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【国語】文章のない絵本に文章をつける

読解に出てきた「ライオンとねずみ」。
妻がいい絵本を見つけてきてくれました。

絵が本当に素敵だったので、作者があえてカットした文章を逆に付け足してもらうことにしました。「本を読む」だけでなく「文章を書く」こともなるべくたくさんやってほしいと日頃から思っていますが、これはうってつけの本でした。

私もいっしょに書きました。書き始めると、自分なりのアイデアやこだわりも出てきて思ったより時間がかかりましたが、とっても楽しめました。

作者のあとがきもぐっとくる内容です。
「弱いものが強いものを助けるという楽しさだけでなく両者の心の広さを発見した。だから、表紙には互いに目線を交わすライオンとねずみをたっぷりスペースを使って描いた」(要約)

そこから、私の中でそれぞれのキャラクターが浮かび上がってきたのですが、「心が広い」だけでは私の中で納得しきれなかったので、自分なりのライオンを描いてみました。

いつか娘に、もう少し大きくなってからもう一度読んでもらいたいので、ここに載せて記録します。試行錯誤して書き直している推敲跡もいっしょに。

夜が明ける少し前、一匹のねずみが、巣に子供たちを残してエサを探しに出かけました。

一面の星空にふくろうの声が響いています。エサを探しているのは、ねずみだけではありません。ねずみは慎重に、ひかえめに、目立たないところを移動しました。

しかし、それでも目のいいふくろうに見つかってしまいました。

「あぶない!」

間一髪、ねずみは倒れた木のうろに飛び込みます。そしてすばやく走り抜け、草むらに身をひそめました。

どれくらいそうしていたでしょうか。いつのまにか太陽が昇っていました。

ねずみはまた、そろりそろりと動き始めました。注意深く周囲に目を向けながら…。

しかし、ねずみはもっと足もとに気を配るべきでした。

突然、地面が大きく揺れ、

「グルルル…」

という地鳴りのような恐ろしい音がしました。それもすぐ近くで。

「だれだ」

地震ではありませんでした。ねずみが立っていた場所は地面ではなく、ライオンの背中だったのです。

「気持ちよく眠っていたのに、ジャマをするのは」

「ご、ごめんなさい!」

「ねずみか。頼んでもいないのに、誰かがおやつを運んできてくれたようだな」

「おゆるしください。ついうっかりと、とんでもないことをしてしまいました」

ねずみは必死に謝りました。脳裏に子供たちの顔が浮かびました。

「どうか…」

不運が続いたねずみにとって幸いだったのは、ライオンの心が広いことでした。

「ふむ」

あるいは、ただの気まぐれだったかもしれません。

「まあ、いいさ。ねずみが、背中の上を歩いただけだ」

と言って、ねずみを逃がしてやりました。

「ありがとうございます。たすかりました。このお礼は、いつか、必ず」

「ふん」

とライオンは、返事をしたとも鼻で笑ったとも取れる鼻息をもらして、巣に逃げ帰っていくねずみを眺めていました。

(お礼だって?いったい、ねずみに何ができるというんだ)

ライオンはねずみの言葉を気にもとめず、ひとつあくびをしてから立ち上がりました。

そこはいつもの草原です。ゾウも、トラも、キリンも、誰もかれもが自分のふるまいに注目する、いつもの世界です。いつになく起こったささやかな珍事、ねずみのことなどはすぐに忘れてしまいました。

しかし、ライオンの知らないところでもうひとつ、いつもの日常にないことが起こっていたのです。

林の中を歩いていたライオンの足に何かが引っかかりました。

「なんだ」

と思うやいなや、ライオンは宙に浮かんでいました。そしてすぐ、自分が太い網の中にいることを知りました。密猟者のわなにかかってしまったのです。

「ガオーッ、ワオワオウワーオ、ガーオガォーッ」

ライオンは必死にもがき、叫びました。しかし、人間のなわが切れることはありません。叫び声はむなしく響き渡り、鳥やサルの視線を引くくらいのことしかできません。

「たすけてくれ!」

その声に応えるものはいませんでした。ただ一匹をのぞいて。

「ライオンさん」

いつの間にか耳元にねずみがいました。そして、

「たすけにきました」

言うが早いかなわをかじり始めました。何本も何か所もかみちぎりました。

「ありがとう」

少しずつ網がゆるみ、地面が近づき、体が自由を取り戻していきます。

「ありがとう」

その間ライオンは、ただそれだけを言い続けました。

ライオンはついに立ち上がりました。

見上げるねずみと目が合いました。

ほんの短い間だけ、二匹は視線を交わし、そしてすぐに互いに背を向けて走り去りました。

ただ、ひとつだけ、ねずみはお土産をくわえて帰りました。

「意外と、おいしかったのよね」

と思いながらねずみは、夢中でなわをかじる子供たちを見つめていました。

最初にこの絵本を読んだとき、ラストのシーンでねずみが、かみちぎった縄を巣に持ち帰り、子供たちがそれに群がってかじっているのを見て、「これはどういうことだろう」と正直よく意味が分かりませんでした。
「縄をかじって遊んでいるのかな」
と私が言うと、娘は、
「練習してるのかな」
と言いました。なるほど、縄をかみちぎる行為が今回はとても役に立ったから子供たちに練習させているのか、と子供の視線の鋭さに感心もしましたが、個人的には「それだ!」という感じではありません。

文章を書いているときもまだ結論は出ていませんでしたが、考えているうちに「ひょっとしてエサなのかな」と思いつきました。調べてみると「ねずみはなんでも食べる」とありました。縄も食べる、ということでしょうか。

「でも密猟者が使ったこの縄は化繊じゃないのか?そういう色に見えるけど」

とか余計なことまで考えてしまっていまいち自信は持てませんが、そう考えた方が話のオチとしてはしっくり来ます。

ねずみはライオンを助けるために縄をかみちぎったわけですが、

「けっこうおいしかった」
「なかなか良いごちそうだった」

と、ねずみらしいマイペースさを描く方が、茶目っ気があるし、バランスのいいストーリーになります。バランスってなんだよ、と思われるかもしれませんが、個人的にはねずみを上げてライオンを下げたまんま終わられるとちょっと据わりが悪い心持ちになるのです。ライオンにとってこの話はどうしようもなく不幸な事故だったわけですから。

だから、ユーモアや笑いでまるごとくるんでもらうと、バランスが取れて安心します。

蛇足が長くなりました。このへんで終わりにします。

…。

…なおみはどう思う?

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