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ひがしのよぞらを。

少しくすんだ。

少しくすんだピンク色の、できたら大きめなマグカップが欲しいと思っていて。バッタリ運命的に出会いたいから、ネットで探すのは禁じている。

かなり具体的にイメージできているだけに、本気で出会えると思っている。
気配めいたものすら感じているから、もうすぐだと思うのだけれど、本格的に寒くなるより前に、手に入れることができたらいいな。

そうしたら、紅茶を飲もう、ココアを飲もう、スープを飲もう、と。
こころを弾ませることができる。

赤めな月が、じわり、とされていた。

「わぁ!ほんとだー!!」と男の子の声がしたので。
私も東の夜空の月を見上げる。

影が差しかかって、綺麗で妖しい不思議な月がじっと浮かんでいる。

気がつくと、萌え袖をしながら寄り添ってるご夫婦や、飲み屋から出てきたおじさんたち、Uberのお兄さん、薄手のコートをきた女学生さん…道の先々に、ぽつぽつ、ぽつぽつと足を止めて、みんなが東の夜空を見上げている。

月って。
届きそうで届かなくて、誰のものでもないから、うつくしい。
けれどもとても近くに感じられるところが不思議で、なんともやさしい。

みんな同じものを見てる。
月もきれいだけれど、商店街を抜けた先の、この光景もうつくしい。

素直を共有できる人がいるということ。
とってもあたたかくて、良い。
この後、月の話をして、ご飯を食べて、お風呂に入って、眠るんだろうな。
良いな、そういうの。

くまのこ見ていたかくれんぼ〜♪と鼻歌がかかってしまう。





元天文学部の父が、一生懸命に月の写真を撮っています。と母からLINEが入っていた。ふふふ。実家の庭に並んで出ている二人の姿が目に浮かぶ。


私は東の月が最大蝕になったのを確認して、家へ戻った。
すっかり月見うどんが食べたくなってしまった。


冷凍うどんを茹でながら、私はちょっぴりしんみり。
なんていうか。
私も誰かと並んで、月を見上げたかったんだ。と気づく。
「なんかごめんね…」と自分に謝ってみたが、白ける。しょうがない。


とはいえ、こういうしんみりは、たまにあることだ。
あったかいうどんを食べれば、秒で霧散する程度だ。
もうすぐ茹で上がる。

とろり、と卵を割り入れる。
今夜はお腹いっぱいにして、眠ろう。


-20221108-




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