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『ガリガリ君』は食べると”シャリシャリ”するのになぜ『シャリシャリ君』ではないのか?

暑い。
コンビニに走り『ガリガリ君』を買う。



かじりつくと、シャリシャリという音がする。
そう、”ガリガリ”ではなく”シャリシャリ”だ。




赤城乳業(ガリガリ君の製造元)のウェブサイトにアクセスし、商品説明を確認する。

ソーダアイスの中に、ガリガリとした食感が特徴のソーダカキ氷を入れたアイスキャンディー。

赤城乳業公式ウェブサイト
『ガリガリ君』ソーダ(スティック)


どうやら、『ガリガリ君』は”かき氷”でできているらしい。



かき氷にふさわしいオノマトペ(擬音語、擬態語のこと。サクサク、もっちりなど)といえば、”シャリシャリ”である。
断じて、”ガリガリ”ではない。



👇”シャリシャリ”という表現の例


赤城乳業のツイッター公式アカウントでは、『ガリガリ君』が氷の粒でできていることが書かれている。


『氷のかたまり』なら、ガリガリという音がするだろう。
しかし、『氷の粒』なら、シャリシャリがふさわしいと思う。


というわけで、今回のお題。


この記事について⬇️⬇️


❶社員の意図は?

『ガリガリ君』という名前をつけたのは、赤城乳業の社員であろう。
どういう意図でつけたのだろうか。


『日本ネーミング大賞』というサイトに、由来が載っていた。

商品名は、氷をかじった時の擬音から「ガリガリ」でほぼ決まりかけていたが、スタッフ一同物足りなさを感じていたところ、専務(当時)が「じゃあ、『君』を付けようよ」と提案し採用され『ガリガリ君』となった。

日本ネーミング大賞
2020 優秀賞 『ガリガリ君』
(引用の許可をいただいています)



名前に『君』がついたエピソードが語られており、興味深い。


しかし、いま大事なのはそこではなく、

「氷をかじった時の擬音から「ガリガリ」でほぼ決まりかけていた」

の部分である。
スタッフは、氷をかじった時の擬音(オノマトペ)を「ガリガリ」と認識していた、という点に注目したい。


疑問に思うことがある。





ほんとに、「ガリガリ」って音がしたのかな?=͟͟͞͞(꒪ᗜ꒪ ‧̣̥̇)



私は違うと思う。
スタッフの間に”何か・・”があり、『ガリガリ』が採用されたのだ。

その何か・・を解明したい。


❶濁音の効果


謎を解いていこう。


次の文のカッコに「ぺたり」か「べたり」を入れていただきたい。


ハガキに切手を(   )と貼る。


多くの方が、

ハガキに切手をぺたり・・・と貼る。

にしたと思う。


⬇️「切手をぺたり」の例



では、次の文はどうだろうか。
(「ぺたり」か「べたり」を入れてください)


暑い。汗で服が(   )と身体に張りつく。



ここでは、

暑い。汗で服がべたり・・・と身体に張りつく。

にしたのではないだろうか。



なぜこのように使い分けるのか・・・・・・?


理由は、単純。
オノマトペに濁音がつくと、嫌な感じ・・・・がするからだ。

☺️サラサラの髪の毛
😨ザラザラの肌

☺️きらきら輝く星
😨ぎらぎら照り付ける太陽

☺️じっくりコトコト煮込んだスープ
😨じっくりゴトゴト煮込んだスープ


他にも、料理をする際、小麦粉などが溶けきらずかたまりになってしまうことを、「だまになる」という。


たま」ではなく「だま」。
塊になるのは、歓迎されないこと(≒嫌な感じ)だからだ。


👇「だま」の使用例



このように、濁音がつくことで嫌な感じ(マイナスイメージ)がつくことを濁音減価だくおんげんかという。





❷濁音は本当に嫌なヤツ?


「じゃあ濁音がつくオノマトペはすべて『嫌』なものなんだね」

と思う人がいるかもしれない。
そんな人に強く主張したいことがある。


以下、2つセットの例文を見比べ、濁音減価が起きているか(濁音の方に、嫌な感じがするか)を考えてほしい。

◆おじいさんの肩をトントン叩く
◆太鼓をドンドン叩く

サクサクのクッキーを食べる
◆ねぎを包丁でザクザクと切る

(野球のバッターが、ピッチャーが投げたボールを)

コツンとバットを当てた
ゴツンとバットを当てた

(photoAC)

特に「嫌な感じ」はしないはずだ。

それより、力強さ・・・を感じる。



実は、濁音がつくと「嫌な感じ」がする場合もあるが「力強さ」が追加されることもあるのだ。

◆おじいさんの肩をトントン叩く
◆太鼓をドンドン叩く(←力強く叩く)

サクサクのクッキーを食べる
◆ねぎを包丁でザクザクと切る(←力強く切る)

(野球のバッターが、ピッチャーが投げたボールを)

コツンとバットを当てた
ゴツンとバットを当てた(←力強く切る)



