建築ビジュアライズ・動画編集②知っておくべき動画関連用語
こんにちは。STUDIO55 技術統括の入江です。
「ディゾッて」
「カメラパン」
「次、逆パン」
「そこ、リニアに」
「イーズアウトで半パク溜め」
「ザブトンの色変える」
「ズリ上げ」
「デプス入れて」
分かりますか?
こういった専門用語を使わずにこの内容を伝えようとすると、逆にちょっとした大変さがあります。
つまり、動画制作の現場では、こういった専門用語が分かっているかどうかで作業効率が変わります。
前回に続き、建築ビジュアルにおける動画関連の話しの続きをしたいと思いますが、今回は、知っておくと現場で効率化につながる必要な用語だけを、できるだけ端的にご紹介します。
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●基礎用語
①フッテージ
未編集の素材のこと。動画編集ソフトに読み込む元素材(動画・静止画)を指して言います。
👉ワンポイント
CG制作で動画書き出しをするだけのような場合には聞きなれないかもしれません。動画関係の制作であれば、ごく普通に使う基本用語になりますので、先ずはここからといった感じで覚えてください。
②フレームレート
1秒あたりのフレーム数(fps)。動画は連続する画像のパラパラ漫画のようなものなので、その1秒あたりの画像の数を指します。当然、数が多いほど動きはなめらかになります。
●主なfps
・24(23.976)fps : 映画
・30(29.97)fps : テレビ (NTSC規格)
・60(59.94)fps : 4K解像度向け (ISDB規格)
・120fps以上: スローモーションに適している
👉ワンポイント
1秒あたり30フレームが、私たちの脳が視覚情報を処理する速度にかなり近いと言われています。
映画が24fpsなのは、歴史的にフィルムが1秒24コマであった事もあり、それが標準として残っているからです。※音声と同期するといった技術的な利点もあります。
Web会議で動画をシェアした場合等に不便を感じたりするのは、そもそものフレームレートが低いからで、防犯カメラなどの映像も、常時録画の必要性からフレームレートを3~5fpsに設定しているため、カクカクして見えますよね。
ちなみに、1秒間に送受信できるデータ量のことを『ビットレート』(Mbps、Kbps)と言います。
③シーケンス
フッテージを並べる編集データのこと。動画を編集するための基本的な設定になります。
④H.264
動画拡張子のmp4形式は馴染みのあるものかと思います。
そのmp4を書き出す映像コーデックの事です。
👉ワンポイント
コーデックというのは、動画データの圧縮・変換等を行うプログラムの事です。mp4は最もメジャーなファイル形式で、デバイスを問わず扱えるのが特徴です。
●ビジュアル関連
⑤アスペクト比
画面の幅と高さの比率の事。
●主なアスペクト比
・ワイドスクリーン(16:9) : 映画など一般的な比率
・縦型(9:16) : スマホの比率
・フルスクリーン(4:3) : ワイドスクリーン以前のテレビで使用された比率
・正方形(1:1) : インスタグラムで使われる比率
・アナモルフィック(2.40:1) : 映画などで使われる横長のワイドスクリーン
👉ワンポイント
Premiere Proではオートリフレームシーケンスを使って、一発でリフレームができる優れた機能があります。
※AI機能で被写体を自動フレーム配置してくれます。
ちなみに、DaVinci Resolveでは、縦横のシーケンス設定の切り替えは、チェックのオンオフだけです。
⑥トランジション
カットとカットのつなぎ方。つなぎ方のエフェクトの事。
👉ワンポイント
建築動画のほとんどは編集がされていないような状態のものが多く、トランジション設定もない傾向が多く見受けられます。特に派手なつなぎ方をする必要はありませんが、動画は静止画制作とは異なり、より空間を流れる ”時間”を表現するものでもあるため、トランジションの認識は表現の一端としてとても大事になります。
⑦ ディゾルブ
