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東京装甲少女 EPISODE0 第19話   【演武】



太鼓のリズムが激しさを増す頃に

舞台の両袖から秋水と大善が現れた。



ギャラリーからは大きな拍手と秋ちゃん!!大ちゃん!!大善!
41代目!42代目!などの大きな声援が2人に向け送られた



カミーユはLABOメンバーの盛り上がりとは裏腹に胸が締め付けられる
思いで2人を見つめていた。



この演武を神田明神から依頼されている
【 錬命新當流 】の道場には、
数回くらいしか足を向けた事はなかったし、
演武とは何か、武芸とは、古武道とは?
そんなレベルだった。


初めはカミーユも、暴力的で野蛮な振る舞いのように思えて
理解し難いという程度ではあったが、


練習後の道着が、どうしたらこんな汚れた状態になるのかというのや
彼らの真剣にお茶の間で話し合う姿や取り組みを見て、
並々ならぬ思いでこの【 演武 】に取り組んでいるのだなと
ひしひしと感じてはいた。


初めて道場に足を運んだ際も、道場で多くの人と共に何だか解らないが
練習に一生懸命、励んでいたのを知ってはいたので、


故にどうか成功して欲しいという親心のような思いで、2人を眺めていた。


舞台に出てきた秋水と大善はいつもとは違う、凛とした表情で九曜紋があしらわれた法被を身に纏い中央に対峙した形になった。



2人が距離を取り、舞台の端と端に向かい合った所で、
激しい太鼓の音は徐々に収まった。

辺りには静寂が満ちた頃


シャンシャンと神楽鈴を鳴らしながら、
宮司と巫女達が袖より現れた。



宮司は巫女が持っている刀を丁重に大善に渡す。
そして、もう、一振りの刀も秋水に手渡された。



二人は宮司より授かった刀剣を、


目を瞑り両手で頭の上に掲げたまま、宮司が舞台より去り、
神楽鈴の音が消えゆくまでその所作は続いた。



鈴の音が消え入り静けさに包まれたころ、


和太鼓の打ち手が力強い音で


ドン!!




バチを振り下ろすと、大善と秋水は目をカッ!と見開き

素早い動作で鞘から真剣を抜き向かい合った。


この演武には真剣が使われている。




刀剣の名前は


「長曽祢虎徹」と「「鬼神丸国重 」である。



この2振りは、

新撰組(三番隊隊長)だった斎藤一の子孫から         神田明神に、昭和に入り奉納されたという。




「長曽祢虎徹」


は、当時海外にあったのらしいのだが、斎藤一が、
自身の子らに、近藤さんが平将門公から、私を救ってくれたという逸話を、子々孫々残していたので、平将門公の呪いを治めるためにと、


斎藤一の愛刀


「 鬼神丸国重 」


と共に神田神社に奉納された。




斎藤一は江戸、明治、大正を生きた武人であり、


一説には

「近江屋事件」


では、かの有名な坂本龍馬を討った
人物ともいわれる人物だ。



口伝で斎藤は、


近藤さんは、芹沢鴨を討った後、少し情緒がおかしくなり、

  


その後、時間があれば京都、西洞院大路の

膏薬辻子(こうやくのずし)

という所に頻繁に通うようになったという。




ある日、斎藤が朝方、一人で見廻りに行くと言って出かける事が続いていたので、不審に思った斎藤は、警護も兼ねて近藤の後を、
膏薬辻子まで隠れて付いていった所、近藤に見つかった事があったと言う。




何故ここに、通うのかという事を質問したら




近藤は、平将門公を拝みに来ているという。
天慶3年に討たれた平将門の首が、この膏薬辻子で       梟し首にされたのだという



それを、高僧であった空也上人が、膏薬辻子で梟し首にされた
平将門公を供養するために堂を建て、石に目印に置いたのが
この膏薬辻子(こうやくのずし)の始まりであり。


ここは「神田神宮(神田明神)」      または京都神田明神とも呼ばれている
とも教えられたいう。



では,なぜここに拝みに来ているかと聞くと



近藤は、魑魅魍魎のような討幕を目論む不逞浪士が次々に現れるのは、平将門公の呪いであると言っていたという。


平将門公は、承平・天慶年間、武士の先駆け「兵(つわもの)」として、関東の政治改革をはかり、命をかけて民衆たちを守ったお方であり。

関東地方で、天皇中心の時代に、抑圧された民衆の為に蜂起した
義侠心に満ちた人物であったが「将門の乱」を起こし新たな政権を樹立し 自分を新しい「新皇」と呼んだ事で天皇の怒りを買い鎮圧された。


