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今日のソニックファンダム ~テイルスと女装と異世界大喜利~

 2023年5月26日、ソニック・ザ・ヘッジホッグ日本公式ツイッターにこんな画像が投稿されました。

 元々かわいいかわいいとソニックという枠を越えた界隈で広く愛されているテイルスが公式で女装するという爆弾。
しかもテイルスの役柄は『エンタメ界のプリンス』と予告しておいてのこれ。公式、やっとんな。

 なんで公式でパロみたいなことを?という人向けに説明すると、
こちらはソニック公式が今年月イチで展開している#異世界大喜利 という企画の一環です。

 なんらかの異変により改変された世界で、いろんな役柄を与えられたソニックキャラクターの一風変わった描き下ろしイラストにみんなでシチュエーションを空想してboketeのような大喜利をやろうというTwitter企画。
投稿の中からスタッフが気に入ったものが月に二度に分けて公式に紹介されます。
そしてその登場キャラクターは「一人が固定・もう一人をみんなの投票で決める」というもの。
毎月各キャラ(特に公式供給の少ないキャラ)のファンが血で血を洗う争いを展開しています。
今回のテイルスの相方候補はウェーブorマリンでした。
日本のソニックチャンネルでは長年ファンアートの募集企画を展開していましたが、ソニックというキャラクターが、そのファンの盛り上がりが多くの人の目に触れるよう、よりハードルが低く気楽に誰でも参加できるファン参加型企画として始まったものと考えられます。

 それはそれとして、日本より世界で圧倒的人気を誇るソニック・ザ・ヘッジホッグ。
公式ツイッターのリプライ欄も英語で溢れている程度には世界中のファンにフォローされているわけですが、今回のこのイラストはまたちょっと別のコンテクストを持って大いに話題になっています。その件がこの文章の本題。

 というのも、ちょうどこの前日にとある海外のファンアーティスト(フォロワー約2万人の、相当な大手と言っていいと思う)が投稿した漫画が界隈で物議をかもしていたからです。

削除されているので直接引用することは控えますが、その内容は

1枚目 『ソニックがOVAに出てきた服を着ている写真』
2枚目 『クリームがそれを見て"PRETTY"と褒める』
3枚目 『ソニックが言いにくそうに"THANKS, BUT..." なにか不味いことを言ってしまったかと不安そうなクリーム。"そうじゃない、ただ…"』
4枚目 『ソニック:"ドレスを着たエミーみたいな女の子を褒める時はPRETTYやBEAUTIFULと言えばいい。でも例えばスーツを着たテイルスみたいな男を褒めたいならCOOLやHANDSOMEを使ったほうがいいな"(意訳)』
というもの。

 完全にニュアンスがイコールではないのでPRETTY他単語はそのままにしましたが、要は『男を"可愛い"と言うな』という前時代的なジェンダー観の再生産ともとれるこの投稿は案の定否定的な反応を多く呼びました。
コミカルに落としてはいますがソニックがクリームの褒め言葉をわざわざ否定してまで男は・女はという固定観念を押し付けるという描写自体も、内容と合わせて違和感を持った人が多かったようです。
それだけではなく、作者がそういった反応を示したセクシャルマイノリティ当事者及びLGBTフレンドリーな人々のフォローをどんどん解除していったこと等が更に炎上を広げ、結局作者は作品だけでなくアカウント自体を削除しました。

 海外ソニックファンダムはジェンダーが定期的に話題になります。様々な性指向をbioに明記しているファンも多く、日本とは全く空気が違います。
例えば二兎が描いているようなBL作品も決して"女性のもの"という空気ではありません。そこには多くのゲイ当事者や男性ファンも当たり前に存在します。
公式がプライドフラッグを持ったソニックの画像を投稿したり、声優がトランスライツに賛成していたりと様々な理由があり、ソニック自身がLGBTフレンドリーな存在として扱われることがしばしばあります。
そういう空気の中、よりによってソニックに『男は格好いい・女は可愛い』という固定的な主張を作品内でさせるというのは有り体に言って悪手でした。
作者は『トランス差別者』として糾弾され、アカウント削除に至りました。(個人的には、ジェンダー観の固定とトランスジェンダリズムは完全に同一の問題ではないと思うので、批判は理解しつつも批判の方向性に完全に同意しているわけではありませんが…日本でやにわに盛り上がっているトランス女性の議論とも絡んで長くなりそうなのでそれはまた別の話にしつつ)

 『"かわいい"を男に使うな』論はある程度以上の年代であれば日本でも強くあった風潮なのを覚えていると思います。
それが特に表面化したのがニコニコ時代で、BLに限らず男キャラをそういう方向で愛でる作品は平気で荒らされたりするのが当たり前でした。
女オタクの"注意書き"文化が普及した大きなきっかけの一つでもあります。
pixivでもなぜ女オタクだけが特殊なエロでもないのにサムネにワンクッション置くようになったかといえば、そうしないと嫌がらせにあうような時代が確かにあったからです。
これは明確な負の遺産であり、次世代に引き継ぐべきではないと考えています。

閑話休題。漫画を描いた本人が消えた後も(むしろ"大手絵師が垢消しに追い込まれた"というセンセーショナルさを以て、より大きく)この話題は大手~ピコ手まで入り乱れて各々の意見を表明しています。相手がいわゆる"神絵師"であろうとこういった物言いが即座に入るのは日本と大きく違うところだなと感じます。

 こういった流れの真っ最中にまさに『ドレスを着たカワイイテイルス』が公式から投下されたわけなので、英語圏ファンは日本とは違った盛り上がりをしているという次第です。
もちろん公式が意図しているわけがない(タイミング的に間に合わない)し、そもそも日本のソニックチームはジェンダーについてそんなリベラルな考えを持ってはいないと思います。

 ただ、この壁紙カレンダーは6月のものなわけで。
6月といえばプライドマンスであり、セガを含む各企業がLGBTフレンドリーをアピールする期間です。
そのタイミングで"女装"イラストを発表したこと自体には、多少の意図があるかもしれません。

 前回の記事で年齢について触れたように、ソニックというブランドはポリティカル・コレクトネスと無縁でいられるほど小さな存在ではないので…

 それはそれとして、去年の誕生日にはソニックにメイドカフェでバイトさせていた日本公式。
男キャラに可愛い服も女キャラに格好いい服もっとガンガン着せてほしい。
あと壁紙大喜利やおんそくお絵かきなど様々な企画を頑張ってくれているのでみんな気楽にどんどん参加しましょう。
こういった見える数字がコンテンツの未来を広げるんだよ!




ちなみに完全に余談なんですが
今回批判された人は"Emi"という名前で活動されていて
しばらく前に別の"Emi"さんがソニックの声優とセフレなのが発覚したことがあって
Emiって名前すげぇなってちょっとネタにされてたりもする

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