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何でマイナンバーカードはなかなか普及しないの?

現在の普及率は?

ようやく50%を超えたところ。
(2022年11月末時点のデータ)
ここ2年くらいの間でマイナンバーカードを作った人たちはご存知だと思いますが、マイナンバーカードを作ることでポイントがいっぱいもらえてお買い物ができたり、保険証と連動できたり、コンビニで役所の書類を出力できたり。
結構優秀な仕上がりになっています。
サービスだけみたら優秀なこのカード。
なぜ普及が遅いんだと思いますか??

※いつも通り、いまさら感?もあるメリットとかデメリットなどは分かりやすく解説してくれている人にお任せしたいと思います。

↓非常に読みやすい記事でした

マイナンバーカードを作るデメリットや、作らない人の理由に"個人情報への不安"を挙げられている記事がほとんどなのですが、それだったらクレジットカードや免許証も同じ理由になりますし、スマホから取られる情報だってそうじゃない?と言いたくなるところ。
(後半で深く説明します)
要は、結局のところ皆んな面倒なんですよね。わざわざ作りに行くって。
今、この記事を読んでくれている方の中でも、引越しのタイミングで作った、ブースでたまたま声をかけられた、知人に誘われて一緒に行った、みたいに何かきっかけがあって作った人って多いと思うんです。

今回はその『面倒』が起こる理由について紹介していきたいと思います。

『現状維持バイアス』で見てみる

色んな見方があるのですが今回は『現状維持バイアス』から見ていきます。
これは名前の通りで、簡単に言えば『そのままでいたい効果』です。
ちなみにバイアスの意味は下記へ記しておきます。

バイアスとは、傾向、偏向、先入観、データ等の偏り、思考や判断に特定の偏りをもたらす思い込み要因、得られる情報が偏っていることによる認識の歪み

Weblio辞書より

ではなぜ、そのバイアスが生まれるのか?
ということについてなのですが、まずは"現状維持がいい"ということを分解していくところから始めます。

図1

一般的に思われているのは、将来に対してのリスクを負いたくないという「未知の不安」ですね。

マイナンバーカードを作った方がいいのは理解しているけど、個人情報とか考えたら持っていない方がリスクを減らせるんじゃないか?
のような、将来の結果に確信を持てないから今の方がいい、という感情です。
わざわざポイントもいらないし、便利って聞くけど市役所に直接行くからいいや。
と利便性とリスクを天秤にかけた時にリスクの方が大きいと判断しているということですね!

ただ、実はこのままでは現状維持バイアスを説明できていることにはなりません。

どういうことか?
次の図2を見てください。

図2

新しく「安全の放棄」が入ってきました。
これはどういうことか?

マイナンバーカードがなくても生活に悪影響が出ない=そのままいても安全

という具合に、多くの人はマイナンバーカードがあってもなくても自分の生活に支障が出るわけではないので、わざわざその安全を放棄してまで行動したくないということです。
今ある安全を捨てるリスクを嫌がることこそが『現状維持バイアス』の本質と言えます。
実はマイナンバーカードがどれだけ特典があるとか、どれだけ便利なのかとかは、作らない人にとってはあまり関係ないということですね。

図1で説明した「未知の不安」というのはただの理由付けであって、自分の行動を正当化するための理由を後から付け加えているようなもの。
おそらく、現段階で個人情報の扱いが不安という理由からマイナンバーカードを作っていない人たちに、それが解消されたことを説明しても作ってくれない人が多いと思います。

人が何かに影響されて現状を変えるというのはそれだけ困難だということ。

では、どうすればより良い結果が生まれたのか?

ここまで説明をすると、マイナンバーカードを作らなくても安全ということが原因なら、作らない人が何か困難になる状況を作ればいいのでは?
という意見が出てもごもっとも。というところなのですが、現実的に政府の政策に乗らなければ困難な状況になるというのは国民が納得できるものにはならなさそうですよね。

最後に『現状維持バイアス』が自由選択のもとで有効になる方法を紹介して終わろうと思います。

現状維持(デフォルト)を有効に使う方法

まずは有名な事例から紹介していきます。
運転免許証や保険証をお持ちの方へ聞きたいのですが、ドナー登録の欄にチェックを入れていますか?
ちなみに僕は全然OKなのでチェックを入れているのですが、このドナー登録に関しては国によって大きくばらつきがあるのはご存知でしょうか?

例えば、イギリスは約17%、ドイツは約12%がドナー登録に許可をしているのに対して、フランス、ポーランドなどでは約99%が登録に許可をしています。
これは臓器提供に対して寛容な国とそうでない国の差が出ているのでしょうか?

もちろん答えは"いいえ"です。

実はドナー登録の許可は国によって質問の文章が違うからなんです。

どう違うのか?
大きくはこの二択になります。

  • ドナー登録の許可をする人はチェックを入れてください

  • ドナー登録の許可をしない人はチェックを入れてください

ここまで読み進めてもらった皆さんであればどっちがドイツでどっちがフランスなのか検討がつくと思いますが、後者の質問がフランスやポーランドなどでの質問の文章なんです。

現状を変えるのが困難な人の性質上、ドナー登録者を増やしたい場合は後者のような文章にすると、わざわざドナー登録を拒否するためにチェックを入れることが少なくなるということ。

ちなみに90%を超える国は他にもオーストリア、ベルギー、ハンガリーなどがあります。

これと同じ要領で、

申請したらマイナンバーカードがもらえる
↓ から ↓
申請によってマイナンバーカードを拒否できる

という仕組みにしてしまえば、図2で紹介した内容はこのように変わります。
「安全の放棄」→ わざわざ拒否申請をして不便になるのは嫌
「未知の不安」→ 拒否をすることで将来的にどれだけ不利益になるかわからない
人の脳は本当に都合よくできています。

マイナンバーカードの初期段階だけでもこのような自由選択を設けることによって、もう少しマシな結果になっていたのではないかと感じますし、マイナポイントの予算、ブースで販促をする予算などをもっと抑えて発行数を伸ばせたのではないか、とも考えられます。

現在の役所のシステムでそれが出来たのかどうかは定かではないのですが、もしシステムを変えなければならないという状況だったのなら、政府側・役所側にも『現状維持バイアス』が働いて、システムを変えることが嫌なので今回のような申請方法だったのかもしれませんね。

今回は『現状維持バイアス』からマイナンバーカードが普及しない理由を見てみました。
人はとても都合が良くて、面倒くさがりで、帳尻合わせの生き物です。
しかし、そのことさえ理解していれば、現状維持(デフォルト)をうまく活用することで良い環境を作る一歩になると思います。

最後まで読んでいただきましてありがとうございました。


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