つみのかじつは夢をみせる【編集版②】

 昨日の投稿、の続き。中の人はドラマ「ワカコ酒」が大好きで、先週ワカコちゃんがガストで呑んでいたのに倣って、健康診断帰りにガストで呑んできてご機嫌。猫ちゃんロボットが麦酒や料理を運んでくるのが可愛くて…

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猫ちゃん、このドヤ顔。また行こう。

 今日は「正しい街」がテーマ。本だとかそういうのを読んで自分の独断と偏見にまみれているので「この解釈違う」とかは胸の内に秘めていただけると。

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地元に帰るたびに思うこと~「正しい街」~
 1週間ほど実家に帰っていて、一昨日自宅に戻って来た。私の地元……つまり私にとっての「正しい街」は北の湘南と言われるほど気候が良くて、野菜も美味しい。最近は家から自転車で十分ほどの距離のところにある貝塚が世界遺産に登録された。邪魔をする建物もないから、鉄道の写真を撮るのが趣味の人たちがよく海と夕日をバックに写真を撮っている光景も見かける。
 しかし。しかしだ。この夏実家にいる間に青空を見たのは一度。実家に戻る日なんて前日からJRの計画運休が決まっていてずっと天気が悪かった。何が「北の湘南」だ。通っていた高校から見える海なんてものすごく荒れていたではないか。心の中でそう毒づきながら、なんとなく薄暗い車内のなかで聴いたのは「正しい街」という曲だ。
 ここで歌われる正しい街、とは椎名林檎にとっての正しい街で、歌詞に「百道浜も君も室見川もない」とあるように、福岡のことを指す。私は帰省をするたびにこの曲に自分を重ねる。
少しこの曲を掘り下げてみよう。
後悔。と言い表せるほど簡単なものではないけれど、あえてなにかこの曲をひとことで表すとしたら「後悔」が一番近い言葉かもしれない。不安も、怯えも、ほんの少しの期待も全部ぐちゃぐちゃにしたうえでの、後悔。
 この曲の主人公を1組の男女とする(というか歌詞を読む限りそう捉えるのがよいだろう)。2番の歌詞に「可愛いひとなら捨てる程居るなんて云うくせに どうして未だに君の横には誰一人居ないのかな」とあることからとび出したのは女性の方だと思われる。
 忠告されて、それでもなお此の「正しい街」飛び出した。「何て大それたことを夢見てしまったんだろう あんな傲慢な類の愛を押し付けたり 都会では冬の匂いも正しくない 百道浜も君も室見川もない」という大サビの歌詞にはこの上ない「後悔」が詰め込まれている。そしてその後悔がラストのサビの「もう我が儘など云えないことは分かっているから 明日の空港に最後でも来てなんてとても云えない 忠告は全ていま罰として現実になった あの日飛び出した此の街と君が正しかったのにね」に繋がり、最後に冒頭の歌詞をリフレインさせることで、この曲に彼女がのせた感情がより強調されている。
 この人はいったい今までどれだけの後悔とか不安とか、そういうものに押しつぶされそうになって、そのたびにどれだけの傷を負いながら復活してきたのだろう。今では自分の曲について「女の子の人生のサントラになってほしい」等と言葉を発しているが、学生の頃、つまりまだ彼女が〈椎名裕美子〉だけであった頃、「何か手に職をつけなければ」と高校を中退し、ピザ屋でバイトして貯金して十九歳の時に上京。それからも、〈世知辛い浮世〉で話の合わない大人たちに翻弄された。兄・椎名純平や両親から受けたコンプレックスもある。そして今は〈シンガーソングライターで東京事変のボーカルも務める音楽家・椎名林檎〉であると同時に、家に帰れば〈三人の子供のお母さん・椎名裕美子〉でもあるのだ。公式ファンクラブ・林檎班内のコンテンツで彼女が唯一自分の言葉を発するブログを読んでいても「ああ、今きっとものすごく苦しいだろうな」と時々感じることがある。そのたびにこの曲を思い出す。
 そして私は地元に帰るたびにこの曲に自分を重ねる。地元を出て大学進学をすることに後悔はなかったけれど、後悔よりも強い寂しさだとか不安がずっと身体をどこか支配している気がして、特に「百道浜も君も室見川もない」の歌詞がとても刺さるのだ。そしてその感情は、引っ越した時ほどではないが、まだほんの少しだけ心の片隅に残っていて、こうして地元に帰ったり、地元を思い出すたびに、勝手に操ってくるのだ。
 今年の夏の帰省は新学期早々疲労で妹が発熱したり(内心ひやひやしたが発熱以外は普通に元気だったし寝て起きたらほぼ元通りだった)してちょっと大変だったなんて思い返しながらこれを書いている。もうすぐ夏も終わる。暫くは感情に支配される感じともお別れである。

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 「夏の間に仕上げてしまいたかった」シリーズ第一弾。本当は冬まで待ちたかったけれど年内に提出したいと思っていたので、ならばまだ記憶が確かなうちにと思って書き上げたのを覚えている。

 帰省するときのお耳の恋人にするアルバムランキング第1位『無罪モラトリアム』。その1曲目であるこの楽曲が、年々私の中で大きな比重を占めていってるのは間違いなくて、何となく「この曲と生きていくのかな」なんて思う時がある。とにかく大好きなのだ。あと私が初めて実演に行くときの1曲目は絶対これが良い。だから掲載順もこれが一番最初になるようにした。以降の掲載順も全て「私が聴きたい曲順」のみにこだわっている。だから気楽に読んでいただけると嬉しいなあと思ったりしている。

知識をつけたり心を豊かにするために使います。家族に美味しいもの買って帰省するためにも使います。