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1on1のコツ 部下が答えに詰まったら、話を広げて脳を揺さぶる

先日、ある企業様のリーダー研修で1on1面談の進め方に関するデモンストレーションを行った時のこと。

デモンストレーションの際には、「講師のデモを見て、いつもの自分の1on1とどこが違うと感じたか」という気づきの共有を受講者様どうしで行ったのち、皆様からのご質問受けをしています。

デモンストレーションの終了後には毎回多くのご質問をいただくのですが、今回は次のような気づきの共有とご質問をいただきました。

【受講者様】
「後輩役の方との対話の中で、話題をぐっと絞って質問を重ねることで後輩の意見や気持ちを深堀りする部分もあれば、テーマの幅を広げて話題を別方向に転換していく部分もあるように感じました話題を広げたり絞ったりする中で、最終的には後輩自身の言葉で具体的な行動目標が出てきた点が自分の1on1とは異なる。特に、後輩役の方が言葉がうまく出てこずに考え込んでいる場面で、しばらく黙って見守ったうえで話題を転換したように見受けられましたが、これにはどのような意図がありますか?自分も面談で後輩が黙り込んでしまった際に、追い込まないようにしつつも後輩の口から言葉が出てくるような助け舟の出し方ができればと思うことがあります。」

後輩思いの素晴らしいご質問です。不慣れな中でもデモンストレーションから面談の手法や切り口をキャッチアップしようという熱心さを皆さまから感じた瞬間でした。

1on1は、受ける側が主役。上司や先輩方が簡単にアドバイスをするのではなく、後輩の思考の深堀りの壁打ちの相手となって、後輩自身の中にある気持ちや答えを言語化するお手伝いをする時間です。

「部下や後輩が黙ってしまった時に、アドバイスとは違う形でどう助け舟を出すことができるのか」

今回は、このご質問について、「私たちの脳の動き」「質問のスキル」から解決方法を考えてみたいと思います。


私たちの脳の動きについて

まず、私たちの脳の動きから。
私たちの脳は、一度にひとつのことしか考えられないという原則があります。例えば、17+25を考えながら、今夜の夕食を何にするか考えることは難しいのです。

「今夜、何を食べたい?」

辛いものが好きな方は、キムチ鍋!と答えるでしょう。これで終わると頭の中がキムチ鍋で捉われて終わり。答えがひとつだけみつかり、あとは沈黙……。

そういう時は、次のオープンクエスチョンで脳を揺さぶります。

「他には?」

私たちの脳は、質問をされると混乱します。その混乱を収めようと、脳は今までの経験や知識の中でいい答えはないか探し始めます。

「焼肉!」 (1週間前に食べた焼き肉の味を思い出す)

さらに、視点を変えるオープンクエスチョンを投げかけます。

「もし、今日が人生最後の日だったら、最後の晩餐は何を食べたいですか?」

すると、「白いごはんと肉じゃが!」と本人も意外な答えが出てくることがあります。この答えが実は、本当に夕食で食べたいものかもしれません。

肉じゃがまで行きついたら、深掘りします。
(相手の意識を肉じゃがに集中させる)

その肉じゃがに入っているものは?
味付けは甘め?
どんなお皿に盛り付ける?
誰と食べる?
一口目に口に入れるのは何?

肉じゃがに焦点を当てることで、「本当に食べたかった肉じゃが」について具体的に語ってもらいます。これで沈黙は回避され、部下から言葉が出やすくなります。

質問のスキル

次に、「質問のスキル」に目を向けてみましょう。コーチングで使う質問に、オープンクエスチョンとクローズドクエスチョンがあります。

  • オープンクエスチョン(拡大質問)とは:相手が自由に答えられる質問

  • クローズドクエスチョン(限定質問)とは:相手がYesまたはNoで答える質問

それぞれにいい点がありますが、使う上での注意点もあります。1on 1で、部下の目標設定とそれに対する行動を促進したいと考えるがあまり、「本当にしますね?」とクローズドクエスチョンを頻繁に使いたくなります。

部下に「はい」と言わせれば、あとは部下が頑張るだろうと、その時点で自分の役割は終わった気になるからかもしれません。
でもこれを使いすぎると、部下は「迫られた」「上手くいかなかったとき責められるのではないか」と萎縮して言葉が出にくくなります。

先ほどの夕食の例をビジネスの場面に置き換えると、「答えに詰まる」のは、問題解決の際に、ひとつの答えに捉われて動けない状況です。
(キムチ鍋しか考えられない)

そんな時は、上司が視点を変えるオープンクエスチョンを投げてあげるのが効果的です。

  • その方法が使えないとしたら、誰のサポートがあればいい?  

  • 以前上手くいった時は、どんなやり方をした?  

  • スティーブ・ジョブズだったら、どうするだろう?

  • もし残された時間が30分しかなかったら、何から始める? 

など。これで部下が脳の中を探し始めたら、「沈黙は金なり」。部下が言葉を発するまで、上司は待つだけです。

そして部下が「〇〇に詳しいAさんに話を聞きに行きます。」と行動につながる言葉を発したら、

  • 「いいね!」承認

  • 「いつ行く?」オープンクエスチョン

  • 「本当に行く?」クローズドクエスチョン

で終わり。

部下が答えに詰まったら、オープンクエスチョンで頭を広げて考えさせる。その後、クローズドクエスチョンで焦点を絞り決意を確認する。

こんなふうにオープンクエスチョンとクローズドクエスチョンを使ってみてください!部下が自分の脳の中を探して、何らかの答えを語り始めます。
あとは、「ただ聴く」だけです。この「ただ聴く」については、またどこかのコラムで。

皆様の職場で、ぜひご活用ください!

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