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なんだそのタイトルは!

ポール・オースターの訃報に声が出る。
映画「スモーク」は僕のナンバーワン。
小説も読み漁った。
でもこの訃報が出るまで顔を知らなかった。
意志の強そうな目線になんだか力が抜けてしまったよ。

アメリカの大学でガザのことで抗議活動が盛んなのは見ていた。
教師たちが手を繋いで生徒を守る写真など感動的だった。
それが暴力的な状況になっていることに震撼する。
まだ詳しい被害が正確に出ているわけではないけれど、中には死者も出ているという報告もあるという。
デモという民主的活動が騒乱になっていくだなんて。
分断が暴力まで加速していくだなんて。

今、世界では大きく歴史が動き続けている。
小さな事件だったようなことが大きな歴史的転換点になる。
アメリカ国内はまるで世界と直結しているかのようだ。
2024年のアメリカは何が起きても不思議ではない雰囲気がある。
日本では大きく報道されないかもしれないけれど。
アメリカ国内で起きるニュースはとても重要だと感じる。

日本国内のSNSでも最近うっすらと見かけるようになった反米。
政局のためにアメリカ追従を非難するというのは少しあったけど。
なんだか最近チラホラと政局だけではなく現れる。
世界には反米国というのが少なからずあって、だからその国々がたくさんの反米的な記事を拡散し続けている。
一度、反米に傾いて記事を探せば、ほぼ無限に近い数の記事が見つかる。
反米という思想自体を否定するわけではないけれど中には眉唾の記事も多すぎて、僕からすればむしろ反米思想の方が怪しく思えてしまうぐらいだ。
それでも信じてしまう人は一定数いるだろうし、これだけの記事があれば一度そうなればどんどんのめり込みかねないなぁと思う。

僕はアメリカという国の持つ二面性みたいなものがとても腹立たしいし、同時にとても羨ましいなぁと感じていた。
僕がバンドを組んでいた時の代表曲は「アメリカ」というタイトルの曲だったのだけれど、その二面性を両方歌ってた。
あの頃は、アメリカは世界の警察だ!とか盛り上がってて、なんかむかついたって言うのもあった。
でも同時にロックンロールが生まれる国なんだぜという、やっぱり自由に一番近い国なんだっていう憧れもあった。
それを歌にしたらタイトルが「アメリカ」になった。おかしいだろ。

僕たちが済む自由民主主義の世界では国の首長を自由に批判できる。
北朝鮮や中国やロシアでそんなことをすれば投獄されてしまう。
体制が個人の自由を制限している。
アメリカはその自由の急先鋒の国だ。好きな思想を持てる。
移民の国で歴史の呪縛からも他の国よりも一歩も二歩も抜け出している。
人間がたどり着いたある種の理想郷の一つだと思う。
自由にはいつだって責任が伴う。
今、その自由の在り方がなんだか問われているかのようだ。
二つの思想を持つグループが大学内で闘争する。
親イスラエルと親ハマスがぶつかり合う。
自由の国でなければ起きない事ではあるし、同時に大きな矛盾も抱えている。

ポール・オースターという作家はそんな人種の坩堝ともいうべきニューヨークを鋭角に切り裂くような作風だったと思う。
自由から生まれた個人の権利と責任。
そこからどうしてもはみ出してしまう小さな出来事や思い。
ロックンロールと兄弟だ。
アメリカじゃないと生まれないような作風だったと思う。

訃報にはっとさせられながら。
僕は2024年のアメリカはより注意深く見るべきだと改めて思う。
大統領選のある今年、その大統領選よりも別の話題が渦巻いている。
自由だからこそ生まれる分断が加速し続けている。
答えはポール・オースターの作品にあるのかもしれない。


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