[野球][北海道日本ハムファイターズ観戦記2023]山崎福也をFAで獲得!

 いやあ、驚きましたね。まさかの山崎福也の入団決定。6球団の争奪戦、今季年俸推定6千万の山﨑に対して、ハムとしては異例の4年8億という好条件を提示したものの、ソフトバンクなどは4年総額12億円という驚愕の高年俸を提示したという報道もあり、マネーゲームでは絶対勝ち目がない。たぶんハムのFA参加は「一応FA戦線に名乗りをあげましたよ、補強する気はあるんですよ」というポーズと思っていた人が(特にハムファンは)多かったんじゃないか。何が入団の決め手になったのかは入団発表会見を待つしかありませんが、5日前にはこんな報道もありました。

「ソフトバンクは巨人と同程度の好条件だが、本人にお金でライバル球団に行ったと思われたくないという強い意向がある」

 つまり山﨑にとって金銭面の条件はさほど重要ではなかったということでしょう。父親が選手〜コーチとして長い間東京時代のハムに在籍していて、子供の頃はハムの試合をよく見ており、ひちょり、賢介、小谷野など当時の主なハム選手のサインをほとんど持っているほどの熱心なハムファンだったこと、2006年の日本一の際は新庄や稲葉のプレーに熱狂したこと、中学生の時脳腫瘍を患い、北海道大学病院で手術を受け快癒したこと(父親に北大の脳外科の名医を紹介したのが当時のハム球団だったという真偽不明の話もあり)、手術の前日にダルビッシュが完封勝利したハム戦を見て勇気を得たこと。そしてオリックスでよくバッテリーを組んでいた仲良しの伏見がハムにFA移籍していること。尊敬する先輩金子千尋コーチがいること。大学の後輩・上原がいること。そうした「人縁」があり、さらにせいぜい先発3〜4番手ぐらいの評価だった他球団に対して、ハムは「エース」として高く評価してくれた、大谷の先例があり、ハムは「二刀流」起用に柔軟で、バッティング大好きらしい山﨑の希望に添うこと、などなど……。もちろん球団側は金銭面のほかに引退後のコーチ手形なども切っているかもしれない。

 11月11日に山﨑がFA権行使を表明、16日にハムが争奪戦参加を表明、20日に初交渉(参加6球団で最後)、25日に入団発表。つまり争奪戦に参加してから10日、条件提示してからわずか5日で入団にこぎつけたわけですが、私は山﨑のハム入団はそのかなり前、遅くともドラフト会議がおこなわれた10月26日には内定していたと考えています。もちろんそれはタンパリングと言われるルール違反ですが、少なくとも山﨑の入団と加藤の残留はその時点で決まっていたんじゃないでしょうか。加藤のFAと上沢のポスティングで先発の柱が2本抜ける可能性があり、ドラフトでは複数の即戦力投手の指名が必至と思われていたわけですが、蓋を開けてみれば支配下での投手の指名は細野だけ。しかもその時の大渕スカウトのコメントは「想定通り」で、欲しかった選手がとれなかったという悔いや焦りは全くうかがえなかった。野手が多い指名も「最初からそうするつもりだった」という発言は、やはり先発ローテ要員の投手が既にしっかり確保できているから即戦力の投手の指名は必要なかった、ということだったのではないか。さらに言えば上沢がポスティングを希望し、加藤がFA権目前だった昨年から、オリックスから山﨑の仲良しの伏見を獲得した時から、今回の伏線があったのかもしれない。もちろんそれは邪推に近いですし、その真相が関係者から明らかにされることはこの先もないでしょうけど、そうした水面下での駆け引きはあったと思います。

 さて投手としての山﨑の評価ですが、正直なところ「4年8億」という好条件にふさわしい実力があるかと言えば少し微妙かもしれません。先発として2ケタ勝ったのは今年が初めて。防御率は平凡だし早い回でマウンドを降りることが多く、規定投球回に達したことは一度もなく、QS率はそれほど高くない。オリックスの強力な打撃陣に助けられた面もあり、さらにゴロピッチャーである山﨑にとって弱小ザル内野のハムは決してベストマッチとは言えない。対戦していて、たとえば山本由伸のように出てくるだけで負けを覚悟するほどの絶対的な力は感じられず、なんとかなるだろうと思わせてしまう。今季の11勝5敗がハムなら逆になっていた可能性もある。しかしイニング数で言えば、リリーフが強力なオリックスでは早めの降板になるのは当たり前で、ハムなら必然的に長いイニングを投げることになる。加藤もそうやって長いイニングを投げられるようになったんですから。幸い学生時代から大きな故障をしたことのないタフさが売り物でもあり、先発に求められるイニングイーターとしての役割はしっかり果たしてくれそうではある。

 もちろん入団が決定したからには全力で応援はしますが、あまり大きな期待をかけないほうがいいかも、というのが冷静な見方だと思います。それは本人にも過剰なプレッシャーとなる。しかし山﨑の入団の意味は単に目先の戦力アップだけではないんですね。これまでFAでは出ていく選手はロクに引き留めず、獲得を目指すこともほとんどなく、高年俸になったベテランや中堅を次々と放出し、まともな戦力補強を一度もしてこなかったハム球団が、自軍FA選手を高年俸・長期契約の好条件で引き留め、のみならず他からのFA選手獲得にも本気で参加した。もちろんそれは「奴隷契約」の札幌ドームと決別し、自前のエスコンフィールドを得て収支が大幅に改善し資金の余裕ができたからですが、こうして6球団争奪、しかも巨人ソフトバンクという金満強豪チーム相手の争奪戦に勝利して、欲しかった選手を獲得できた。マネーゲームに乗らずそれ以外の理由で獲得できたことで、新しいチームの魅力を改めてアピールできたし、これで山﨑がチームに溶け込んで結果を残してくれれば、もしかしたら今後のFA補強やアマチュア選手獲得にもいい影響があるかもしれない。なによりハムを選んでくれた山﨑の心意気が嬉しいじゃないですか。巷のハムファンの歓喜の声は当然でしょう。こんな雰囲気のいいシーズンオフを迎えられたのは、もしかしてハム史上初めてかもしれない。それは今後のハムの明るい未来さえ想起させる。それだけでも山﨑の獲得には意味がある。

 加藤と同じ歳(同じ学年)の山﨑は来年32歳。4年契約が終わるころには、そろそろ選手生活も晩年に近づいているはず。その頃「やっぱりハムなんかに来なきゃよかった」とならないよう、悔いのないように4年間を過ごして欲しいと思います。故障なく、1年でも長く現役を続けてハムの勝利に貢献できるよう。そして3連覇の強豪球団から2年連続最下位の弱小球団に「自分の力でチームを強くしたい」と移籍してきた彼の心意気に答えるために、チームは必ず優勝を。どうしても優勝したくてハムに移籍して果たせなかった金子千尋コーチの無念を晴らすためにもね。背番号はオリックス時代の11か、吉田のトレードで空いた18か、清宮がつけている21か、父親がつけていた47か。さすがに11は敷居が高すぎるかなー。

 本当はコーチ人事とか、吉田のトレードとか、いろいろ書きたいことはあるんですが、山﨑の話題だけで終わってしまいました。また近々更新します。

 サチヤ君、ファイターズへようこそ。君のこれからの野球人生に大きなサチあれ。


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