見出し画像

M-1グランプリ 敗者復活戦での勝ち方

今年もM1グランプリが盛り上がって幕を閉じたところ。
ウエストランドは僕にとっては予想外でした。
本当におめでとうございます!!

今回は本戦ではなくて、M-1グランプリの敗者復活戦での勝ち方について考えていきたいと思うのですが、皆さんは近年の敗者復活戦の特徴について気付いたことはありますか?
実はほんの少しだけ仕組みが変わることで、順位に影響が出るようになっているんです。
良ければ思い出しながら読み進めてください!



環境の整理

まずは敗者復活戦がどのような環境で行われるのか整理していきましょう。

会場

↑実際のネタ映像

六本木ヒルズアリーナという屋外で行われ、声の通り方がテレビ局とは全然違うことがわかります。
12月の極寒の中で待機し、あらかじめ決められた出番順でネタを披露していきます。

ルール

視聴者投票で、スマホやPCから面白かった3組を選んで投票する。
そこで最も票が多く入った組が決勝戦へ復活で進出することができます。
視聴者からの受付は全組のネタが終わってから決勝戦の放送が始まる18時34分まで。

ざっとこんな感じ。
世論では視聴者投票での判断になることから、敗者復活戦は人気や知名度が大きく影響するという意見がよくありますが、間違いではないと思います。
スマホやPCで投票するので、そもそも知らない人よりもよく知っている人の方が票は入れやすくなります。(※1 利用可能性ヒューリスティック)
例えば、ネタは見てないけど決勝に行ってほしいから投票はする。
ということも可能になりますからね。

ただ、近年の敗者復活戦では人気や知名度だけが結果に大きく影響しているとは言い切れない見方があると思ったので、ここまでの敗者復活戦の歴史と比べてご紹介していきます。

※1 利用可能性ヒューリスティックについては以前に書いたので良ければ見てください


『情報カスケード』で見てみる

カスケードは直訳すると、"何段も重なった滝"という意味があります。
これが何にどう作用するのか。
見ていきましょう!

歴代の敗者復活戦

まずは歴代の投票結果についてまとめてみたのがこちらです。
(M-1再開の2015年から敗者復活戦は視聴者投票になっています)
この情報だけでも読者の方はある程度の違和感を持つのではないかと思います。

  • 2015年 トレンディエンジェル 18番目

  • 2016年 和牛 20番目(最後)

  • 2017年 スーパーマラドーナ 20番目(最後)

  • 2018年 ミキ 4番目

  • 2019年 和牛 4番目

  • 2020年 インディアンス 4番目

  • 2021年 ハライチ 5番目

  • 2022年 オズワルド 5番目

どうでしょうか?
気になる点はありましたか?
おそらく2018年以前と以降で明らかな特徴を感じたと思います。

再開当初、決勝進出者が選ばれる順番の傾向は最後の方が強かったところから2018年からは前半が強くなっていますよね。

じゃあ何故このように特徴が分かれることになるのか。
これに説明をつけられるのが『情報カスケード』の考え方。

情報の種類

『情報カスケード』の話をする時は大きく2つの情報が必要になります。

  • パブリックな情報

  • プライベートな情報

パブリックな情報というのはいわゆる客観的事実とも言えます。
プライベートな情報というのは事実かどうかは不明だが、自分しか知らない事実を推察できる情報
とでもしておきましょう。

つまりどういうことなのか?
次の項目へ移ります。

カスケードの発生要因

今読んでもらっている読書の方は、現在の敗者復活戦の戦いの中で、2015年当初は無かったがある年に新しくできた試みは?と聞かれて何か思いつくでしょうか?

正解は、自己採点統計の開示です。

近年のM-1グランプリでは、視聴者が採点メモをつけられます。
以下、画像を参照↓

M-1グランプリ2022 公式サイトより

建前の目的としては、視聴者が採点をすることで自分がいいと思った3組を忘れないようにすることや、審査員と同じ気持ちになることでM-1というお祭りに参加してもらおうということがあります。

実は、ほんの少しだけ変わった仕組みというのは、ある時を境にこの視聴者の採点平均値が敗者復活戦の番組内で紹介されるようになったんです。
MCの陣内さんが「現在10組を終えたところで○○(コンビ名)が88点でトップです」みたいな発言が出るようになった。

ここからがカスケードの発生になるので、前項目の情報の種類を使いながら説明していきます。

自身が持つ情報の不確実性

例えばこんな実験がありました。
大学の研究チームは、ある記事がいくつか掲載されているWEBサイトを用意しました。
その記事にはコメントがたくさんついていて、閲覧した人が簡単に記事の評価ができるようにコメントに対してGOODボタンやBADボタンが付けられるようになっています。
(ヤフコメのようなイメージ)

そしてこれらの記事はコメントへの評価が高ければ高いほど上位にくる仕組みになっています。

彼らが行った実験の工夫は、閲覧者にこのサイトを見てもらう前にランダムで1票だけのGOODボタンを複数のコメントに対してつけておくことでした。

結果、閲覧者は最初にGOODをつけておいたコメントへ同じくGOODを押す確率が32%高くなり、5ヶ月後には何もつけていないコメントと比べて25%GOODの数が多くなった。
これは、自分が持っている正しい情報(=プライベートな情報)よりも最初にGOODがついている情報(=パブリックな情報)を優先してしまうことが3回に1回ある計算。

要は "最初に目にするパブリックな情報" が知らないうちに自分の意見を変えてしまっている可能性があるということ。

敗者復活戦で起こる現象

これと同じような効果が敗者復活戦では働いていると言えます。
今回の場合は、
パブリックな情報=テレビで放送されているみんなの採点の点数
プライベートな情報=自分が考えている採点の点数
とした時にさっきのGOODボタンと同じような状況が生まれますよね?

陣内さんの「現在10組を終えたところで○○(コンビ名)が88点でトップです」みたいなコメントや採点表記が最初のGOODボタンの役割を果たすわけです。

そして一度パブリックに良いと認知されたものは、事実を問わずその後も良いままで認知されていましたよね?

近年の敗者復活戦勝者が再開当初と比べて前半に固まってしまうのは、前半で生まれたパブリックな情報に採点者(約300万人)が左右されてしまうことが仕組み上の大きな理由とも言えます。
そこに人気や知名度があったら、最後の方に出てくる芸人さんたちはめちゃくちゃトレンドがあって面白いことをするしか勝ち目がないので、今回も出番順が5番目のオズワルドに勝とうと思うと相当なハードルがあったと考えられます。

結論、現行のルールに則って敗者復活戦をより勝ちやすくする方法は
・人気(知名度)を上げる
・出番順を3〜8番目くらいで引く
・めっちゃ面白い
の3点と言えます。

結局のところは面白くないと点数が上がらないので、今回もオズワルドが面白かったという要因が強いですよね笑


いかがだったでしょうか?今回は『情報カスケード』で見てみました。
現在の敗者復活戦の方法は、芸人にとっても、投票した視聴者にとっても得をする内容(情報カスケードによって自分が投票した人がそもそも通過しやすい人)になっているので、結果的にテレビ局はいい構成をしていると言ってもいいと思いますね。

読んでいただいてありがとうございました。

良ければスキやフォローをお願いします!
(※フォロー返します)
また、質問があればコメント欄やTwitter(@ONiON_suke066)へDMを送ってもらえれば返信をさせていただきますので、これからもよろしくお願いします。


この記事が参加している募集

#マーケティングの仕事

6,891件

#探究学習がすき

7,419件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?