マガジンのカバー画像

1

4
運営しているクリエイター

記事一覧

心

無邪気に固い言葉だけを並べて、自分の感性の鋭敏さを誇っていたのは昔のことですが、今でも時折り、けばけばしく修飾語を重ねた言葉であなたを表現したくなる時があります。ねえ、あなたって酷く臆病でだらしのない人間だよね。いつも本質的には自分のことしか考えてなくて、私が「助けて」とSOSを出しても、その裏に隠れた意図を全部読みとりながら突き放したことを言うあなたの、その無責任さが大好きでした。あなたがふとし

もっとみる
夜

まあ例のごとくテン年代後半の思春期男子にありがちなことだが俺は米津玄師が好きで、彼がlineブログとか他の媒体で投稿していたブログも(webアーカイブを使って)よく見ていた。その中に確か、夜という時間帯が俺らに与えてくれる許しというか、視線から自由になるのが好きだ、みたいな内容のやつがあった覚えがある。「世界が動き出す前の、歯車が回転速度を極限まで落とした時間帯に隠れて缶ビールを買いに行く」とかそ

もっとみる
手紙(中途で放棄したメモ)

手紙(中途で放棄したメモ)

一切は過ぎ去っていくという言葉はどうも日本人の精神性に深く刻み込まれた言葉みたいだ。俺も多分に例外ではなく、何かにつけてただ一切は過ぎ去っていく諦念を詩に落とし込もうとしているんだけど、やはり詩を書くのはあの日以来難しいようで、自分の詩的実存が生のまま反映された醜悪なキメラしか生まれない。またこうも言える。俺たちは、ある面——それは世界の一面としてのある面だ、あるいはそれも一体化した弊害による自我

もっとみる
ドライフラワー・呪詛【短編】

ドライフラワー・呪詛【短編】

女との関係が終わったから優里を聴いている。なるほどいい曲だ。この曲を作った人は本当の意味で絶望したことはないだろうし、断絶とか、誠実さとかについて深く考えたこともないのだろう。本当に何もかもが薄っぺらくて良い。拗らせたマゾヒストの俺らはいつも自分を痛めつけるような曲ばかり聴いてオナニーをしているけど、音楽とは本来そういうもののためにあるのだろう。音楽とは、絶望とか痛みとかから逃れ逃れ踊りあったりカ

もっとみる