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安息香とは ーお香の原料ー

お香の原料で使用される安息香(あんそくこう)についてです。

安息香とはエゴノキ科の樹脂で、木に傷をつけて分泌される樹液が固まったものを採取します。

英名はベンゾイン(英語:benzoin)と言い、シャムベンゾインとスマトラベンゾインの2種類があり、香りも異なります。

シャムベンゾイン(英名:Styrax tonkinensis)は、生産量が少なくスマトラベンゾインと比較するとバニリン(バニラの香りの主成分)の含有量が多く、香りとしても価値が高く、高値で取引されています。また、インドシナ半島が原産国でタイやラオス、マレーシア、カンボジアで主に作られています。最近ではインド産やインドネシア産のものまで販売されているのを見かけます。

スマトラベンゾイン(英名:Styrax benzoin)は、シャムベンゾインと比較するとケイ皮酸(シナモンの香りの成分の一つ)の含有量が多いです。プランテーションも多く、産出量が安定しており安価に取引されています。また、インドネシアが原産国で特にスマトラ島での生産が盛んです。各村々の農家が苗木から育て、若い木は樹脂の分泌がないため樹齢7~10年になってから収穫を始め、25年ほどで植え替えが行われるようです。

ベンゾインの収穫方法は、木の幹に傷を付け(タッピング)、傷口から流れ出る樹脂を容器で受け止めることで収穫します。タッピングするための道具やタッピングの形も様々です。

インドネシアでは、ベンゾインに安価なダマー樹脂を混ぜて、ブロック状のベンゾインの塊を作ることもあるようです。また、インドでは松脂を入れた物が出回ったり、インドネシアでもスマトラベンゾインにバニリンを混ぜてシャムベンゾインと偽装して販売されている物もあるので注意が必要です。

ベンゾインには業者が付けたグレードの名前が複数存在します。アローやバタフライ、タンクなど様々で統一性はありません。
ただ、最上位のグレードものだけは、統一してアーモンドと呼ばれることが多く上質なものは乳白色~黄白色で 、バニラのような甘味のある香りが強くでるのが特徴です。

スマトラベンゾイン
[グレード:アーモンド]

ベンゾインは、漢方薬としてだけでなく様々な薬としても使用されています。
また、お香だけでなく香水や食品のフレーバーとしても使用されており、用途が広い原料です。
インドネシアではタバコのフレーバーとしても使用されています。

また、お香の原料の中で安息香は五大香と言われる5種類の重要な香原料の一つとされています。
お香での使用量はそれほど多くなく、少量使用することで香りを安定させたり、長持ちさせたりと、補香剤的な用途で使われます。また、どういった香りを作るかによってグレードの違う安息香を使い分けています。

安息香はお香以外でも様々な用途で使用される原料です。
実際の香りを聞いてみたい方は、刻みや精油を手に入れて聞いてみてはいかがでしょうか。

※安息香の刻みはネットショップにて購入が可能です。


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