おもち

小説を投稿するためにアカウント作りました。 実体験をもとにした恋愛小説と、ちょっと不思…

おもち

小説を投稿するためにアカウント作りました。 実体験をもとにした恋愛小説と、ちょっと不思議な掌編小説をのんびりと書いていきます(*ˊᗜˋ*)

マガジン

  • 【掌編小説】

    数分で読める掌編小説をまとめます。 ちょっと不思議な物語が多いです。

  • 【短編小説】バベルの糸

    紡がれていく世界の、その先へ。 全22話、約20,000字の短編小説です。 ◆あらすじ◆ この世界は、糸で創れる。現実世界を忘れるほどの、美しい世界。 糸の世界に生きる少年タクトは、世界を創る“編み人”として、出会いや別れ、恋を経て人の心の在り処を求めて歩いていく。

  • 【連載小説】神様に何を誓ったか?

    彰は、一型糖尿病を患う紗椰にプロポーズした。家族になった紗椰を必ず守ると決心した彰だったが、結婚生活の中で不治の病を抱える紗椰と生きていくという意味を徐々に知り⋯⋯。 先の見えない人生を歩む、二人の物語。

最近の記事

【掌編小説】罪な男

「いいか、ここからが肝心だ」  聞き飽きた言葉だった。彼の口癖。「ここからが肝心だ」と言われて、その先の展開を聞いてみて感心した試しがない。 「俺が作ったこの精巧な偽札を、大量に刷る。そしてそいつをそのまま悪用するのかと君は思うのだろうが⋯⋯」 思わないよ、お馬鹿さん。 「なんとこの俺は、そいつをさらに刷り続ける。国内に流通する本物の紙幣と同じくらいの量にまでな」 「そんなに印刷してどうするの?」 「すり替えるんだよ。本物の紙幣とオレの偽札を。この偽札は完成度が高

    • 創作大賞2024 ファンタジー小説部門に応募しました!( ー̀ - ー́ )キリッ https://note.com/omochix7/n/n1c7090a52815

      • 短編小説『バベルの糸』 エピローグ

         店を開けてすぐに、その少女はやって来た。店内をうろうろと歩き、やがて一輪の花の前に座り込んだ。私は声をかけてみた。 「白い花が好きなの?」 「はい。私の部屋を飾るのなら、白が良いです」  黒く長い艷やかな髪に、白のセーターと黒いロングスカート。そして、藍色の瞳。とても可愛らしい女の子だった。少女は目の前の花をずっと見つめていた。 「それは、スズランだね」  もしも、目に映る全てが美しい世界なんてものがあったなら。その世界で花という存在は、人の心に残らなかったのかも

        • 短編小説『バベルの糸』 第20話

           ヨミが語ったのは、旧約聖書の創世記に記される神話だった。  大昔、世界の人々は同じ言語を話す民族だった。人々はその団結力で以て天に届く塔を建てようとしたけれど、それによって神様の怒りを買い、神様は一つだった言語をバラバラにしてしまった。言葉が通じなくなって混乱した人々は、塔の建築を放棄する。そして世界に複数の言語が存在するようになった。  それが、「バベルの塔」の概要だという。 「私達は何世紀も憎しみ合い、殺し合った。数え切れない人達が、苦しみ悲しみ、死んでいった。私達が

        【掌編小説】罪な男

        • 創作大賞2024 ファンタジー小説部門に応募しました!( ー̀ - ー́ )キリッ https://note.com/omochix7/n/n1c7090a52815

        • 短編小説『バベルの糸』 エピローグ

        • 短編小説『バベルの糸』 第20話

        マガジン

        • 【掌編小説】
          6本
        • 【短編小説】バベルの糸
          22本
        • 【連載小説】神様に何を誓ったか?
          15本

