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審判への批判について考える

W杯での審判への批判

スペイン対日本『ミトマの1mm』

日本の劇的勝利で終わったこの試合はもちろん物議を醸しましたよね。
解説の本田さんも「出てるっぽい」って言っちゃうほど映像では出ているように見えました。
けどVARの結果はゴール。これにはイギリス人の元選手やスペインメディアなどを中心に批判が集まりました。
逆にスペイン代表監督(当時)のルイス・エンリケのコメントはこちら。

「私は間違いなく加工されたであろう写真を見た。または操作されているものをだ。見させてもらったが、そんなはずはない」

「そして、スペイン戦での日本のゴールは有効だ。このプレーはVARが正しい」

負けた側の監督が潔く認めていてパッと見は好印象。
今回は全文を書きませんが、ルイス・エンリケはあのVARよりもスペイン代表が10分〜15分間ほど機能不全だったことに対して多くのコメントを残していて、論理思考でリアリストな彼だからこそ負けた理由に関して根本的に向き合っていた印象でした。
(※一人のルイス・エンリケファンとしての感想です)

ポルトガル対モロッコ『アルゼンチンの主審』

ポルトガル代表DFのぺぺ選手がめっちゃ怒ってましたね。

「われわれの試合をアルゼンチン人が裁くことは受け入れられない」

「われわれは後半どんなプレーをした? 相手GKは倒れてばかりだった。アディショナルタイムはたった8分だった。一生懸命にプレーしたが、主審が追加したのは8分だ」

1つ目の発言は決して人種差別的な要素ではなくて、反対のトーナメントにアルゼンチン代表がまだ残っているのに、このラウンドになってアルゼンチン人の審判っておかしくない?
ということ。
言いたくなる気持ちもわかります。

フランス対イングランド『審判のレベル』

こちらもイングランド代表DFハリー•マグワイヤ選手が怒っていました。

「僕達はいつも、選手として批判される。だから、彼(審判)が出てきて、良い試合だったかどうかを周りに判断してもらえたら嬉しいね。前半はフランスが早い段階で5つも6つもファウルをするような判定がたくさんあったよ」

「後半はPK(があるべき所で)を与えられなかった。ブカヨ(・サカ)へのPKは明らかなファウルだったし、相手の先制点につながったんだ。大事な場面で僕らはレフェリーに正しい判断を期待するもの。残念ながら、今夜は何も得られなかったね」

一部ではフランスに買収されたなどの記事も出ていますが、見ている感じは確かにイングランドにひどい判定が多かった印象ですが、フランスに対してもそれなりに微妙な判定はあったかなと思います。
実際、勝ったフランス代表からも審判への批判が出ていたくらいです。

アルゼンチン対クロアチア『疑惑のPK』

試合中継を担当した元イングランド代表ガリー•ネビル氏のコメント
(※有効な映像を見つけられませんでした)

「アルバレスがGKにそのまま突っ込んでいって倒れたんだ。これはPKではないよ。もし、GKがアルバレスに向かっていって倒したのであれば、十分にフェアな判定だが」

試合終了後、インタビューに応じたクロアチア代表MFルカ•モドリッチ選手のコメント

「アルゼンチンのほうがよかったし、勝利に値した。
こういうことはいつもは言わないけれど、今日は言わなければいけない。
審判については話したくないけれど、最悪のひとりだった。
彼とはいい思い出がない、彼は最悪だ。あれはPKじゃなかった。
とはいえ、アルゼンチンへの賞賛を奪おうとは思っていないよ。あのPKが僕らを殺したけどね」

やはり焦点は前半32分のPK判定について。
確かに試合は結果的にこのPKが試合が決まった要因になってしまい、選手や視聴者からは焦点が当たりやすい状況だったとも考えられる。


審判への個人的な意見

W杯でもチャンピオンズリーグでも審判への批判がないままに大会が終わるところを見たことがない。
今大会もVARに加えて半自動オフサイドテクノロジーなど、審判を補助するような工夫がなされているが、最終的にジャッジするのは審判という人間にしかできないことになっています。

