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母性

湊かなえ 2012年

・あらすじ
女子高生が自宅の中庭で倒れているのが発見された。母親は言葉を詰まらせる。「愛能う限り、大切に育ててきた娘がこんなことになるなんて」。世間は騒ぐ。これは事故か、自殺か。……遡ること十一年前の台風の日、彼女たちを包んだ幸福は、突如奪い去られていた。母の手記と娘の改装が交差し、浮かび上がる真相。これは事故か、それともー。圧倒的に新しい、「母と娘」を遡る物語(ミステリー)。

『母性』あらすじより引用

・感想
前々からSNSで紹介している人が多かったことや昨年映画化されて、気になっていた作品の一つです。複雑な親子関係を、毒親の視点から、か弱い女の子の視点から描いた作品です。なかなかにドロドロしていた印象でした。

親子関係は家庭によって違いますが、この作品では複雑な境遇によって生まれた者同士の関係だったため、終始ドロドロしている印象でした。親は親なりの愛を込めて子を育てているようでしたが、子からしてみると、普段から親から罵られたり、ぶたれたりを繰り返しているので「もっと自分を愛してほしい。」という想いが綴られていました。

人というのは意思疎通によって成り立つ生き物で、その意思疎通がうまくいっていないと、いざこざが生まれてしまうでしょう。例えば、相手の服が綺麗で「かわいい」という言葉を言ったときに、相手が本当にほめてくれていると取るのか、それとも茶化しているように取るのか、この言葉だけでも、二つのパターンがあります。そのため、人それぞれの個性が生まれるのではないかと考えました。茶化していると思ったときには、もちろん相手は気を悪くしてしまうでしょう。また、SNSは相手の顔が見えず、並んでいる言葉だけで解釈をするのでトラブルに発展しやすいのでしょう。だから、的確に言葉を伝えること、言われた言葉の意味を解釈することは難しいといわれているのではないかと感じました。

解釈は言葉だけでなく、普段の行動もそうだと思います。子どものためを思って厳しく接するお母さんと、それを「親の一方的な感情だけでやっている」と考えている子どもの解釈の違いから感じました。厳しく接することは、子どもを自立させるためには必要なことだと考えておりますが、その限度を考えながら行なわないと、返って相手に悪影響を及ぼすということも実感しました。

普段何気なく交わしている日常の会話も、単語や言葉遣いには十分気を付けたいと考えました。自分がそういうつもりで言っていなかったとしても、相手の解釈の仕方によっては、傷つけてしまっているかもしれないので、よく考えなおしたいと思いました。

最初にも書いた通り、去年映画化された作品だそうです。今は時間がないので難しいですが、いずれNetflixなどで見てみたいと思います。

・書籍情報
初版刊行日:2015年7月1日
刊行元:新潮社
定価:781円(税込)
備考
単行本:2012年10月、新潮社より刊行。


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