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【第七回】ちょっと小腹がすいたんで。

川口芝/手打ちそば 龍瓶

新そばの季節だ。
気の利いた蕎麦屋が近所にある。

そもそも新そばが何故うまいかっていうと、
秋蒔きのそばで9月から11月に採れたモノを年内に食べる秋新と呼ばれるそばのこと。
秋新に対して夏新もあり、これは6月中旬から8月中旬に収穫される。
夏新より秋新のほうが味と香りが断然良いんで、秋新だけが「新そば」という流れになっている。
んまあ江戸の頃からの習わしだからそれに従って楽しむってのも乙。

メニューもスタンダードから

ちょいと変わった所まで。

アテも良いので軽く飲んでからそばで〆るってのも粋がっていて良い。

ここの山かけが好きなんだよ。

芋は年度の強い大和芋。
青海苔も風味が高い。

そいつに田舎とせいろの二種をつけて食べる。
もうトロロには味がついてるのでズルズルとヌードル・ハラスメントしながら頂ける。

尚、我が日本国内にいる限りはヌードル・ハラスメントなんて言わせない。
音を立ててすすり上げることで空気が入りより風味が増すのは言うまでもなく。

しかし何故「せいろ」と「ざる」があるのか?
昔はそばを茹でずにせいろで蒸してたんだってさ。
この名残で今でもせいろにそばを盛って出す。
皿に盛ったのがざるだ。
今はどっちとも湯がいてから水で締めたモノを乗っける。
今となれば名残だけで容器の違いってわけだね。

むろん鴨つけも美味しいわけで。

この身厚い鴨肉。


鴨肉はさっとくぐらす程度が良い。
そうじゃないと身が固くなる。

そこにどっさりの長ネギだ。
このつけ汁が鴨の甘ーい脂をたっぷりと蓄えてそりゃあ美味いのだ。
こいつに新そばをつけて頂くともう言うことは無いよね。

新そばは岩塩だけで頂いてももちろん美味い。
そばの素直な味が楽しめるし塩だけで結構イケてしまう。

ここ、龍瓶のそば粉は幌加内そば粉というモノを使っている北海道そばなのだが香りが高く良い質のモノだ。
粉にはちょいと煩いが、そばまではまだまだ辿り着けない自分もいるけど。

そば屋で一杯引っ掛ける乙をど直球でヤる。
正に大人の飲み方。
ここは昼しかやってないから休みの日にちょっといい日本酒を打つっていうね。

酒を頼むとアテを出してくれる。
この三種だけでもイケてしまうが━━━━

ここは甘辛く炙った鴨焼きや、

大和芋の磯辺揚げで舌鼓を打ちつつニヤリとしながらこう言う。

「昼から飲むなんてバチアタリなことしてごめんなさい」、と。

そういう間にも酒はどんどんと進む。
こういう小生意気な飲み方を少しずつ覚えていくのが大人の嗜み。
ただ酔う為の酒と味わう為の嗜みの酒。
この違いがわかってくる頃には世の中に揉まれてだいぶ傷だらけな筈だ。
存分に自分を嗜み酒で労ってやりなさい。

そばがきなんて頼んで。

グリグリとしながらゆっくりとした時間を愉しむ。

思い出しただけでまた行きたくなる。

締めに山菜の天ぷらそばかなんかを頼んで。

ま、たまにはこういう贅沢に身を浸すのも良いよね。
日常生活に張りが出る。
江戸っ子よ、「新そば」なんていう美味い酒を呑む「口実」をしっかりと根付かせてくれてありがとう。

営業時間

11:30~14:30

日曜営業

定休日

火曜日・第1水曜日・第3水曜日

席数

16席

備考

開店と同時に席が埋まることが多々。
駐車スペースも三台分あるがすぐに埋まる。
予約をしてから行くことを薦める。