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白い花々に救われる理由│介護業界で働くことは難しい

デイサービスで働いては打ちひしがれる日々が続いています。私の仕事は「利用者さんと楽しく運動すること」。彼らは常に何らかの悩みを抱えていますし、痛いところが無い人はいません。

運動する体制が整っていなく、レベルもバラバラすぎる状態でのグループレッスンです。利用者さんは日々いろんな体調不良に悩まされ、満足に運動できる状況ではありません。

メンタルがえぐられる日もあります。年を重ねて、とにかく機嫌と体調が悪い人が多すぎるのです。

そんなモヤモヤを抱えていると、目に留まる花々に変化がありました。なんだか「白」に惹かれるのです。これまで白い花に注目したことはありませんでした。

今回のnoteのテーマは、向いていないかもしれない仕事の話と白い花々の写真です。

よろしければ、お付き合いください。




1.なぜか白い花が気になる


チューリップの魅力に気づいた今年の春、いろんな色に出会いました。そんなある日、荒れ地でチューリップを見かけ、その白さにハッとしました。この写真がはじまりだったと思います。

2024.4 荒れ地に咲くチューリップを
綺麗と思った日から
はじまったような気がします。




2.介護施設で運動するということ


私はデイサービスで介護予防のための健康教室を担当しています。栄養や運動などで90分。毎月テーマを変えています。骨粗鬆症対策や筋力キープ、血流改善、腸活など。新しい試みで、スタッフさんからは面白そうだと期待されていました。

しかし、その90分をどう過ごすかは利用者さんの自由です。自由を重んじる施設では運動したくない人はしなくてもいいのです。

どうなるかというと、

体調不良でお休みされる方が多く、マンツーマンになる日があります。

先日、利用者さんのひとりが「もっとしっかり体を動かしたい」と言ったそうで、彼女は参加しなくなりました。強度が物足りないそうです。90分スタッフと散歩に出かけたりします。

その一方で、運動は大っ嫌いだと参加しない人もいます。

喋りだしたら止まらない人もいます。なかなか運動に戻ってこれません。

途中で何人か買い物に行く日もあります。

ある日は30分だけ体操をして、残りの60分は全員で畑に行きました。


私は一体、何をしているんでしょうか。90分用に考えてきたこと準備してきたことが無駄になることが多く、無力感に繋がります。私のグループレッスンは参加率が低い、という評価です。


2024.4 公園の白い藤棚。
毎年楽しみにしている藤も
白だとガラリと印象が変わります。


母の通うデイサービスでは筋トレマシンがあり、待ち時間はテレビ体操、バーで自主トレ、口腔トレ、脳トレ。

施設で決められたルーティンをこなす母の方がよっぽど身体を動かしているという現状です。それでも確実に、体力と筋力は低下しているのです。



3.日々えぐられるメンタル


デイサービスには痛いところが無い人はいません。介護度も違い個人差が大きすぎてグループレッスンで安全に運動するのは難しすぎるのです。

そして80才を超えて機嫌の良い人は少ないです。問いかけへの反応も少ないです。常に不安や不満を抱えていて、そこだけに目を向けるだけでなく「ごきげん」に生きる手助けをしたいと思っていました。

参加率が低いということは、その気持ちは何も伝わらず、嫌われてしまったようです。

2024.4 つつじ。
天気の良い朝、真っ白でした。
つつじ街道のようでした。


けれど私は、季節に合った食べ物があるように、年齢にもあると思うんです。食べ方も運動も年々アップデートさせる必要が。

若い頃と同じように生きる必要はない。年を重ねたからこその賢い食べ方や運動の仕方があると、みんなで考えていきたかったのです。

難しいとは分かっていますが、そういう健康について何か考える時間になればと頑張っていました。




4.介護予防って何ができるんだろう


私の働く職場では介護予防に力を入れています。そこが、母の通うデイサービスとは違うと思って、いいなと思って働きだしたはずでした。けれど働いてみて高齢化社会の現実を知りました。


2024.4 モッコウバラ。
雨の日。散ってしまう前に
撮影できて良かったです。


 

誤解を恐れずに言うと、介護予防という言葉の浅はかさを理解しました。ずっとフィットネスクラブで働いていて、介護予防という言葉が希望のようだと思っていました。頑張れば予防できると思っていたんです。

けれど努力なんてできないという現実に直面します。個人の頑張りだけでは難しいということも。頑張った先の世界を知らなかった。



5.この仕事を続けられるだろうか


高齢者向けの運動をしたらどうかとか、配置を変えたらとか、音楽に合わせてとか、スタッフさんが色々と提案してくれました。そのどれもが何となく違う気がして、根本解決にならないというか、そこも脱力感に繋がります。

介護業界は向いていないと分かっても、辞めたいとは言い出せず。次の仕事を探す気力も無く。


2024.4 モッコウバラのアーチ。
何かの架け橋になりたいと
思っていたけれど、
難しいのかもしれません。




6.常識から離れたかったけど


意外性に惹かれたのかもしれない。ふと思いました。

チューリップ、つつじ、藤、モッコウバラ。これらの花には、イメージカラーがあると思うんです。その一般的なイメージ以外の「白い花」が与える意外性。珍しさ。新鮮さ。

高齢化社会の抱える問題は、これまでの常識の中に在るのではないかと思いました。


2024.5 鉢植えの白あじさい。
朝日を浴びて眩しく見えました。


後日、健康教室が上手くいきました。

スタッフさんの意見を参考に、でも私のやりたいことも取り入れて。間を取った形です。

話し合いの中で最終的に「らしさを忘れず、貫いてほしい」と言ってもらえました。

年を重ねても自由を望み、それが難しくなっていく姿を目にする毎日は辛いです。一般的な高齢者向けの運動が自由に繋がるとも思えない。

それまでのやり方を踏襲しながら、新しい道も探したいのです。介護業界の常識に違和感を感じるからこそ、何か違う道を見つけられるかもしれません。


新しいことをはじめて、それを続ける。常識にとらわれすぎなくてもいい。けれど柔軟に取り入れる。白い花々が初心のようなものを思い出させてくれたような気がします。

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