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新装版 不祥事

池井戸潤 2007年

・あらすじ

ベテラン女子行員はコストだよ――そう、うそぶく石頭の幹部をメッタ斬るのは、若手ホープの”狂咲”こと花咲舞。トラブルを抱えた支店を回って業務改善を指導する花咲は、事務と人間観察の名手。歯に衣を着せぬ言動で、歪んだモラルと因習に支配されたメガバンクを蹴り上げる!新ヒロインの活躍が痛快なオフィス名編集。

池井戸潤 新装版『不祥事』(2007) 講談社 表紙あらすじ

・感想

『花咲舞が黙ってない』、日テレでドラマ化されていますよね。10年前の最初のころから見ておりまして、とても思い出深い作品です。というか、あれから10年もたったのかという感じです。当時はまだ小3ぐらいでした。

この『花咲舞が黙ってない』というお話。ある日から臨店部という部署へ配属され、そこで数々の不祥事を起こした支店の調査を上司の「相馬」と一緒に行っていくという話です。最初観た時、怒鳴りまくっていて、「なんだこれは!」と衝撃的でした。パワハラのようなことをしたり、犯罪に手を染めているような人も中には描かれていて、それを正そうとする正義感溢れる若き女性行員の姿がみられます。

『不祥事』は花咲舞シリーズの中でも最初の方に書かれた作品で、発表されたのはなんと17年前の2007年!そんな昔からあったのかと驚きました。この頃から「花咲は花咲だな」と思いました。上からの圧にも屈せずに、自分が思ったことをしっかりという。こういう人はなかなか世の中にはいないのではないでしょうか。私でも無理です。おとなしく従ってしまいそうです。しかし、大企業は時として利益を優先し、他のことをおろそかにしてしまうことがある。何か問題を起こしても都合が悪いとすぐ隠ぺいしようとする。銀行のため、課長の保身のため。私は、まだ就職前の大学生なので、社会のことはまだまだ分からないことばかりです。しかし、企業のやり方がすべてではないとも感じました。それは利益を追求するがために、自分の本来したい理想の仕事、理想の職場からかけ離れてしまっていることも多くあるのではないかと感じました。

こういったことから、社会の汚さをこの作品は分かりやすく描いており、それが、もっと良い方向へ向かってほしいという想いが込められた作品なのではないかと考えました。

また、女性差別も問題視されていますが、この作品にもその描写があります。これもまた会社の利益のため、自分自身が好都合になるためという動機で、女性行員をやめさせるという話がありました。それをみていて、あってはならないことだが、残念ながらまだそういった風潮は残っている部分があるのではないかと訴えかけているように感じました。

・書籍情報

新装版 不祥事 池井戸潤

初版刊行:2011年11月15日
刊行元:講談社
定価:本体800円(税別)
ページ数:392
ISBN978-4-06-277137-5

備考
旧版:2007年講談社


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