ただ、個人的には審判によってファールの基準が違うことや、判定の基準が違うことはある一定の範囲の中においては賛成です。
機械が全て完璧に判断することはサッカーの魅力を少し削いでしまう気がするので。
どれだけ早く審判の癖を察知して、どうコミュニケーションを取っていくかということもサッカー選手の力量の一つとしてサッカー観戦を楽しみたいです。


『パターンノイズ』で見てみる

行動経済学において、このように担当をする審判によって判断のバラつきが出るような現象を『パターンノイズ』と言います。
実はこの現象、身近なところに潜んでいることに加えて排除することが難しいものでもあります。
そして今回は僕が愛してやまないカーネマンの著書から抜粋しようと思います。
興味がある方は是非買ってみてください!
(※僕はただのカーネマンの回し者なので僕にお金は一切入りません)
まずは、この本のスタートでもある最悪とも言える事例から紹介します。


ケース① 裁判官の場合

刑事裁判における裁判官は被告人を裁く権利があります。
もちろん被告人にとっては人生が懸かっていることなので、裁判官は周囲の情報に惑わされず、弁護士や検察官が出した証拠を元に公平に裁判を遂行します。
では、まず皆さんにお聞きしたいのですが、裁判官が下す審判が同じ事案にも関わらず一人の裁判官は懲役2年の判決、もう一人の裁判官は懲役10年の判決だったらどう思いますか?
「2年の判決を下す裁判官に運よく当たりたい」
と思うでしょうか?
多くの人は、そんな重要な立場の人間たちに8年もの差があるのはおかしいと思うのではないでしょうか?
実際に行われた調査ではこのようになりました。

裁判官208名に対してそれぞれ16個の事案に量刑をつける調査において、事案によっては10年以上の量刑の差が生まれ、裁判官によって平均して約2年以上の量刑の差があった。

ケース② 難民認定の場合

アメリカで難民認定を受けると住宅や就労、教育に関しての支援を国から受けることができる。
さらに5年が経った時にはアメリカの市民権の申請ができるようにもなる。
迫害を受けている人や紛争地になっている地域の人たちからすれば命を守るための重要な制度になっています。
しかし、アメリカで難民認定の申請が承認されるのは宝くじのようなものだとよく言われるそうです。

申請書類の審査担当者がランダムに割り当てられるケースを調査したところ、ある審査官は申請の5%しか許可していないが、別の審査官は申請の88%が許可されていることがあった。

『パターンノイズ』はどこでにもある

他にも会社の面接をしてくれる人事担当者やお金を運用してくれるファンドマネージャーたち、科学捜査班の指紋監査など、組織内である一定の基準に沿って行われているのにも関わらず、担当する人によって事象の捉え方が変わることがある。
それだけならまだしもそれが致命傷になることさえあるんです。
(今回はパターンノイズの紹介をしているが、残念ながら他にもノイズの種類は存在する)

W杯でのサッカーの審判は特に『パターンノイズ』が多く見られやすい環境であるとも言えます。
例えば、ポルトガル代表DFのぺぺ選手が言ったように、自国の代表がまだ決勝ラウンドに残っている審判が試合を裁く場合においては、少なからず別の試合では弱い国が勝ってくれた方が嬉しいはず。
なので弱い国の方へのジャッジが少し有利になってしまう可能性があります。
他にも過去にPKの判定をして叩かれまくった経験がある審判、国際舞台の経験が比較的少ない審判、ある選手と揉めたことがある審判、など様々な背景があることに加え、サッカーの審判は選手と同じだけの距離を走りながら一瞬の判断で裁かなければなりません。

結論、僕たちはVARや半自動オフサイドテクノロジーなどの文明の進化のお陰で『パターンノイズ』が少しでも減らされていることに感謝をしながらサッカー観戦をすることをオススメします。
また、ルールで審判の裁量の範囲を明記し、審判によって判断が異なることがあると認知させることも有効かもしれません。


いかがだったでしょうか?今回は『パターンノイズ』というノイズの一種で見てみました。
プロでも専門家でも間違う環境というのはまだまだ多くあるので、今後もなるべく社会の出来事に沿って紹介していければと思います。
読んでいただいてありがとうございました。

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