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私と11月。

いちねんでいちばんスキな月は11月。
理由をつけずに「スキ」と感じてしまうことが、本当の「スキ」なんだろうなぁ。と思っていますので、11月は私にとても、心地よい時期。

だんだんと、時にはグッ!と寒くなって、着るものや、食べるものに工夫をしだすのが好きなのです。小さな工夫をしていると「あ、私、暮らしている」とちょっとしんみり、健気な気持ちに。小さな子どもをふわりと撫でるような、愛おしい気持ちが湧いてくるのです。

とはいえ、日が沈んで暗くなる時間が早まっていることに気づくと、なんとも心許なく。「早く家に帰らないと」と、思うのです。
ちいさな頃のあの気持ちが蘇ります。
夕方5時の、ウーっと鳴るサイレンが聞こえたら帰ってきなさい。という母との約束を守らないと。

今はもう、門限も何も、ないのだけれども、おかしいなぁ。
「帰らなきゃ」の思いが胸をチリチリと焼くようになるのは、決まって11月なのです。



今住んでいる部屋は、ちょっと事情があって、夏と冬で部屋の模様替えをします。
冬仕様にするのが、11月。

ずっしりし過ぎの本棚を動かすため、本を棚から下ろすのですが、もう既に溢れかえった本たちを眺め「さすがに…」と観念し、文字通り本の棚卸しを。

こういう言い方はちょっと嫌だけれど、処分する本を選定していきます。

本棚の本を全部出すと、もう部屋中が本で本で本で。
我ながら呆れ果て、そして感動を覚えました。


まずは、ようもこれだけ読んだなぁ、と。
次に、この本たちは全部自分が働いたお金で贖ったものなんだ、と。
いや本当に、真面目によく働たんだねぇ。と感慨深くなりました。

難航するかと思っていましたが、割とアッサリ、サッパリ、テキパキ、と選定が終わり、美しく本棚が整ってしまいました。

やればできました。


思い出なんかも多少滲んだ本たちを、アッサリ、サッパリと区分できたあたりに、自分が歳を重ねてきたことを実感します。

嬉しい副産物は「初見」で読める程に、ストーリーがウロ…ウロウロ覚えの本をいくつか発掘したことです。2,3ヶ月分の書籍代が浮きそうです。

素敵な読書の11月の始まりですね。


整った本棚、手放す本たち、再読する本たち…ともあれ、いずれも自分に手にのせ、自分の目で読み、何かを感じ、こころを動かしてきた訳で。

覚えてないものもあるけれど、書かれた、読んだ、文字のひとつひとつが秒針のようにコチコチと鳴っているようで、私の中に溶け込んでいるんだなぁ、と気付きます。たくさんの時間を本を読むことに使ってきたのです。

これからも間違いなく、使っていくのでしょう。
目を大切にしなければ。なんて思い、目を閉じて目蓋を手のひらで覆いました。


じんわりと温かい自分の手のひらにさえ、
ああ11月だなぁ。なんて思ったのでした。



-20221102-






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