６１歳母、留学２０日目。～魔法の掃除術～

ホームステイ先ではキウイ事件、締め出し事件などなど、数々のドラマがあった３週間。
一時はホームステイ先を変えてもらう！と言い出したこともあったが何とか乗り越え、３週間の語学学校とホームステイをやりきった母。
語学学校も無事に卒業し、ホームステイの滞在も最終日となった。
 
前の記事でも書いてきたのだが、母は自他共に認める綺麗好きな性格。
いつも自分の家では思うように掃除できるのだが、他人の家ではそうはいかないだろう。。
そんな母が他人の家で生活できるんだろうか・・・？

と、渡航前に思っていたところ、母がホームステイ先に到着してまず出てきた感想はやはり「部屋を掃除したーい！」だった。笑
ホームステイ先のマザーはどうやら掃除が苦手なようで、着た洋服をあっちにポイ、こっちにポイ、モノは出したらそのまま放ったらかし、というような性格らしい。
家にあった掃除機も１年以上は使ってないんじゃないかと思われるくらいホコリをかぶっており、フィルターは目詰まりしている始末。

そこでまず母が打って出たのが、自分の生活するエリアだけは綺麗にする作戦。
大きな家のゲストルームとバスルームを間借りさせてもらっているのだが
「自分の生活範囲は掃除させてもらった・・・！！」とのことだった。
するとホストマザー、この３週間で母の行動を何となく察したようだった。
「ジェシカ（私の母）がいるところだけ、綺麗になっている・・・！」

そして迎えたホームステイ最終日。
午前中、荷物のパッキングを終え、いつでも出発する用意ができた母にホストマザーから声がかかった。

「ちょっとジェシカ、いいかしら？ 料理の下準備をするんだけど手伝ってもらえる？」

「もちろん！」

ということで、ハーブを束ねたり、生姜を切ったり、ホストマザーの料理をお手伝いすることに。
すると、冷蔵庫を開けたあたりから、、、何となく掃除が始まった。

「ジェシカ、冷蔵庫の中身を整理してもらってもいい・・・？」

「冷蔵庫のポケットを取り出して洗ってもらえるかしら・・・？」

「これって冷蔵庫の大掃除じゃん・・・？！」と感じ始めた母。
しかし綺麗好きな母、ここで完全に掃除のやる気スイッチが入ってしまったらしい。

冷蔵庫の中身を拭いて、中のものを整理整頓。
ついでに目に見えるシンクの水回りの掃除まで。
みるみるうちに綺麗になるキッチンにホストマザーもこれはいい機会！と思ったのか、

「ジェシカ～・・・、ついでに２階のゲストルームの掃除も手伝ってくれない・・・？！
今日はシドニーのホテルまで車で送ってあげるから！」

と、送迎を交換条件に掃除の手伝いのお願いが。
特にこの日は予定のなかった母、ホームステイの恩返しを込めて掃除をしよう！と決めたらしい。

「この際だからOK！綺麗に掃除しよう！」
 
そこから１日かけて大掃除が始まった。

リビングから洗面所、バズルームに３つのベッドルーム、
真夏のオーストラリアで汗だくになりつつも、全て掃除機をかけ、拭き掃除をし、ありとあらゆる場所を綺麗に。

これまで拙い英語で何とかコミュニケーションを取っていたが、どこか仲が深まっていなかった二人。
しかし今日で一変したのだ。

掃除をしながらホストマザーに掃除術をレクチャーする母。

「これは使う？使わない？使わないなら、捨てましょう！」
「種類が同じものは一つにまとめましょう！」
「着たものは散らかさずに畳む！」

猛烈な勢いで綺麗になっていく家を見て、ホームステイ先のマザー、大感激。

「ワンダフル！！ジャパニーズスタイル！！」

すると、ホストマザーも勢いに乗って散かったものを次々と整理し始めた。

「よし、これも捨てる！あれも捨てる！」

その姿に母も感動し、「ナイス！！グッド！！！」と褒めて伸ばす。
 
そして掃除をしながら今まであまり話せてなかったお互いの苦労話もした。
ホストマザーも母と同じく、早くに旦那を亡くして以来、女一つで子供を育てている。
同じような境遇に何か通じ合うものがあったらしい。

そして、一通り掃除を終えての記念撮影。気持ちの良い笑顔で並んだ２人の姿があった。

「ジェシカ、手伝ってくれて本当にありがとう！」

母の掃除好きが意外なところで功を奏し、最終日に仲が深まった二人。
「まさかこんな形で仲良くなれるなんて・・・！」
思ってもいなかった展開に驚きの母。
掃除を通じて心が通い合ったことで、これまでの３週間の思いが報われたような気持ちになったようだった。
 
大掃除をしていたらすっかり夜になってしまったので、ホストマザーは母にいつものビーガンの手料理をふるまってくれ、次の日の朝ごはんまで手渡してくれた。

「ところでジェシカ、今日でこの家は最後だけど、明日からはどういう予定なの？」

「一応これから４日間はシドニー市内のホテルに滞在して、それからはケアンズとメルボルンに行く予定！」

「ちょっとジェシカ、それならまた明後日も来てくれない・・・？！」
 
ということで、数日後にもまたホームステイ先に呼ばれ、掃除を手伝いに行った母であった。笑

最終日に思いもよらない形で仲が深まった二人。よかったよかった^ ^