[映画評] 『ケイコ 目を澄ませて』(2022年 三宅唱監督)

 先天的に聴覚に障害を持ちながら、プロのボクサーとしてトレーニングに励む女性の話。評判の良さを聞いて見たが、なるほどこれは大変素晴らしい作品だった。三宅唱という監督は今までそんなに意識したことはなかったが、大変な力量だ。主演の岸井ゆきのにとっても、これは生涯の代表作になるだろう。ラストはグッときたよ。主人公がボクシングを続けてくれるといいね。

 聴覚障害者を主人公にした映画だからセリフが極端に少なく、劇伴音楽もない。俳優の動きや表情、息づかいと繊細な映像、ちょっとした演出だけですべてを語る巧みさ。現実音だけをサウンドとした音響設計、東京の下町を16ミリフィルムで捉えた映像の美しさと奥深さも際だっていた。

 なにより、エンディングのタイトルバックに、安い日本映画にありがちな、陳腐なJ-POPソングを使ってないのはひじょ〜〜〜〜〜〜に良かった。つまらない利権やしがらみで映画の内容とほとんど関係ない、むしろ映画の余韻を消してしまうような駄曲が使われる習慣に、私はほとほとうんざりしてるのだ。

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