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交渉や紛争解決に役立つIPI分析とは~「オレンジの取り合い」の事例で学ぶ~

仕事やプライベートで、意見が合わない相手とどう話し合うか悩んだことはありませんか。そんなとき、IPI分析という手法を使えば、双方が納得できる解決策を見つけることができます。

IPI分析とは、問題点や争点(Issue)、態度や行動(Position)、動機や目的(Interest)を明確にすることで、より良い解決策を探すことができる分析手法です。この記事では、IPI分析の方法とメリットを、「オレンジの取り合い」という事例を使ってわかりやすく説明します。

IPI分析とは

IPI分析とは、交渉や紛争の当事者の問題点や争点(Issue)、態度や行動(Position)、動機や目的(Interest)を明確にすることで、より良い解決策を見つけることができる分析手法です。

IPIは、Issue(イシュー)、Position(ポジション)、Interest(インタレスト)の頭文字からなります。それぞれ以下のような意味を持ちます。
・イシュー(問題点や争点):当事者間で対立している問題の内容と原因
・ポジション(態度や行動):自分が問題に対して取りたい態度や行動、相手に求める態度や行動
・インタレスト(動機や目的):自分が問題に対して持つ動機や目的、価値観や感情など

問題を解決するとき、ポジションにこだわると、互いに譲らない対立や紛争になりやすいです。しかし、ポジションの奥にあるインタレストを理解することで、共通点や相互理解が見つかりやすくなります。また、インタレストからイシューを確認したり見直したりすることで、より多くの選択肢や創造的な解決策が生まれる可能性があります。

IPI分析の事例:「オレンジの取り合い」

IPI分析の具体的な方法を理解するために、「オレンジの取り合い」という事例を見てみましょう。この事例は、ロジャー・フィッシャーとウィリアム・ユーリーが著書「Getting to Yes」で紹介したものです。

ある日、姉と妹が一つのオレンジをめぐって争っていました。母親は、二人に半分に切って分けなさいと言いましたが、どちらもそれで満足しませんでした。母親は、二人にそれぞれどうしてオレンジが欲しいのかと尋ねました。すると姉は「ジュースを作りたい」と言い、妹は「マーマレードを作りたい」と言いました。そこで母親は、オレンジの果肉を姉に、皮を妹にあげたら二人とも欲しいものを作れると気づきました。さらに話を聞くと、二人とも母親のために作りたかったのだということがわかりました。

この事例では、姉と妹がそれぞれ、「オレンジが欲しい」というポジション(態度や行動)を主張していますが、そのポジションの奥にあるインタレスト(動機や目的)は異なっています。姉はジュースを作りたくて果肉が欲しかったのですが、妹はマーマレードを作りたくて皮が欲しかったのです。また、二人とも母親に喜んでもらいたいというインタレストがありました。母親は二人のインタレストを理解することで、単にオレンジを半分に分けるよりも良い解決策を見つけることができました。

この事例は、ポジションで交渉すると、勝ち負けの状況になり、利益を得られる(勝つ)のは一方の当事者だけになることを示しています。当事者のポジションの奥にあるインタレストを理解しようとすると、共通点や相互理解が見つかりやすくなります。また、インタレストからイシュー(問題点や争点)を確定したり見直すことで、より多くの選択肢や創造的な解決策が生まれる可能性があることの重要性も示しています。

インタレストを理解するために

インタレストを理解するためには、相手がなぜそのポジションをとっているのかを知ることが必要です。そのポジションの奥にある相手の動機や目的、価値観や信念、感情やニーズなどを把握することで、インタレストを理解することができます。そのためには、相手の気持ちに共感したり、承認したり、理解したりしながら話を聞き、質問をしながら対話することが大切です。この対話の過程で、ポジションの奥にある葛藤、心配、不安、不満などにも気づくことができます。

IPI分析のメリット

IPI分析は、対立や紛争を解決するための有効な手法です。対立がエスカレートする前にインタレストに気づくことで、大きな紛争や別の対立に発展することを防ぐことができます。また、相手の感情やニーズに共感したり対応したりすることで、対立や紛争解決への協力意欲や解決策への満足感を高めることができます。ビジネスにおける交渉の場面や、日常生活にも役立つ手法です。

IPI分析のメリットは、以下のようにまとめることができます。

• イシュー(問題点や争点)を明確にすることで、問題の本質を見極めることができる。
• ポジション(態度や行動)に反応せずに、相手のインタレスト(動機や目的)に気づくことで、共通点や相互理解が見つかりやすくなる。
• インタレストからイシューを見直すことで、より多くの選択肢や創造的な解決策が生まれる可能性がある。
• 相手の感情やニーズに共感し対応することで、対立や紛争解決への協力意欲や解決策への満足感を高めることができる。

まとめ

この記事では、交渉や紛争解決に役立つIPI分析という手法を紹介しました。IPI分析は、ポジションに反応せずに、ポジションの奥にあるインタレストに気づき、対話を通して関係調整を図ることで、対立や紛争のより良い解決につながる手法です。コミュニケーションスキルを向上させるだけでなく、あなたの人間関係を豊かにすることにも貢献します。

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