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【第二十一回】ちょっと小腹がすいたんで。

足立/田中商店

草木も眠る丑三つ時。
幽霊やあやかしが茶化しに来そうな時間に辰巳の方向へ進む。
この時間帯に蠢くのは嫌いではない。
街は文字通り一掃されたように人がおらず、車も疎らだ。
交通法規を守りつつゆっくりと車を走らせるには良い時間だ。
物思いに耽り自分の中へ入っていく。
こうやって自分の時間を取ることは非常に重要だ。
しかしながら考えながらいると腹が心地よくない。
人間息をしてりゃあ腹が減るってもんで。
そうすると意識せずに頭は今食える最大級のモノを探してるって算段だ。

午前三時。
普段ならば大挙の行列ができている。
行列は苦手ではないが好きな人間も稀だろう。
なるべくなら避けて通りたいところ。
この時間帯はさすがの田中商店も閑散としている。
それでもカウンターはほぼ満席だからどうなってんだと思う次第だが。
駐車場に車を停め、店内に顔を出すとすぐにカウンターへ通される。

この時間の特権。
ありがたいことに田中商店の豚骨が待たずに食える。
これだけで、もうこれだけで。
普段から回転がメチャクチャ早いから例え20人並んでいたとしてもそこまで待つといったことはない。

ねぎらーめん
¥850

だから待たない時間だとコレが来るのがメチャクチャ早いわけで。

深夜×豚骨ラーメン=ボーナスステージ

はい、ボーナスステージ入りましたー。
普通ならばカップ麺で我慢するところ。
おにぎりなんかもつけようね、なんてしおらしい事を言ってみるところ。
食べ終わってお茶を飲みながら「うん、意外と美味かったな……」なんてカップ麺の殻に向かって言ってみるところ。

本物がここにあります。
存分にどうぞ召し上がってください。

夜も明けそうな深夜に食う豚骨ラーメンってなんでこんなに美味いんだろうか。
そんな中18時〜4時まで無休で営業してるタナショーは分かってる、実に分かっている。

極細麺をズルズルと音を立てて頂く。

これぞ、これぞ。

この時間でもそれ相応のクオリティな店に行けばここまでの満足感は得られないのだがここは都内でも屈指の豚骨ラーメン屋田中商店。

豚骨出まくってる……

チャーシュー柔らかい……
青ネギ香ばしい……

美味いじゃn━━━━

危ない、人のセリフを大声で言うところだった。
兎に角、稀に見る出方をしている豚骨と本場トリオ製麺の細麺。
長浜じゃないっすか。

これを500円までで出せよと現地の人は言うかも知れない。思うかも知れない。

でもここは東京。
これで良いんです。

これが深夜の三時に食えることに意義がある。

辛子高菜とごまをカマして一気にすすり上げる。
この時間でも一応抵抗はして汁まで完飲はしないでおいた。

帰りの車、濃厚な豚骨で潤った喉を使ってメチャクチャ熱唱しまくった。

営業時間

18:00~翌4:00

定休

年中無休

座席

カウンター16席・テーブル席 4名掛け×2卓・6名掛け×2卓

行列

0時を過ぎるまでは10人待ちくらい当たり前。
深夜の2時を過ぎたあたりから並ばずに入れるのでオススメです。