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ボート釣りでの恐怖体験

三浦半島のとある海岸。ボートでの釣り人が集う小さな浜辺があります。
30年近く前に、同僚と共に早朝からのボート釣りに行きました。
もちろん、貸しボート利用。そう、手漕ぎボートです。
早朝といっても8:00くらいなので釣り人からすれば遅いくらいの開始時間。

えっ、なぜ、もっと早く行かなかったのかって?
貸しボート屋のおじさんの出勤が8:00だったのです。なので仕方なく8:00ということに。

少し風があるけどとてもいい天気なので胸が高鳴ります!
その日の狙いは、メバル。


ここで少しうんちく。

メバルとは、岩場に生息する目がとっても大きい魚。
なんと、卵ではなく、メスの体内で孵化して仔魚として生まれてくる珍しい魚です。
煮付けにすると美味しい魚ですが、釣りたてなら刺身で食べても、とっても美味しい魚です。
ちなみに、春を告げる魚としても有名ですね。
通常は、春の夜釣りで狙いやすい魚ですよ。

メバル


いざ出港 !


餌は、ゴカイは高いのでイソメを仕入れました。
どちらもあまり気持ちのいいものではありませんが、慣れれば平気です。
手漕ぎボートを一艘借りて二人で乗船。
交代で漕ぐことに。
漕ぎ手を交代するときは小さなボートの中で、前後の席を入れ替わるのでちょっとしたスリルが味わえます。

なぜ、入れ替わるのかって?

後ろ向きで漕ぐ方が力が入るので、中央に座る人は後ろ向きで座っています。もう一人は、後方のスペースに座っているので、ちょうど向かい合って乗っている感じなんですね。で、後ろに乗ったままでは漕げないので、真ん中の人と交代をするということになります。
イメージできますか? 
普通カップルで乗るときは交代することはありませんけどね。。。


さて、話を戻します。
勢いよく漕ぎ出した、二人の釣り人。
陸から20mほど離れ、最初の釣りに挑戦です。


海底は岩場なので、釣り針が岩に引っかからないように、気をつけながら餌をつけた釣り糸を海底に静かに投入。


暫くすると、ツンツンというあたり。おっ、早々とメバルかなと期待を膨らませ、頃合いを見て釣竿をあげます。
10cmちょっとのメバルがかかっていました。メバルは一箇所に数匹で生活しているようなので、連続で釣れることが期待できます。
ただし、気をつけたいのは、3-4匹釣ったら場所を変えること。後ろ髪を引かれても移動すること。
それでまた、そのあたりで生活していたメバルは繁殖することができます。
メバルは、生まれた場所をあまり移動しないようです。(本当かどうかは知りません)

そうしているうちに、釣れなくなったので、沖を見てみてみると、大きな釣り船が何隻も止まっていて多くの釣り人が竿を出していました。
距離にすると100m程度沖合だったかもしれません。ただ、海上では思った以上に遠くに見えるので、実際にはその半分くらいだったかもしれません。いずれにしても、多くの釣り船がいたということです。一部は、メバル狙いだったようです。


そろそろ場所を変えようかとと同僚と話をして、もう少しだけ漕ぎ出すことにしました。
出発した浜辺が湾のように囲われている場所だったので、その外側に行って釣ってみようということになったのです。
湾の外なので、ちょっとだけ、波が高くなりましたが、それほどでもないと判断し、ブロックをロープで結んだ錨があるのでそれを海中に投げて、ボートを固定して釣り再開です。

うーん、下は岩場のはずだけどなかなかヒットしないねとお互いに確認している時、異変を感じました。

「流されてない?」

錨で固定していたはずなのに見える景色の位置が変わっているようでした。

「ちょっとまずいね」
「いや、かなりまずい。錨を上げて浜に戻ろう」

早速錨を引き上げました。
同時に、波に乗って大きく流されるのを感じ、急いで逆向きに漕ぎ始めました。

周りをよく確認すると、引き寄せられる先の水面の上には岩場が連なっています。
そして、流されているのは沖に向かってではなく、この岩場に向かっていたのです。
どうやら満ち潮になっていたようです。
もし、この岩場に叩きつけられたら、投げ出されるだけで済まないということを二人とも直感しました。

さぁ、大変。

必死に漕ぐ、しかし、進まない、どちらかというと岩場に引きつけられる。

余計に焦る。ボートは進まない。ということをかなり繰り返していました。


こんな状態の時、人はかなりハイになるようです。
私は、漕ぎながら、大きな声で笑っていました。

「あっははは、このまま叩きつけられたら、死んでしまうかもね」
「腕、限界、もう漕げない。でも岩場は嫌だー」
「なんとか、脱出しよう。横に漕いで逃げよう。笑っている場合じゃないけど笑ってしまうね。ワハハ」

こんな会話を交わしながら、元の砂浜に向かって必死に漕ぎ出しました。
面白いことに、岩のそばまで引き寄せられると、岩場に打ち寄せた波が沖に向かって戻るので、意外と岩に激突という状態にはならなかったのです。
返す波に乗った時、横にこぎ出して何とか、岩場に向かう波から脱出成功 !

思わず、「やったー」と二人で歓喜の声を上げていました。


ヘトヘトになりながら浜辺に戻り、陸に上がった途端、「恐怖」が襲ってきました。
もしかしたら、大変なことになっていたかもしれなかったなぁと。。。
思い出すことで、恐怖が何倍にもなったようでした。


何はともあれ、無事に生還したと同時に数匹のメバルもゲットし、それぞれの帰路につきました。
あっ、帰る前に、メバルの刺身を食べたことを付け加えておきます。
命がけで釣ったメバルの刺身はたまらなく美味でした。

それ以来、小さな手漕ぎボートで岩場の沖に出ることは無くなりました。
メバルは、防波堤から夜に釣ったほうがより安全ですね。


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#海での時間 #エッセイ #釣り #ボート #日常

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