AIによるデジタル進化の舞台裏
こんにちは。STUDIO55技術統括の入江です。
本日は話題のAI関連について、特にハード面の話しをしたいと思います。
できるだけ必要な内容を簡潔にお伝えしますので、今後のAI理解の一端にしていただければと思います。
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掲載した画像は、画像生成 AI (Image Creator)で作った画像です。
今や世界的に有名な “渋谷” もどきのスクランブル交差点に、これも “忠犬ハチ公” もどきの像を巨大化させてみました。(笑)
文字や画像が破綻している箇所もありますが、これが瞬く間にできるのですから驚きです。
※生成にかかる時間は使用マシーンのスペックに依存します。
こうした画像のように、人ではなく、もはやコンピューター(AI)が画像を作る時代が到来しており、デジタルの革新的進歩はこれまでの仕事や生活における常識そのものをも大きく変えつつあります。
特に “ビジュアル” の持つ影響力は人々にこれまでにないインパクトを与えるものとなっており、建築業界においても、これまでにない表現、これまでにない見せ方についてのご相談が増えてきています。
ChatGPTというアシスタント
STUDIO55は、時代の変化に対応する体制を常に構築してきていますが、その中で 『One More Vision』 と名付けたプロジェクトを立ち上げました。
※このコラムのタイトルでもあります。
まさに、次世代のAIを含むサービス展開を冠するプロジェクトとなります。
プロジェクト名の候補として挙がった『One More Vision』 の言葉からくるイメージを、その当初、AI(ChatGPT)に聞いて確認してみました。
すると、次のような見解を瞬時に返してくれました。
なかなかの見解に驚かされます。
しかもここまでの長文をすぐさま返すのですから、相当に仕事ができるアシスタントです。(笑)
画像デザインを生成し、相談やりとりまでしてくれる…こうした人に代わるAI登場の裏舞台では、コンピューターの驚くべき進化と改革が行われているのは論を待ちません。
AI専用データセンター DGX GH200の衝撃
半導体メーカーのNVIDIA(エヌビディア)は、特にGPUの生産販売に特化した会社です。CG関連の仕事をしてきた方であれば、誰もがお世話になっているメーカーとして有名です。
これまでGPUに特化したNVIDIAが、AIに関連して、データセンター向け CPU 「Grace」を発表しました。GPUではなく “CPU”。 しかも、(インテル×86CPUプロセッサが占める)データセンター市場へ攻め込むというのです。
これまで、Qualcomm(クアラコム)やAMDといった大手メーカーが、データセンター向けプロセッサを持ち込むも撤退を余儀なくされ、いずれも王者インテルを覆すことができなかった歴史がありますから、これはかなり驚きのニュースでした。
NVIDIAの最高経営責任者(CEO)のJensen Huang(ジェンスン ファン)氏は、Graceのメリットについて、次のようにコメントしています。
従来の×86アーキテクチャを使った同等システムと比較にならない性能です。
つまり、人工知能(AI)関連の処理を支えるGPU性能を更に発揮させるためは、ボトルネックになるあらゆる帯域幅を広げ、大量のデータ処理のためすべてのメモリを有効活用する必要があるというのです。
昨年5月の「COMPUTEX TAIPEO 2023」のオープニングキーノートで、ファン氏は、CPU+GPUを1モジュールに統合した「Grace Hopper」*1こと「NVIDIA GH200 Grace Hopper Superchip」を発表しました。これによって、「AIのスケールアウトを可能にしたインフラ」を提供するとしています。
更にGH200 を256基接続して1つの巨大なGPUとして扱うことを可能にした次世代AIスーパーコンピューター「NVIDIA DGX GH200」も同時に発表。その量産化が伝えられました。
それと合わせてジェネレーティブAIに力を入れるGoogle CloudやMeta、MicrosoftといったハイパースケーラーがDGX GH200の導入を決定しており、日本では通信事業者のソフトバンクも導入企業として名乗りを上げるといった興味深い動きが昨年展開されました。