さらに、「力強さ」だけでなく、「大きさ」「重さ」の要素も加わる。

◆太鼓をトントン叩く
(小さくて軽い太鼓を叩くイメージ)


◆太鼓をドンドン叩く
(大きくて重い太鼓を叩くイメージ)


(👇トントン叩く太鼓)

(photoAC)


(👇ドンドン叩く太鼓)

(photoAC)


繰り返すが、濁音がつくと「力強さ」「大きさ」「重さ」の要素が加わる。




❸漫画のタイトル


ところで、男児という生き物は「強いもの」を好む傾向がある。

外出したら、『木の棒』を装備し、常に”何か”と戦っている。


↓実例


【注意】
あくまで、傾向であり、個人の感想です。
男女差別の意図はありませんが、不快に感じる方がいらっしゃったら申し訳ありません。



男児は少年へ、そして青年へ成長していく。
その過程で「強さへの憧れ」が失われることはない・・

だから「力強さ」をもたらす濁点が大好きだ。



その証拠に、人気漫画(中でも、バトルものスポーツもの)には濁音がついていることが多い。

以下、人気作を列挙してみよう。




『ドラゴンボール』



『スラムダンク』


『キングダム』


『バキ』


『ベルセルク』


『ダイの大冒険』


BLEACHブリーチ


『ボボボーボ・ボーボボ』 
(これは違うか?😅)


濁音が使われている人気作品が多いのである。



「その理屈で考えたら、『コロコロコミック』は『ゴロゴロコミック』であるべきでは?」

と思った人もいるかもしれない。

(Amazonで検索したら、電子書籍版もあってびっくりしました。コロコロといえば、「あの物理的な分厚さ」がウリだと思うのですが・・・・・・😅)




その考えは正しい。
が、私は、

『コミックボンボン』派


だったので、そんなことは知らぬ。
(↑どんな理屈なんや)



❹漫画のタイトルだけじゃない!!


男児はゲームも好きだ。

ゲームからも、濁音と強さの関係がわかる。


まずは、ドラゴンクエスト。


(↑私がイチバン好きなのは「5」です😄)


ドラクエの呪文(キャラクターが使う魔法)は、強力なものになると濁音がつく。

 メラ
→メラミ
→メラーマ

 イオ
→イオラ
→イオナ

ホイミ
ホイミ

男児たちは、キャラクターが「メラゾーマ」を覚えたとき、

「なんて強そうな呪文なんだ・・・・・・!!」

と無意識に興奮していたに違いない。


次は、ファイナルファンタジー。


(↑マテリアの組み合わせがくっそワクワクする「7」😆)


こちらも魔法が強化されると、濁音がつくようになる。

 ファイア
→ファイラ
→ファイ

 サンダー
→サンダラ
→サンダ


これらのゲームは、少年たちのオトコゴコロをがっちりと掴んだ。(女性ファンもたくさんいるが)


その理由の一つに、「強そうな名前の呪文・魔法」があったと言えるのではないだろうか。


何かに名前をつけるとき、「強さ」を出したいなら濁音をうまく利用すると効果的なのだ。



❺結論『ガリガリ君』が『シャリシャリ君』ではない理由


『ガリガリ君』の商品コンセプトは「遊びに夢中の子供が片手で食べられるかき氷」である。
つまり、メインターゲットは、子供なのだ。


その事実と、今までの考察を踏まえ、なぜ『ガリガリ君』という名前になったのか――当時の様子を想像したい。

【注意】
想像ですので、当然フィクションです。


A「新商品、完成しましたね。名前はどうしますか?」

B「かき氷がベースの商品なので、『シャリシャリ』なんてどうでしょう?」

専務「悪くないけど、なんかしっくりこないんだよね。子どもが喜びそうなものって、何かなぁ?」

大事な新商品の名前である。
簡単には決められない。


(photoAC)


B「子どもが喜びそうなもの・・・・・・」

A「うちのボウズたちは、二人とも強いモノが好きですねぇ」

専務「それだッ!」

専務は突然、立ち上がる。

専務「男児ってのは、強いモノが好きなんだよ!」

B「では、『ガリガリ』という名前はどうですか?」

A「いいね、なんか強そうだ!男児たちのオトコゴコロを鷲掴みにしそうだぜ」(←自分も男児だったので、強いモノに興奮している)


B「女性だって、強いヒーローなどに惹かれますから、悪くないはずです」

A「まずは男児向けのヒットを狙い、おいしさが口コミで広がれば女児にもヒットしますよ!」

専務「よーし、じゃあ『ガリガリ』に『君』をつけて『ガリガリ君』で、いこうか?!」(←自分も男児だったので、強いモノに興奮している)

A・B「賛成でーす!」

こんなやりとりがあったに違いない。


かくして、『ガリガリ君』のネーミング(マーケティングの一部)は見事成功し、40年以上愛される人気商品となったのだ。
(ガリガリ君は1981年に発売)


というわけで、答え。



赤城乳業さん、実際のところはどうでしょうか?😅




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