フェードインとフェードアウトが重なって移行するカットの見せ方。
👉ワンポイント
建築動画では、派手なトランジションは好まれない(やる必要がない)ため、ディゾルブや、フェードイン(アウト)、ホワイトイン(アウト)、ブラックイン(アウト) くらいを覚えておけばよいです。
くつろぎ、ぬくもり、豊かさ、ゆったり感、高級感…等々
これらが建築表現におけるメインワードになりますので、時間軸をゆるやかに移行して見せるディゾルブが、使用頻度の高いトランジションになります。
「ディゾって」と言われると、この事。
⑧ ローワーサード
画面下(動画の下部1/3の意味)に入れるテキストやグラフィックアニメーションの事。
👉ワンポイント
画面上部に入れても同じ呼び名です(笑)
例にある「ザブトン」は、文字背景に設定するテキストボックスの事です。
⑨ コールアウト
引き出し線から指し示す補足説明。特定の物を示して見せる場合に使用します。
⑩ イージーイーズ(イーズカーブ)
画面切り替えや、ローワーサード等のアニメーション設定で、アクセントのある動きの見せ方。
●主な3パターン
・イーズアウト : 早く → ゆっくり
・イーズイン : ゆっくり → 早く
・イージーイーズ : ゆっくり → 早く →ゆっくり
⑪ リニア
イーズに対して均等な動きをリニアといいます。直線のアニメーションカーブになります。
👉ワンポイント
建築動画ではカットごとにイーズがかかった動きが主流のように多くあります(ソフトの多くはイーズ設定がデフォルトになっている場合が多く、気にせずそのまま使用してしまっているのだと思われます)が、動画制作全般においてはリニアが通常です。
※先だってのD5 Renderのアップデートで、動画の初期設定がリニア(Linear)になっていたのには感動しました。(笑)
建築動画制作においては特に意識されていない方が多いのですが、筆者は真面目に気になってしょうがなく、絶対と言ってもいいぐらい指摘をします。
「そこ、リニアに」
●カメラワーク
⑫パン
カメラを、左~右(パン)、右~左(逆パン)に見回すように振るショット。パンニング。横移動。
⑬ パンアップ / ダウン
カメラらを、下~上(パンアップ)、上から下(パンダウン) する縦移動のショット。ティルト。
⑭ ドリー
カメラが被写体に寄る(ドリーイン)、遠ざかる(ドリーアウト)の水平移動のショットのこと。スライダーショットとも言います。
👉ワンポイント
ズームとは異なるカメラワークである点に注意して下さい。ちなみに、ズームと組み合わせる見せ方を 「ドリー・ズーム」 と言います。
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とりあえずですが、この程度の用語を分かっておいてもらえると、やりとりが非常に楽になります。
これを解説しながらだと、いささか面倒な事がお分かりいただけるのではないでしょうか。(笑)
ちなみに、最初に例として挙げた「ズリ上げ」というのはあまり建築系の動画編集では使わないテクなので、先ほどの一覧では省きましたが、エモーショナルにつなぐ場合に使う機会もあるかと思うので、補足としてお伝えすると、「Jカット」「Lカット」というつなぎの手法です。前のカットに後カットの音声をズリ上げてかぶせるのをJカットと言います。それを、日本の映像業界では、”ずり上げ” と業界用語的に言い習わします。また、その逆はLカットで、これは “ずり下げ” と言ったりします。
また、これも例として挙げた「デプス」ですが、これは Depth of Field(DOF)の略で、被写界深度の事をいいます。つまり、ピントを被写体に合わせて周辺をぼかすカメラレンズ設定を略してそのように言います。
逆に、全体にフォーカスが合っている状態の事を「パンフォーカス」と言います。
建築ビジュアルにおける動画用語はあくまで限定的で良いかと思いますのでご安心いただければと思いますが、映像に関する表現手法はまだまだたくさんあります。
これ以上お話しすると訳が分からなくなると思いますので、その辺りについては、また機会を見て、別でお話しができればと思います。