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<連載>OMと旅する鉄道情景(第4回/牧野 和人)GROUP K.T.R

磐越西線で陽光と対峙する

 JR東日本 磐越西線では春から秋の間、土日祝日を中心にC57形蒸気機関車が専用の客車をけん引する「SLばんえつ物語」を新津~会津若松間で運行している。路線は阿賀野川の流れに育まれた豊かな自然が彩る西会津を通る。季節それぞれに沿線の魅力がある中で、日脚の短い秋には山間で光と影が交錯して印象的な眺めを紡ぎ出す。

OMD E-M1MarkⅢ / M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PRO

刻々と表情を変える橋梁界隈

 快晴で迎えた週末。午後の新潟行き「SLばんえつ物語」は、流れの上に架かる下部トラス橋梁が雄々しい一ノ戸川の畔で待ち受けることにした。会津若松行きの列車を撮り終えた後、上下の普通列車を峠で見送ってから橋の袂へ向かった。被写体である汽車が通過するまでにはまだ3時間ほどある。
 秋の日差しは低く、終日に渡って心地良い順光の景色で撮影者を魅了する。短い編成の気動車列車は、まるで空を渡るかのように広い谷間に架かる長大な橋を渡る。高い空に乾いたジョイント音が響いた。

OMD E-M1MarkⅢ / M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO

きらめく瞬間に魅せられて

 端山の向こうに赤みを帯びた空が広がっていく眺めは、それまでののどかさとは対照的な妖艶さを漂わせ始めた。手招きする光に魅入られて西方へレンズを向ける。構図は列車が橋上で輝く辺りに狙いをつけて決めた。空を大きく入れつつ、列車の存在も強調すべく、12~100mmF4レンズで焦点距離25mmを選択。遠く視界の左端に揺らめく太陽は、勇気をもって画面から省いた。

OMD E-M1MarkⅢ / M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO

 迫りくる夕闇が不安を募らせる。汽車はそろそろ隣駅の喜多方を発車した頃だろうか。それでもファインダー内を凝視していると、背後から何の前触れもなくジョイント音が響いた。列車が橋梁に差し掛かったのだ。機関車の煙突から吐き出される煙が、まっすぐに後方へ流れて好条件が揃った。トラス橋部分を渡りきった先で機関車が金色に染まり、続く客車の窓が一日の終わりを告げるかのように眩い光を放った。シャッターを切り続けながら、客車のテールランプが見えなくなるまで列車を見送った。

OMD E-M1MarkⅢ / M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO

感動をOM Workspaceで再現

 撮影成果の仕上げは現像処理に委ねられた。本来、光の当たっている部分が暗く落ち込んでいる撮影時の画像を明暗、階調の塩梅が整った雰囲気ある絵に炙り出す。OM Workspaceでコントラストとハイライト&シャドウのスライダーを操作し、暗部の様子が表現されつつも黒が締った迫力を感じる画像に補正する。夕景らしく、画像全体の明るさは若干アンダー気味にした。また列車が強く輝いている部分の表現は、車両の輪郭が分かるくらいまでの明るさに抑える。少々白トビ加減の部分を残しておくと、陽光が車体上で力強く反射している様子を再現しやすい。そして色調整の彩度欄でマゼンタ、パープルを表す3、4を若干プラス側にして、暮れなずむ空の彩を華やかにした。
 半逆光下等で明暗差が大きい条件での撮影時、露出は現像での補正を前提として切り詰めて設定するのが望ましい。二段ほどアンダー気味の画像であればOM Workspaceで現像時に見たままの明るさに補正できる場合が多い。

OMD E-M1MarkⅢ / M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO

筆者紹介

牧野和人(マキノ カズト / Kazuto Makino )

写真家。
幼少期より写真撮影に親しむ。2001(平成13)年より写真業、執筆業を生業とする。
臨場感に富んだ画像を撮影すべく、全国各地を訪れている。撮影成果は一般誌、児童書、旅行誌、鉄道趣味誌等に掲載。企業ポスター、カレンダー、時刻表の表紙等の大型図版も手掛ける。

※GROUP K.T.Rとは、このnoteを担当する「鉄道を愛し、OMを愛する」3人のフォトグラファー牧野和人、神谷武志、高屋力の名前のイニシャルから取った頭文字です。
グループの首謀者神谷の準地元であり、OM SYSTEMの地元でもある「京王線」の旧社名をリスペクトした名称でもあります。今後もさまざまな鉄道ネタをご紹介していきます。どうぞお付き合いの程、よろしくお願いいたします。


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