        記事

          短編小説『バベルの糸』 第19話

           ヨミは手元のマフラーを膝に置いて、少し首を傾げた。 「どうだろう。今この状況が、世界の人々にとって望まないものならば、呪いだったのかもしれないね。でもね、正直なところ、私にも分からないの。あれを編んだ時、私はただ目に映る世界の全てに絶望して、私の代わりにこの世を舞台に踊ってくれる分身を創りたかっただけなんだ。それがこんな形で、人の心を結びつけるとは思わなかった」  ヨミが編んでいるマフラーには、様々な糸が絡み合っていた。色の違いと、糸の太さも違った。タクトの感が正しけれ

          短編小説『バベルの糸』 第19話

          短編小説『バベルの糸』 第18話

           雪の中、西の町から更に森の奥へと歩いて行くと、懐かしい家が見えてきた。幼い頃のタクトは、手を繋がれてこの家を訪れた事がある。温かい心と、温かい手と、温かい飲み物を同時に知った日だった。あの日と変わらない景色が、そこにはあった。    扉を叩くと、少しの間のあと、声がした。 「タクト君だね。どうぞ」  扉を開けると、暖炉の火とランプの灯りが部屋をふんわりと包んでいた。部屋の中央には小さなテーブルと、椅子が二つ。その内の一つに、ヨミが腰掛けていた。手元には、編みかけのマフラ

          短編小説『バベルの糸』 第18話

          短編小説『バベルの糸』 第17話

           出発は急ぐ必要があった。今こうしている間にも、誰かと誰かの心が共鳴し、世界に編み込まれていく。今のところ、それを止める術を誰も持ち合わせていない。  ヨミの家へ行くには、汽車に乗る必要がある。汽車を動かす人間が消えてしまえば、数日かけて歩く羽目になる。だからレンには早く身支度を整えてほしいのだった。  浴室からは、シャワーの音がする。どれくらい待ったのかは分からない。焦っているからか、数分の時間が何時間も経っているように感じる。  否、実際、かなりの時間が経過している。レ

          短編小説『バベルの糸』 第17話

          短編小説『バベルの糸』 第16話

           レンがタクトの兄ならば、ヨミは年の離れた姉か母といったところだった。ヨミの温かく優しい手を握ったあの日から、タクトの目に映る世界には色がついた。それは、糸の世界が美しいという意味ではなかった。 「ヨミさんは、僕があやとりで遊んでいるところにやってきたんだ。一緒に世界を創ろうって言ってくれた。でも他の人は違う。何かを編んでいるところを、ヨミさんに認められて編み人になってる」  例えばカシワの場合、片腕だけで多様なものを編めた。それも一つの強みだったが、カシワがヨミに見せた

          短編小説『バベルの糸』 第16話

          短編小説『バベルの糸』 第15話

           レンに保護されてからタクトが初めて話したのは、雪の事だった。 「僕、あれからずっと考えていたんです。いつから雪を好きになったんだろうって。でも分からなかった。レンさんの言う通り、雪が好きだと誰かに言わされてる気がして⋯⋯」  レンがあの丘の上でタクトを見つけた時、タクトはひたすら雪を編み続けていた。雪を編む事において、もしかするとタクトは秀でた才能があったのかもしれない。丘に咲いた花を無かった事にしたくてそうしたような、酷く暴力的な白さだった。殴り書きのような表現力で以

          短編小説『バベルの糸』 第15話

          【短編小説】バベルの糸 第14話

           昼間に星は輝かないし、流れる事もない。それは糸の世界でも現実世界でも変わらない自然の法則だった。  今日は雪も降っていない。そこに在るのは、丘の大地を彩る花だけだった。  ショートヘアが風に靡く。色鮮やかな花びらが舞う。この世の全ての花は、きっとこの可憐な少女を飾るためだけに存在している。恋は盲目とはよく言ったものだ。こんな時ですら、人は人に見惚れるのだから。 「ワラビ⋯⋯」  ワラビは、タクトを見た。目の前に居るのに、ワラビの目はまるで遠くを見つめているようだった。

