【🇪🇸La vida de España⑧】

なんだかんだで日本食レストラン、略してジャパレスで働くことになった僕は、なんとなくGoogle Mapでお店の感じを見て、不安を覚えたので実際に行ってシェフに挨拶がてら飯を食うことにした。
結論から言うとシェフはその日不在で、マネージャーと挨拶をして終わった。
ランチは日本で言うところのランチセットみたいなの、スペインではこれをMENÚと言うんだけど（アクセントの位置に自信はない）、それを選んだ。
ヨーロッパではまず、寿司といえば巻物だし、さらにその巻物は僕が一度もやったことのない裏巻きスタイルで、寿司にソースをかけて提供するんだよ。
美味いんかこれ？っていうのは今でも疑問である。
僕が注文したUramaki de dia（本日の裏巻き）はサーモンの裏巻きにマンゴーソースがかかってた。
正直、どういうセンスしてんのよ！って思ったけど、そんなのは主観なのでどうでもいいとして、味はどうかというとやっぱりわさび醤油で食う方が美味いわけ。

そんな感じであまり印象の良くない感じで翌日から働くことになった。
日本人がいないと言うのは先に聞いていたので、どんな人がいるのかなあって楽しみに出勤した。
シェフはエクアドル出身で、マネージャーはスペイン人とイタリア人。
ホールスタッフは皆スペイン人で、厨房はというとフィリピン人が2人とバングラディッシュ人が2人だった。
まあなんか面白い感じになりそうだなと。
その内英語が話せるのは2人か3人くらいって言うのもめちゃくちゃ良かった。

全世界共通で、厨房で働く際のコミュニケーションが一番活発になるのは下ネタである。
もちろんこれは自論だし、批判は大歓迎だ。
だから下ネタに関するスペイン語を片っ端から調べまくって営業に臨んだ。
だってまずは仕事ができるかどうかより、職場に馴染むことが大切だと思っているからね。
My 7 Ruleみたいなとこで言うと、
人間環境を構築するのに１週間。
仕事の流れを掴むのに２週間。
オペレーションに慣れるのに３週間。
と言うのを決めているんだけど、これのおかげでどの職場に転職しても１ヶ月あれば僕は余裕を持って色んなことを考えながら働くことができるようになる。
だからそれを今まで意識してやってきた。
実際には人間関係がこの職場においては結構大切だったみたいで、2週目で寿司ポジションを1人で任されちゃったよね。
単刀直入に言うと、奇跡的にかなり皆から好かれてすぐに信用を積めたわけだ。
正直裏巻きやったことないし、寿司自体そんなに場数を踏んできたわけではないから自信はなかったけどやるしかねえんだ。って。
「遅い」とか、「クオリティもうちょっと上げろ」って言われたりもしたけど、そんなんは３週目が来た頃には、もう改善し尽くして回せるようになっていた。

そんな時、厨房スタッフの2/6人がBaja（怪我による休職）で休み出すわけ。
いつも4人で回している厨房を2人か3人で回していかないといけなくなって、結構痺れたね〜
急に入ったことないポジションに入ったり、皆スペイン語で教えてくるもんだからマジで意味わからなかったし、それでもまあ見たら作れるものばかりでそんなにキツくはなかった。
楽しかったよ、意外と。
スペイン語はどんどん聞けるようになってきたし、まさかスペイン語０の状態から入国2ヶ月目で話の概要が分かるレベルになれるとは思ってなかった。

そうして職場にも慣れてきたとき、急に今月で閉店することを伝えられる。
コロナが明けてからの１年間でコロナ前の売り上げを取り戻せなかったのが原因らしい。
コロナ前の年商はおよそ３億円。今は1億3000万くらい。
いや、潰さなくても大丈夫でしょこれ！って思ったけど、まあ家賃とか原価、食品ロス、人件費を考慮するとそんな状況ではなかった。
一応立場的にそういうデータも全部見せてもらえたんだが、まあキツそうだったなあと。

と言うわけで次の1ヶ月は閉店に向かって働くことになった。
レストランがなくなる。っていう日本でも経験したことのないようなイベントが発生した。
次の仕事なんて考えもせず、ただ、いい経験だなあって。
なぜか、どこか他人事であったのは間違いない。