見出し画像

姉のターン:わたしの好きなもの

姉です。なんて素敵な企画なのだろうと思ったので、妹のターンでしたが代わってもらって、キナリ杯に応募します。私の好きなものについて書きました。

わたしの好きなもの:絵本

母が誕生日プレゼントに『こぐまのくまくん』という絵本をくれた。読み終わると母は言った。お布団の下を見てごらん。2巻目があった。次の巻もどこかに隠れていてそれは5巻まで続いた。反対に私は『11ぴきのねこふくろのなか』のウヒアハが怖くてその絵本は見えないところに仕舞っていた。私は小学生になっても母に『ドリトル先生』、父に『ハリー・ポッター』を読んでもらった。

わたしの好きなもの:ナショナルジオグラフィック

毎晩消えてなくなってしまいたかった高校生のとき、母が年間購読した『ナショナルジオグラフィック』を見て、世界にはまだまだ自分の知らないことがたくさんあるんだと思った。

わたしの好きなもの:大学の図書館

大学生になって、世界にはまだまだ自分の知らないことがたくさんあるということを確認して回った。平日は毎日毎日友達と21時まで大学の図書館にいた。勉強したというより友達と喋っていた。図書館が22時まで開いていたら私はその分もっと賢くなっていたと思う。

わたしの好きなもの:市の図書館

大学3年生になって研究室に入った。私は食堂ではなく、研究室でご飯を食べるようになった。大学から一番近いスーパーの横には図書館があって、私は食材を買うついでに本を借りていた。本棚の前に立つといろんな、分野の違う世界が広がっていて、私は研究以外の物に触れる時間を持つことができた。どんなときもとりあえず一冊の本を読めて感動できるというだけで私は自分の人生を肯定できた。

わたしの好きなもの:子ども国際図書館

地味な学校生活を送っていたと思っていたけれど、この図書館にある本を見たらなんて豊かな読書体験をしてきたことだろうと思った。私はやかまし村の子どもたちやイギリスの寄宿学校のおちゃめなふたごとよく遊んだ。

わたしの好きなもの:美術館

学会のついでに訪れた美術館で、そういう風に世界を描いているのではなく、その人にはそういう風に世界が見えているのだと思ったら、私には一生分からないと思って安心した。この圧倒的な美術な世界をどれだけ追いかけても捕まえることはできなくて、私は一生遊んでいられるんだと思ったから。

大学院にいたとき、美術大学にも通わせてもらった。世界を変えるのは科学技術じゃなくて美術なんじゃないかと思ったから。半年以上デザイン学科に通って分かったことは、どちらも問題解決をしたいという目的は同じで、手段が違うだけだということ。私は科学の世界で頑張っていくことにした。

わたしの好きなもの:シカゴ美術館

博士課程に進学し留学していたとき、シカゴ美術館に毎週通っていた。絵の前に立つと平日の緊張の糸がふっと切れた。『パリの通り、雨の日』なんかはその世界に入ることができて私は絵の中に紛れていた。

わたしの好きなもの:新聞

研究室の先生や留学先の家の人が読んでいた新聞を借りて読んだ。新聞を読むと世の中には困った問題がたくさんあると分かって、どれを解こうかなと思ってやる気が湧いた。私もどれか問題を解決したい。

わたしの好きなもの:留学していたアメリカから届くメール

違う環境にいる友達と話すとき、私は自分の人生を誰かの人生と比べずに済む。アメリカからのメールにピアノの音が添付されていることがあった。私のために弾いてくれたと思うとなんだってできる気がした。私が私を低く評価していたらいけないと思った。

わたしの好きなもの:旅行

留学先に戻るとき、何で海外に行くんですかと聞かれて考えたことがある。海外に行くと腹が立つことがたくさんある。理不尽さを感じることもたくさんある。くそうと思う。それを感じに行っているのだと思う。怒りを溜めてなにくそと生きるために行っているんだと思う。それはそのまま私の生きる理由になっていると思う、と聞いてくれた後輩が帰った後で思った。

わたしの好きなもの:青春18きっぷ

東京から福岡に帰省するときはこれを使う。知りたいのはお得な使い道ではなく、私が青春18きっぷをどこまで楽しめるのか、こんな使い方はいいなとどこまで学び続けるのかということ。外国で暮らしているときと同じだ。私自身に興味がある。

わたしの好きなもの:科学

距離が近すぎて科学について話すのを忘れるところだった。研究に向いていないと思いながらも研究を続けて博士号を取得した。私にとって研究は死ぬまでにできるだけいろいろな経験をしたいという願望を叶えるためのひとつの方法だった。博士課程まで行くと死ぬと言われたから進学してみた。死ななかった。科学は常に前に進んでいる。その大きな海を見ることができたから、私は自分のことをちっぽけな存在にできて自由に動くことができた。科学がなかったらどう考えていいやら分からない。

わたしの好きなもの:書くこと

書くことで自分の考えていることが分かる。本と絵と人とそれから科学を頼りに生きてきた。そこだけじゃない、世界はもっと広いというメッセージを受け取って、そうか、やってみようと思って進んできた。これからもそうすると思うけど、これからは1人で思ってきたことを少しずつ共有していきたい。書くことはそのための手段だ。進む道は分からないけど、世界はいつもそこだけじゃない。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?