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ちょっとオカシイかも【短編小説】

違和感。
この人、ちょっとオカシイかも。
と、思いつつ、仕事。
「……」

違和感。
例えば、いない人のことを心配しているようで
「こんなこと言ってたんですよね」と、暴露している。

「あの人、絶対変ですよね」と言いながら同調を求め誘導してくる。

「定時で帰れない」と、帰っていいのにずっと残っている。

「あの人のせいで」と言いながら、いない人のことをひたすらディスる。

ふむ。
一度、不憫に思い、話を聞くが、変な居心地の悪さが残る。
ので、意識して距離をとる。

なぜ?
という疑問ばかり残る。
なぜとは?
つまり、「なんで自ら株が下がるような発言をするのか?」
ということなのだけれど、たぶん、株を下げているとは思っていないということなのだろうなという感じ。
むしろ、優位性を示しているぐらいにすら思える。
まあ、その人は「そういう風に捉えられることが出来る」ということなのだろう。
僕とは違うというだけで。
だから、距離が出来るのはしょうがないのである。

気を許して弱音でも吐けば、どこかで暴露される危険が伴うし、同調すれば、「そう言ってたんですけど」と、僕の発言と歪曲されそうだし、なんだかんだと、面倒に思えるのだ。

何かしら恨みがあるのか? 
劣等意識でもあるのか?
なぜ? そんなことを。
と、なぜ? と、またなるのだけれど、
まあ、ほっといてあげるのが一番いい気もする。
気にしてない。
気にも留めない。
聴こえてもいない。
挨拶をするだけ。

と、気がつけば、いない人は「来られなく」なっていて、
その、いない人のことは「悪くいっていい空気」が流れ、
違和感は、日常に包まれ、株が下がるどころか、
「大変ですね」
と、心配されるようになっていた。

「……」
なるほど。
効果が出ている。
と、僕は思う。

そして、いない人の仕事を、その人は本当に抱えなくてはならなくなり、いない人のせいにもできなくなっていき、ただただ、自らの首を絞めていく。
ように見える。

そして、「空気」は、それほど、その人に同調していたわけではなく、「適当に合わせて」その場を均していただけに過ぎなかったことが分かる。
みんな、そんな暇ではないのだ。
職場以外にも、日常があって、生活があって、自分の悩みも楽しみもあるのだ。
健全な無関心。正しい適当。

「……」
なるほど。
そうなるのか。
と、僕は思う。

と、なると「違和感」を発する人のアピールは、不憫に思えなくもない。
自分を傷つけた人への悪意も、優位性を示そうとしたアピールも、極端に言えば当人以外は特に興味もないのである。

「いい話が突然出てきまして……」
と忙しくなってきた矢先、違和感な人はとっとと辞めてしまった。

「……」
なるほど。
まあ、そうだよね。
と、僕は思う。

「……」

さて、なに食うかな。



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