          【短編小説】バベルの糸 第14話

          【短編小説】バベルの糸 第13話

          「あー、疲れた。お前、重くなったな。チビだった癖に。今もそこそこチビだけどな」  北の塔の大広場にある長椅子に座り込んだレンは、息を切らしながら階段沿いの部屋達を見上げた。 「⋯⋯本当に静かだな。人の気配が殆どしねぇ。どうなってんだ」 「レンさん、疲れてるところ悪いけど、すぐに僕の部屋まで来てください。ワラビが待ってる」  レンの背中で少しだけ体力を回復させていたタクトは、駆け足で階段を登った。レンも後に続く。 「ワラビ、入るよ」  ドアを開けた。  床には、いく

          【短編小説】バベルの糸 第13話

          【短編小説】バベルの糸 第12話

           ワラビを連れて北の塔に帰ってきたタクトは、極度の恐怖と病気による疲労で呼吸を荒くしたワラビを自室に入れた。  此処を出る前と戻ってきた今では、編み人の数が明らかに減っていた。部屋に閉じこもっているのではない。人の気配が、確かに消えつつあった。 「ワラビ、此処を離れないで。助けを呼んでくるから、必ず此処に居るんだよ」 「⋯⋯何処へ行くの?」  ワラビはずっと泣いていて、声が枯れていた。タクトはベッドに座るワラビの頭を優しく撫でて、手を握った。 「レンさんの所。知ってる

          【短編小説】バベルの糸 第12話

          【短編小説】バベルの糸 第11話

           カシワが失踪してから数週間が経っても、音沙汰は無かった。北の塔では相変わらず編み人達が黙々と作業をしている。  この町の雪は、最近ではタクトが一人で編むようになった。タクトはこの町の冬を彩る、立派な編み人になりつつあった。  ワラビが目を覚ましたのは、カシワの失踪から二ヶ月ほど経った頃だった。 「タクト、カシワさんが行きそうな場所に心当たりはないの?」 「分からない。カシワさん、“踊る少女の影”の話はよくしてくれたのに、自分の話は何もしてくれないから」  周辺の探索は

          【短編小説】バベルの糸 第11話

          【短編小説】バベルの糸 第10話

          「物は言いようだな、リュウ。仮にそれが真実だとしても、お前は今のこの糸で紡がれた世界よりも、人を撃ち殺していた世界の方がよかったのかい」 「そうは言ってない。俺は人の尊厳が守れるのなら、どんな世界でもいいと思ってる。でもそれはあの時代でも、この世界でもない。何かに取り憑かれて何も考えられない世界では、人の尊厳は守れない」 「⋯⋯それで、ヨミ様に会ってどうする? あの丘の花を枯らせるつもりか」  リュウは北の塔の少し奥に見える丘を見た。同時に、風が吹いた。妙に心地がよかっ

          【短編小説】バベルの糸 第10話

          【短編小説】バベルの糸 第9話

           カシワとリュウは、鉄道等の製鉄部品を作る工場団地を歩いていた。内戦時、此処は武器を作るための工場として国が管理していた。今は、限られた機械しか動いていない。此処で製造していたものの大部分は、糸で創られるようになっていた。  カシワは無表情で工場の様子を眺めていた。編み人ではないリュウには、カシワの心境を推し量る事は出来なかった。 「あの日、お前もあの戦場に居たのなら、兵士達がどれだけの殺意を持って銃を構えていたか覚えているだろう。当時俺達は新米だったが、奴等を殺したい気持

          【短編小説】バベルの糸 第9話

          【短編小説】バベルの糸 第8話

          「ヨミは何処だ」  荒々しい声が聞こえた。タクトが部屋を出て大広場を見下ろすと、大柄な男が広場の中央に立っていた。 「ヨミ様は、此処にはいらっしゃいません。どうか、お静かに願います。どうか⋯⋯」  編み人の中でも年配の女性が必死に男を宥めていたが、男の怒りは収まりそうになかった。 「なら何処にいるんだ、教えろ。国賊の屍に花を添えるとはどういう了見だ」  タクトにはあの丘に咲かせた花の意味と意思が、あの男に伝わるとは思えなかった。だが、あの日以来また眠り続けているワラ

          【短編小説】バベルの糸 第8話