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YouTube新規定とAI系コンテンツ規制について

 こんにちは。STUDIO55 技術統括の入江です。
 昨今のYouTubeの勢いは目を見張るものがありますね。
 2011年7月24日に地上アナログ放送が地上デジタル放送に完全移行し、これからはオンデマンドサービスといわれてからYouTubeが急激な成長を見せてきました。今では老若男女、街中で動画視聴が当たり前になり、仕事での新幹線移動などでも、必ずといっていいほどトレーにスタンドしたスマホでYouTube動画を視聴する姿を目にします。
 その昔、YouTubeに広告がなかったのを知らない世代の方も多いかもしれませんが、私などは、いまだに広告なしのYouTubeを懐かしく思い出します。おそらく、YouTubeに広告が出るようになったのは、地デジ完全移行の1年後あたりからだったでしょうか(違ったらすみません)。かなりショックだったのを覚えています。

 AIが世に聞こえてから、様々なプラットフォームでセキュリティ対応に追われる様子が伺われますが、ビジュアルに携わる人間として、YouTubeの動向は今の時代の需要反映の一端として、少しまとめておきます。

●新規定について

 既にご存じの方も多いかとは思いますが、YouTubeは昨年(2023年)、新規定を発表し、収益化の条件緩和を行いました。
 YouTubeを視聴していると、ある時から見慣れない 『Thanks』 というボタンがあるのに気付いた方もいらっしゃるかと思います。これは、応援してくれる視聴者から収益を得るSuper Thanks(スーパーサンクス)という機能です。簡単にいうと、通常アップロード動画への “投げ銭” 機能です。

 投げ銭というと、どこか大衆演劇的なニュアンスにもなりますが、この機能は、クリエイターと視聴者の双方にメリットを持つ、いわば “直接クリエイターと視聴者を結ぶ” サービスになります。

(詳細は下記動画でご視聴いただければと思います)


 YouTubeの新規定について簡単にお伝えすると、これまでの広告収益の条件に加え、新規定によって収益が2段階に分けて得られるようになりました。つまり、今回の新しい条件をクリアしたクリエイターは、第1段階として先ほどの「スーパーサンクス」などの機能が使えるようになるという事です。
 YouTubeの収益化機能はいろいろとあるため、それらの内容を理解することから少し面倒な感じもありますが、今回の規定は、結果的に、よりYouTube参加への間口を広げることにつながるものかと思われます。その意味で、ユーチューバーが増えるのも分かります。
 参考までに、YouTubeの収益機能の一例を以下に記載します。

●チャンネルメンバーシップ :

 視聴者は月額料金を支払ってチャンネルのメンバーとなり、バッジ、絵文字、その他のアイテムなどメンバー限定の特典にアクセスできます。

●Super Chat(スーパーチャット) :

 Live配信に際し、Super Chatを購入することでチャット内で自分のメッセージを目立たせることができます。通常のコメントよりクリエイターに認知されやすくなります。

●Super Stickers(スーパースティッカーズ) :

 Live配信に際し、チャットフィールド内にポップアップ、アニメーションのメッセージを表示する機能です。通常のコメントよりクリエイターに認知されやすくなります。

●Super Thanks(スーパーサンクス):

 クリエイターは収益を得ながら、コンテンツに対して特別な感謝の気持ちを表したいと考えている視聴者とつながることができます。

●ショッピング:

 自身のストアや他のブランドの商品をYouTube上で宣伝することができる。

●生成AI動画開示ツール Altered content

 AIをどう取り扱うか--- この課題はまったなしの問題です。
 偽物か本物かまったく区別がつかないフェイク動画などの類に対するYouTubeの対応が待たれました。
 そんな中、YouTubeは、昨年(2023年)11月16日、日本版公式ブログで、生成AIを始め、“改変コンテンツ” または “合成コンテンツ” の使用開示を発表しました。