死後も、関東地方の人物が、天皇の居る京都にわざわざ、        運ばれ、この膏薬辻子で見せしめの為に梟し首にされたという。


その後、晒された首は、天皇への怨念で飛び回り、周りに災いを
招きながら胴体を求め関東へ飛んで行ったという。


江戸幕府は「 武家体制 」だがいつのまにか、それが弱体化していき、外国の圧力と国内の諸藩の政治的不満により、
民衆の為を考えず御身大事の天皇中心政権への支持をする腑抜けた武士がも多くなってきた。




それにより、平将門公は怒っておられるのだと言っていたという、




斎藤も初めは信じていなかったが、


日を追う事に幕末の京都には何か怨念じみた物が巣食う気配は否定できなかったという、


それから、2人で足繁く膏薬辻子を通ったらしい、、、、。




近藤は、大政奉還がなされた後に、戊辰戦争の明治にて捕らえられ、板橋で新政府軍によって打ち首にされ処刑された。

そして、打ち首とされた首は、将門公と同じく天皇の居る京都に
見せしめの為運ばれ、西京三条河原にて梟し首にされた。



近藤の首は会津の天寧寺に埋葬されたと言う話はあったが、
実際の所、胴体も首もその後は不思議と行方は不明で
あったという、、、、、。


また、近藤の子らも若くして死去してしまうなど、祟りのようなものを
感じずにはいられなくなった斎藤は



自分だけが、幕末、明治、大正まで       生きてきた中で、完全に腑抜けた武士が、  天皇中心政権にしてしまった為、  
    
平将門公の怨念が、討幕を防げなかった   情けない武士の集まりである新撰組の局長という事で祟ったのであろうと、その後も子らに
口伝していたという。



だが、自身も一翼を担ったのではあったのだが、
近藤さんが全ての災いを一身に引き受けてくれたから、
自分たちは時代が変わり政府が変わっても、
祟られず生きながらえているのでお前たちも感謝しないと
いけないとも言っていたという。


これ以上、近藤さんの、親類に何かあっても、申し訳が立たないので、平将門公を祀る神田明神に、なんとか不逞浪士を沢山討ったこの刀と、近藤さんの刀を奉納して、欲しいと言っていたが、



結局、近藤の愛刀「長曽祢虎徹」は当時   どれだけ探しても見つからなかった。


だが、代々、口伝されてきた子孫たちの中で


幾何か過ぎた年、、、、、。



カナダで財を成した日系カナダ人の斎藤の子孫が、


オークションに出ていた日本刀を競り落としたところ、



鑑定書の裏面に
「近藤勇が愛用していた虎徹を贈呈」と書かれた紙があると言って
斎藤の本家に刀剣を送ってきたというのである。



本家も初めは疑っていたが、程なくして先祖の念願がかなったという事で、急ぎ、     神田明神を訪れ、奉納に至ったという。




舞台では、その、経緯によって奉納された両刀にて
演武が行われていた。



2人は向かい合い。

大善が右にブンと真剣を振ると、
秋水は、左へ避け大善に振るう。

片方が上にかち上げると、もう片方避け上から下へ振りぬく
という形で阿吽の呼吸で対称的にを対を成す優美に混ざりあう
演武が繰り広げられた。




【 錬命新當流 】

は実戦を想定した古武道の為、互いに真剣振りかざす際は、
擦れ擦れの状態であり、ギャラリーは息を殺して演武を見守っていた。



会場は、
激しくなる二人の真剣での立ち合いに近い、演武に併せて、
叩きつけられる和太鼓の打撃音と、両者のブンという
豪快な刀を振りかざす音、衣擦れの音以外は聞こえない、

