【🇨🇦カナダ留学④】

なんとかヒルトンホテルに入社できた僕はすぐに壁にぶつかる。
言葉の壁である。
同僚が何を言っているか全く分からない。
単語すらも聞き取れない。
もちろん、何回もブチギレられたけどその意味すらも理解できなかった。
冷蔵庫を蹴られたり、コールドテーブルを叩いて怒ってきたり。。
とにかく、同僚がキレているのは間違いなかった。

働き始めてから２週間ほどが経ったある日、
シェフから突然呼び出される。

『このまま同僚とコミュニケーションを取れないのであれば、今月で君はクビだ。』

痺れた。
全身から冷や汗が出たのを昨日のことのように覚えている。
これが北米か。そう感じた。

幸運にもスノーボードはシーズン前だったので、仕事以外は全て語学勉強に費やすことができた。残り10日間がデットラインだったので、どうしたら最短で会話をすることができるようになるだろうと足りない頭を振り絞って考えた。
そもそも英語に関しては学校で散々勉強してるのでアドバンテージがあるはずだったが、僕は特に英語がめちゃくちゃ苦手で勉強するのも相当嫌いだった。
高校の時は赤点ばっかで毎回追試で顧問に謝りに行ってたし、、、
とりあえず場数を踏むしかない。そう考えた。

その日からは毎日10時間以上、英語と向き合うようにした。
そんなのは受験勉強振りだったし、やらないと生活ができなくなると思ったので覚悟を決めた。
毎日行きつけのカフェを作り、カフェの店員とコミュニケーションを交わして話した内容をノートにまとめて使用頻度の高い単語やイディオムを全て暗記した。

移動時間はひたすらイヤホンで英語の聞き流し、音楽も英語のラップだけに絞った。
特に聞いていたのは”エミネムのRap God”
これ聞けるようになったらどんな単語も拾える。そう思った。
確か１分間の文字数でギネス記録を持っていたくらい早口だからだ。

また、図書館に通い小学生向けの本を読み漁り基本的な文法を頭に刻み込んだ。
カフェと図書館で身につけた英語を図書館のおばさんとの会話でも試した。
この時確か語学学校の先生方のところにも話に行っていたと思う。
語学学校で習った英語と勤務中の英語に大きな乖離を感じたので、そこをひたすら質問しに行った。
iPhoneの環境設定も英語に変え、InstagramやFacebookのFeedはほとんどが英語になるように友だちを無理やり増やしまくった。
もちろん仕事中も”もう話しかけるな！”と言われるくらいまで勉強した内容を同僚に話し続けた。

最初はウザがっていた同僚も、日が経つにつれて僕と会話ができるようになってきたのが面白くなってきたのかどんどん率先してネイティブが使う言い回しとかを教えてくれるようになった。
そうなったのは勉強を始めた丁度１週間後くらいだったと思う。

スノーボードのシーズンが始まるまでの1ヶ月間は、友達ともほぼ遊ばず毎日英語の勉強だけに時間を割いた。
おかげでM字禿げになった。
でも、それによって享受できた対価としては髪を多少失ってでもプラスになるほどであった。
仕事もクビにならずに済んだしね。笑
英語でコミュニケーションを取ることができるようになって、冗談が言えるようになって、友達をいじることができるようになって、不満を主張することができるようになって、僕の曇っていた世界は急に明るくなった。

シーズンに入るとリフトが一緒になった人たちとたくさん話せたし、
ナイトクラブではナンパができるようになったし、友だちがたくさんできてスノーボードに一緒に行くこともできるようになった。

どんな壁が来ても乗り越えられる自信がついた。
自分に足りないものは『本気度』だった。
今人生を振り返ってもそこがいつも足りない。
どんな人間も、本気になればなんだってやれるんだ。と今では思う。
22歳の秋。
あの時のシェフには今でも感謝している。