生成AIに限らず、本物か見分けがつかないコンテンツの情報開示をクリエイターに求め、アップロードの際に開示するオプションが追加設定されます。

“これは、選挙や進行中の紛争、公衆衛生上の危険、公人など、コンテンツがセンシティブな話題について議論している場合は特に重要です。一貫してこの情報開示を行わないクリエイターは、コンテンツの削除や YouTube パートナー プログラムへの参加停止、またはその他の罰則の対象となる場合があります。これが実際に展開される前に、クリエイターがこれらの要件についてしっかり理解できるように、私たちはクリエイターと連携していく予定です。”

YouTube Japan Blog: 2023:https://youtube-jp.googleblog.com/2023/
動画プレーヤーに目立つよう表示されるパネルのイメージ図
説明欄に表示されるパネルのイメージ図

 コミュニティガイドラインに違反するコンテンツは、YouTubeから削除する対応が行われるとあり、有害なリスクを軽減するための徹底した対応が見られます。

 生成AIツールを使って作られたコンテンツは、何によって合成されたかも表示されます。

Dream Screen AI で作成されたコンテンツに表示されるパネルのイメージ図

 昨年から告知されてきたこれら関連内容に関し、米国で大統領選が近づくなかでより危険視されるディープフェイクやフェイクニュース等による誤情報の拡散を防止するといった必要性もあり、いよいよ今年(2024年)の3月19日に義務付けが開始される運びとなりました。
 動画に生成AIが使用されているかどうの説明ラベルが追加されるこのツールを、「Altered content」と呼称します。
※直訳 : 改変された内容 の意味です。

※動画アップロード画面設定にある”改変されたコンテンツ”設定の画面

 AIに関しては、EU(ヨーロッパ連合)議会で包括的にAIを規制する「AI規制法案」が世界初として承認されるニュースもあり、いよいよ本格的なAI使用の法整備が整えられていく流れが見えてきた形です。

 こういった動きには、AIによる社会変革の潮流をどう捉えるかが世界的な課題になっているのは論を待ちませんが、グーグルの元CEOのエリック・シュミットは、昨年11月28日にワシントンD.C.で開催されたアクシオスの「AI+」サミットで、次のようなコメントをしています。

 「コンピューターが自分で物事を決定できる段階までテクノロジーが到達すれば、5年から10年以内にAIが人類を危険にさらす可能性がある」

 また、これらのシナリオは、以前は20年程度が必要と見ていたものが、「一部の専門家はこのシナリオは2~4年程度しかかからない可能性がある」と、予想不可能なAIの急速な進化を警告しています。

 なんだか、ターミネーターかなにかのSF映画の世界のようで、少なからず緊張感が走りますね。

 
 YouTubeはご存じのようにGoogle傘下の会社です(2006年10月、16億5000万ドルで「YouTube」を買収)。Google全体では世界中で2万人以上の審査担当者によって、AIによる違反の可能性があるコンテンツを大規模検出する体制をもってあたっているとのコメントもあります。今年(2024年)になってGoogleが1万人規模の人員削減をしたニュースもありますが、今後の展開として更にAIに投資していく方向を示しています。

※画像生成AI Stable Diffusion使用

 AIそのものの変革は、人類の利益か脅威か、といった二極化の見解の中で、どのようにAIを規制するかが今後の焦点となります。その具体的な展開が、昨年10月のG7サミットにおける「広島AIプロセス」、11月の世界初の「AI案件サミット」などの動きなどからも、ようやく課題対応の具体化が見える段階にきたのではないかと思います。

 YouTubeの広告なしでの視聴ができなくなったショックのダメ押しのような出来事が先月(4月)にありました。
 4月16日、広告をブロックするサードパーティー製アプリの使用に対し、全面的な禁止の措置を講じたと、YouTubeが公式発表しました。筆者はそこまでして無料視聴にこだわってはいませんが(笑)、これで、広告なしで視聴するには、YouTube Premiumに登録するしか道はないという事が改めて決定づけられた形です。


 参考までに、YouTube Premiumの価格をお伝えしておきます。
 ※昨年(2023年)7月に、YouTube Premiumは値上げされています。
 個人プラン : 月額1,280円。
 ファミリープラン : 月額2,280円。

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