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たゆたえども沈まず

原田マハ 2017年

・あらすじ

19世紀後半、栄華を極めるパリの美術界。画商・林忠正は助手の重基地と共に流暢な仏語で浮世絵を売り込んでいた。野心溢れる彼らの前に現れたのは日本に憧れる無名画家ゴッホと、兄を献身的に支える画商のテオ。その軌跡の出会いが、”世界を変える一枚”を生んだ。読み始めたら止まらない、孤高の男たちの矜持と愛が深く胸を打つアート・フィクション。

『たゆたえども沈まず』あらすじより引用

・感想

2024年最初に紹介する本は『たゆたえども沈まず』という、原田マハさんの小説です。この本もSNSなどでも紹介している人が多くて、前から気になっていた作品です。年が明けた後もまた図書館に行きまして、その時に目に入ってきて気になり借りてきました。

「アート・フィクション」ということで実際の話とはいろいろと異なる点があるのですが、本当にありそうな内容で、至る所で想像をめぐらしながら読むことが出来ました。

この作品でゴッホの死因を初めて知りました。自殺だったとは全く知らなかったので驚きました。芸術家という特殊な職業を行う人にしか分からない、感覚や負の側面を明瞭に描いているように感じました。自分が有名になれば、仕事も増えて生活も安定しますが、売れない間はなかなか大変だという話は今もよく聞きますよね。生前無名であり続けたゴッホはそうではなかったようなので、恵まれていない人だったんだと感じました。

好きなことで生きていくことはとても素晴らしいことで、出来ればそういう暮らしをしたいという人がほとんどなのではないかと考えています。しかし、こういったことで成功するためには相当の努力をする必要があること、そして、その努力が実るとは限らないということを感じました。下手だ、才能がないと周りに言われたとき、その人にとって昔からの得意なこと、頑張ってきたことを否定されたような感覚になり、ふさぎ込みたくなるのもわかります。「きつくてもあれだけ練習したのに」、「頑張って書いたのに」、「稽古してきたのに」、そういう考えに陥って嫌になることは人間である以上はしょうがないことだといえます。

その人にとって大きなプライドがあるもの、それを目に見えるようにけなしたり、才能を否定したりすることは絶対に良くないと感じました。世の中が認めなくとも、何かを頑張っている人がいたときは、しっかりと目を向けていきたいと思いました。

しかし、誰かに認めてもらいたいと思うのであれば、何もしなければ何も起きないということも同時に感じました。周りのせいにせず、自分自身の力が足りなかったと割り切ることも必要だと感じます。

自分に厳しく、他人には優しく接すること。私はその配分が難しくよく考えますが、バランスをしっかりと保つことが大事だと感じました。

・書籍情報

たゆたえども沈まず 原田マハ
初版刊行日:2020年4月10日
刊行元:幻冬舎
定価:本体750円+税
ISBN978-4-344-42972-7
備考
単行本:2017年10月、幻冬舎刊。

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