饅頭の「頭」は「ジュウ」と読む←おかしくないか?
仲間外れがいる。
【問】
下記の①~③の熟語の中から、仲間外れ(異質なもの)を一つ選んでください。
①行動
②行事
③行脚
ヒント:読み方
答え⬇️⬇️
仲間外れは③の「行脚」。
どう考えても「行脚」だけ読めない。
「行脚」は「アンギャ」と読む。
「行」を「アン」と読むなんて、どうかしているぜ・・・・・・。
「行灯」を「アンドン」って読むのも納得できない。
他にも厄介な奴がいる。
「饅頭」だ。
「饅」については、「漫」「慢」という漢字と右側が同じなので「マン」と読むのはわかる。
問題は、「頭」。
「頭」を「ジュウ」って読むの、オカシイと思いません?
「頭巾」「頭寒足熱」「頭上注意」の「ズ」という読みや、
「七頭身」「巻頭カラー」の「トウ」の読みは、納得できる。
が、「頭」を「ジュウ」と読むのは、どうもオカシイ気がするのだ。
というわけで、今回のお題。
1.他にもいるぞ!オカシイ読み方
饅頭以外にもクセモノはたくさんいる。
一体、何でこんな変な読み方なのか!?
2.カギは日本語教育!?
日本語教師の資格を取る際に使ったテキストに、次のようなことが書いてある。
日本語の漢字の音読みには、実は3種類ある。
どういうことなのだろうか?
まず、音読みと訓読みについて確認しよう。
別の表現をすれば、音読みとは「中国から輸入した音」ともいえる。
その音読み、実は3種類あるのだ。
普段はまったく意識しない(そもそも知らないのが普通)だろうが、分類できるのである。
以下、まとめてみよう。
(例として、「行」と「明」の読みも記す)
漢和辞典によっては、音読みの種類を明記しているものもある。
『新漢語林』では、下の画像左側のように、音読みの種類が書いてあるのだ。
このように、音読みは「いつ伝わって来たか」によって分けることができるのだ。
では、次にそれぞれの読み方の特徴について確認しよう。
3.呉音
呉音は、日本に最初に入ってきた読み方である。
そのため、当時の日本(奈良時代)の漢字の音読みはすべて呉音であった。
が、現代では少数派。
今でも使われる呉音の読み方を列挙してみよう。
何か、気づくことはないだろうか。
(振り仮名がついているものが、呉音)
仏教に関する言葉が多い。
法事などでお経を読むとき、普段とは違う漢字の読み方をした記憶がある人もいるかもしれない。
たとえば、「男女」を「ダンジョ」ではなく「ナンニョ」と読む、といったことだ。この「ナンニョ」も呉音である。
なぜ仏教に関する言葉が多いのか?
その理由は、次の”漢音”について読めばわかる。
4.漢音
漢音は、日本で初めて正統とされた読み方である。
正統認められた経緯は、以下のとおり。(読み飛ばしてもOK)
日本政府は漢音を正統と認め、呉音を一掃しようとする。
そしてそれは、ほぼ成功した。
漢音は、「トントントーン!!」と、出世の階段をのぼったのである。
その証拠に、現代の音読みにおいて最も多い(馴染みがある)のは漢音である。
だが、政府も不可侵な領域があった。
仏教界である。
だから、仏教に関する語は呉音が多い。
キリスト教における「礼拝」はレイハイ(漢音)だが、仏教における「礼拝」はライハイ(呉音)である。
「礼」の読み方一つとっても、呉音と漢音の違いがわかる。
このようにして、呉音・漢音は音読みの二大区分となった。
5.唐音
唐音は、最も遅く日本に入って来た読み方である。
中国から海に渡る船の中で、唐音は思った。
文明が未成熟な当時(鎌倉時代あたり)、船旅は現代とは比べ物にならないほど危険で長いものであったに違いない。
ザバァーザバァーと荒れ狂う波。
限られた食糧。
船という閉鎖空間。
しかし唐音は耐えることができた。
日本での生活を夢見て。
日本という舞台で活躍したい。
新しいものは、歓迎されるはずだ。
元気溌剌、意気揚々、自信満々で日本にやってきた唐音。
だが、そこに居場所はなかった。
すでに法令や書類という国の運営に必要な分野で漢音が定着していたのだ。
その漢音を排除することはデメリットしかない。
唐音が広まるはずがなかった。
それでも、唐音は戦った。
その勇戦によりかろうじて存在する読み方を挙げてみよう。
冒頭に書いた「巻繊汁」の読み方は、
巻繊汁
である。
「けんちん汁」と表記されることがほとんどで「巻繊汁」と漢字表記されることは、まずない。
「巻繊」は唐音読みであり、読めない人がほとんどだからだ。
日本でも最も変態な辞書の『新明解国語辞典』(第四版)では、
などとわざわざ解説されている。
では、本題の「饅頭」の「ジュウ」は呉音・漢音・唐音のどれなのだろうか?
ここまで読んでいただいたならわかるはず。
「頭」は、唐音である。
もし、あなたが、
と憤りを感じたら、それはだいたい唐音である。
でも怒らないでほしい。
唐音は、夢を抱いて日本にやって来た、若者みたいな存在なのだから・・・・・・。
というわけで答え。
出版を目指しています! 夢の実現のために、いただいたお金は、良記事を書くための書籍の購入に充てます😆😆