心は、あの頃のままなのに(小説『天国へ届け、この歌を』より)
香田美月が、このマンションに来たという痕跡を全て消し去った。
土曜日に、単身赴任をしている私のところに妻の美由紀が来ることになっているからだ。
まさか、自分の娘ほど年の離れた女と浮気をしているとは、思いもつかないだろう。
しかし、感の鋭い美由紀のことだ。念に入りに証拠を消し去った。
その時、あることに気付いた。
私の中で、若い香田美月の存在が大きくなるにつれて、妻の美由紀の存在も大きくなり始めてきていることだ。
反比例するはずの関係が、明らかに正比例している。
若い頃、まだ結