AIは、コンシューマでの盛り上がりに対し、エンタープライズITの世界では、セキュリティやガバナンスなどの観点から導入を躊躇する企業が少なくないため、このDGX GH200のリリースと同時にメジャー企業の導入発表を引き出せたことは、今後の展開にとって非常に効果的であったと思われます。
データセンターの再構築の必要から迫られるAI潮流は、もはや押しとどめようもないものとなっている印象が伝わってきます。耳にする『AI』というワードが、どこか自分には関係のない物事のように聞こえていても、システムの根幹から変化をもたらし、デジタルを牽引するAIは、もはや関係のない人はいないという存在です。
*1 Grace(CPU)、Hopper(AI向けGPU)
※豆知識 : 「Grace」という名前の由来は、米国のコンピュータープログラミングの先駆者であるグレース・ホッパー(Grace Hopper)氏にちなんで付けられたものです。
建築CG業界におけるGPUの進化
AI専用GPUとはまた別軸の話しですが、CG制作の現場では、レンダリングのクォリティが上がり、ワークフローにおいてもレンダリングコストが短縮されて削減される等、ここ10年ばかりでの時代の新旧感が顕著なのも、このGPUの進化が筆頭に挙げられます。
その進化の過程で、制作現場では使えないソフトが出てくるといった問題に直面することもありました。特にGPUに依存するマテリアル関連のソフト(MARI、3D Coat、Substance Designer)等がそうです。現在ではそれ以外のソフトも、ほぼ最新スペックをキープする必要に迫られる使用条件があるため、便利=性能、性能=金額というわけで、便利になる分、形をかえたハード面のコストが常にかかる現実があります。 更には、それらハード面での変化に応じてソフト販売のリリース形態も永久ライセンスが姿を潜め、ほとんどがサブスク契約になるなどといった変化が見られます。
“簡単なのでしょう…” といったお客様感覚も、制作現場からしますと、こういった水面下のハードとソフト両面でのスペック更新の労力がかかっているという点から、ご理解いただくと大変ありがたいです。
AI 無料オンラインコース開設
先日の4月4日、NVIDIAからAIの無料オンラインコースのお知らせが届きました。
何度アクセスしてもなかなか開けずにいましたが、日本では夕方近くにようやく閲覧ができました。
フライング気味でお知らせがあったようです。(笑)
このようなNVIDIAの行き届いたサポート体制のアプローチによって、次のビジネスチャンスにつながるアイデアが加速するかもしれません。いよいよ “デジタル完全体” へ向けて、エンタープライズITの広がりが期待できる段階にきた事を感じます。
わたしはビジュアライズ制作を主としていますが、医療、ヘルスケア、金融、農業、食品工業 etc…。様々な産業界でAIが描き出す次世代の光景に思いを馳せるものです。
今年(2024年)の6月2日、20時(日本時間)から、NVIDIA創業者/CEOのJensen Huang(ジェンスン ファン)氏が、1年ぶりのCOMPUTEXに登壇します。
AIによる産業革命をどのように推進しているかを紹介する基調講演です。
(COMPUTEX 2024)
参加費は無料なので、ご興味があれば、デジタルの驚くべき進化を目の当たりにする良い機会かと思います。
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画像生成AIに関しては、どのように活用できるかのトライアルを筆者自身も行ってきています。何事もそうですが、AIは使用するのと見るのとでは、眼前に映る景色が変わります。
使用すると、これまでの常識がすべて覆される衝撃があります。次世代感覚は ”後戻りできない” 感覚を伴うものですが、まさに “その感覚” です。
これまでのデジタルは、結局 “アナログな人間が操作するデジタル” であるのに対し、AIによって “デジタルが完全体になる” といったイマジネーションを感じます。
AIの話題については、今後の時代そのものの話題でもあることから、次回のコラムでもお話ししていきます。