異様な空間が数分間、続き最後に
和太鼓が徐々に収まっていく形で
2人の演武は終了した。



秋水と大善は、元居た、端と端の場所に戻り、

真剣をゆっくりと納め、礼を相手、明神様、将門塚、舞台

そして、最後に、観客に向け礼を行った。


会場は、惜しみない拍手と声援を      2人に送った。



秋水も手をあげ歓声に応えたが、観客の中の女性に


時恵 
【 しゅうちゃん!!あんたこれからだろ?気張りな!! 】



と言われ、少し観客に笑われ野次られながらも



また、凛とした表情に戻り2人は袖に戻った。



少し、時間が開き、観客が、ざわつきだした所に、



また、神主と巫女が現れた。



辺りは再度静けさに包まれたところに、


舞台には、今度は秋水だけが現れた。




秋水は舞台に一礼し袖から入ってくると、神主の前に膝まづいた。



神主は、巫女に火の付いた蝋燭を持たせ膝まづいた、
秋水の近くに持っていくと神主は

煙草を1本秋水に手渡した。




秋水は、渡された煙草に口を付け、蝋燭の火を貰い

煙を大きく吸い込んだ。

それは、神事としては些か異様な光景ではあったが、     その動作は何度か繰り返された。



神主と、巫女は秋水に再度
「長曽祢虎徹」を渡すと舞台から去った。



秋水は舞台の中央に立ち目を瞑り黙ったまま刀剣を、口の高さまで
水平の状態でに持ち観衆の方に向かい立っていると。


観客が見守る中、秋水の体が、煙草の煙のようなものなのか、
また、それとは違う不可思議な水蒸気の様な物が

ふわっと体全体を包み始めた。


水蒸気は更に大きくなり、秋水の体を包み、          



さながら蒸気機関車の様な
煙がブワッと一瞬、広がったと思った瞬間、
秋水が



発!!という掛け声とともに


【 煙練 】 と叫ぶと


辺りの蒸気は無くなり、横一文字に真剣を鞘から抜いた


引き抜いた「長曽祢虎徹」の刀身は
赤く深紅に火を帯び燃えていた。



会場からは、割れるような拍手と喝采が起こり、


その後、秋水は火の付いた刀剣を優美に流麗な動きで振り
一人の演武が続いた。


そして、数刻の後、

今回の将門塚例祭もボルテージが最高潮の中
終幕した。





カミーユは、

秋水が、今回初めて自分が、大善の代わりに演武のトリを務める事になって、とても緊張していると言っていたが、失敗したとしても、神田の皆の為に頑張ると言って謙遜していたが、

蓋を開けると、舞台から降りた秋水は、神田の町の人々や同じ道場の人々から祝福される大成功に終わり、取り越し苦労であったと胸をなでおろした。


だが、秋水の演武が終わったというのに

この、何とも言えない、この胸の高鳴りや、家族のような相手を思いやる切ない気持ちは、【想定外】でずっと解らないままでモヤモヤとしていたのだが、


神秘的で流麗な演武の大役を終え、安堵して舞台を降りた笑顔の彼が、沢山の、神田の人々に、本当の息子の様に
愛され揉みくちゃにされている彼を見て、


この想定外な気持ちの理由が、
初恋というものなのだなと気づいたのは確かだった。


だが、カミーユは同時に父が折角、グランゼコールを蹴ってまで応援してくれた帝都大学の卒業までは、
彼女はこの恋心は、父の為にも隠さなければなという決意を
胸に秘めたのも事実だった。







そういえば、、、、、、、、、、、、、、、、、。


あの舞台の日から




何年経ったのだろうか、、、、、、、。




ザク!ザク!ザク!と


炭になった鳥居付近を歩き


悲しげな表情で辺りを見廻す秋水が


焼け野原となった神田明神に来て
いた、、、、、、。





東京装甲少女 EPISODE0  第20話へ続く、、、、、




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現在こちらの物語の初めのストーリーから現在のストーリーまで
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今後は有料化を予定しておりますのでよろしくお願いいたします。



ここから、初めのストーリーを読む





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