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おっさんたちの話

十代の終わりぐらいからかな。
僕は大先輩たちが好きだった。
どれだけ年が離れていたんだろう?
まぁ、大先輩過ぎて大人と子供だったけれど。

理不尽なことも言われた。やいのやいの。
挨拶がなってない!とかさ。まぁ、なってなかったんだけどさ。
それでも大先輩たちが大好きで呑み屋には必ずついていった。
それでわかりもしないのに先輩たちの芝居についての会話を聞いた。
よくわからないギャグのようなものもたくさんあったけど。
飽きることもなかったし、発見の方が多かったと思う。

かわいがってもらえたという記憶はあまりない。
お前はいつもいるなーとか言われたりしただけだ。
ある大先輩が理不尽なことを言って、別の大先輩がかばってくれたりもした。
煙草買ってきてとか頼まれることはしょっちゅうだった。
雨の日の居酒屋から濡れて走って煙草を買いに行ったりもした。
別に命令でも何でもなかったし、当たり前だった。
別にヘイコラしていたとかじゃない。
お前はどう思う?と言われたら、生意気でも意見を言った。
後で怒られるようなことも言った。
とにかく学ぶことが多いなぁと思っていたし、頼み事ぐらいはなんでもなかっただけで、自分の意見を引っ込めるようなことはしなかった。

僕の頃も先輩の話を聞くのがめんどくさいし、いやだっていうやつもいた。
なんであんなに色々言われなきゃいけないの?みたいなことも聞いた。
自分からついていく人はそんなにいなかったし、誘われたら行くぐらいの人の方が多かったと思う。
みんな、それぞれの距離感でリスペクトしていたのだと思う。
僕はシンプルに大先輩たちの話の中にたくさんの宝物をみつけていただけだ。
気難しい先輩も、優しい先輩も、無口な先輩も。
その経験以上に価値のあるものなんてないなぁと思っていた。

若い人に合わせる人なんていなかったと思う。
わからなければ、わからないまま進んでいく。
優しく解説なんかしてくれやしない。
だから自分で調べたりした。
それ良かったと思っている。

今はもう周囲にあまり大先輩たちがいなくなってしまった。
生意気な僕を相手にしてくれた人たちと話す機会はなくなってしまった。
理不尽でもいいしさ、酒だって注ぐからさ。
ただの小僧に戻って、おっさんたちの話を聞きたいなぁと今も思う。

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