っていただき、得られた1分,3分の最大パワーをそれぞれ指標として扱います。
このうち100%VO2max到達時のパワーをPPO(Peak power output) と定義しており、私はVO2max相当パワーなどと呼んだりしています。
つまり、PPOの上昇=VO2maxの上昇と考え、期間前のテストより期間後でPPOが上昇していればVO2maxも向上した、と判断するわけです。
(別途計算式に当てはめて算出もしています。)
※PPOとテストについての詳細はこちら
RAMP testも行う理由は主に、よりインターバルの強度設定を更に正確にするためですが、ここでは割愛します。
注目のテスト結果は...
お待たせしました。
こちらが前後のテスト結果の比較になります。
※どちらも左がBefore,右がAfter
・RAMPテスト(60secパワーに注目)
・PPOテスト(3mパワーに注目)
このように、
・RAMP test (60sec)
362→376w
・PPO test (3min)
313→327w
と、どちらも+14wもの向上がみられました。
※漸増負荷タイプのテストであるため、60sec,3minのベストパワーではありません。
今回は測定していませんが、実際にMMPテストを行えばこれよりずっと上の数値が出ると期待されます。
※トレーニング期間前に各テストを2回以上実施し、テスト様式に対する慣れで生じる結果の上振れを防いであります。
単純に数値だけを見ても凄いのですが、
・対象者が開始前に既に高いVO2maxを有していた
・以前から週1回程度のいわゆるVO2maxインターバルを実施していた
これらを考慮すると、個人的には有意どころか顕著な向上と言って差し支えないと感じています。
60secパワーももちろんですが、このレベルの選手でPPOテストのパワーが15w近く向上するのいうのは正直、予想もしていませんでした。
研究室では酸素摂取量(VO2)を計測しながらこれらのテストを行えるため、VO2maxの向上がダイレクトに観察出来るのですが、パワーメーターしか使えない環境においては漸増負荷テストの数値だけでは進捗がはっきりと確認できないことも実はゼロではありません。
しかしながら、期間前後でここまではっきりとパワーとして見える形で有意差があらわれている以上、VO2maxにも有意な向上が生じている、と結論付けて良いのではないでしょうか?
何をしてここまで向上したのか?
本当にインターバルだけでここまで上がったの?と思われる方も多いと思います。
が、冗談抜きで週2回、合計16回のインターバル以外に特別な練習は行っておりません。
もちろんインターバルがない日にも自転車には乗っていただきましたが、基本的にLSDペースでの走行のみで何もメニューは実施されていませんでした。
まさしくPolarizedな強度配分と言って良いでしょう。
また、既に日常的に"FTPを指標としたいわゆるVO2maxインターバル"を実施されていた方でこれほどの向上が確認された、という点も注目に値します。
これまでのメニューをじっくりとは拝見していないため何も断定は出来ませんが、この結果は期間内に実施していただいたインターバルの有効性を部分的に裏付けるものではあるでしょう。
メニューについての詳細は申し上げられませんが、今回はLong(>1minのワーク時間),
Short(<1minのワーク時間)のメニューにそれぞれ週1回ずつ取り組んでいただきました。
Shortに取り組むことで2つ目の課題であるインターバル耐性に関しても、期間の後半ではデータからもご本人の感想からも、改善が見受けられたように感じています。
おわりに
正直、既に高度にトレーニングされている選手のVO2maxを有意差が生じるほど高められるのか、私自身かなり不安な気持ちはありました。
が、選手が本当に良く頑張ってくれ、再設定した負荷にも果敢に(時に吐きながら)挑んでくれたおかげで、一定以上の成果を上げることが出来ました。
頑張ってくれた選手にはこの場を借りて改めて御礼申し上げます。
また、選手の感想として
「メンタルの成長を感じる」
「結果が出るまでインターバルの効果に半信半疑だったが、インターバル信者になりつつある」
「テスト結果を受けて、またインターバルの負荷が上げないとな、とニヤニヤしてしまう」
と、非常に前向きな意見をいただくことも出来ました。
これらから、インターバルが選手の精神面にも好影響を与えることはまず間違いないと言えます。この点は断言して良いでしょう。
また1人、正しい道へと導いてしまいました。
と、冗談はさておき今回のインターバルプランは大成功だったと言えます。
プロの作るインターバルを体験してみたい方、
FTPの頭打ちを感じておられる方、
その他の方でもご興味のある方はお気軽にお問い合わせください。
(ご依頼いただいた選手の競技シーズンまでかまりにも時間がない場合など、ご希望に添えないこともございます。
また私が指導人数の限界に達している場合、指導開始まで少々お時間をいただく場合もございます。まずは一度ご相談ください。)
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