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白木の棺

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知恩院の七不思議のひとつである「白木の棺」にまつわる物語です。
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記事一覧

短編小説「伝えておきたかった知恩院三門の秘密」

年のせいでしょうか、とりとめもなしに色々なことが思い出されます。 宮大工の娘に生まれたも…

大河内健志
2週間前
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短編小説「命をかけて守りぬくもの 」

話は前後してしまいましたが、そもそも五味様が、何故お亡くなりになられたのかをお話しなけれ…

大河内健志
3週間前
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短編小説「雪が降ると思い出す 悲しくて美しい光景」

前にもお話しましたように、知恩院三門の工期は二年とあらかじめ決められています。 奈良でし…

大河内健志
4週間前
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短編小説『天才彫り物師が残した知恩院 三門の秘密』

暫く手元に置いていた一枚の絵があります。甚五郎が描いた絵です。 知恩院の三門を書いた絵で…

大河内健志
1か月前
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連作短編小説「伝えることが難しくなった千年後の理想と現実」『白木の棺』

この世界は、妥協の許さない厳しい世界です。 到達点と言うものはありません。 常に、理想を…

大河内健志
1か月前
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連作短編小説「物価の高騰による悲劇の予感」『白木の棺』

直ぐに若い大工が、模型が出来上がったので、見に来てくださいと呼びに来ました。 今までの見…

大河内健志
1か月前
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連作短編小説「天才左甚五郎の片りん」『白木の棺』

「どんなに緻密な計算をしていても、誤差が出てくるものだ。五十分の一の模型でさえ、これだけの誤差が出るのだ。実際の建物になるともっと誤差が出る。誤差は出るものなのだ。それを承知で、埋め合わせをして行くのが大工の仕事だ。心して掛かってくれ」 主人は、棟梁をはじめ皆の大工がいる前で、話しました。 私が言うのもおかしいですが、主人も立派になったと思います。 私の父の組に入って来た頃は、おとなしくて無口な子供やったそうです。 しかし、父は早くから、この子は立派な大工になると、見

連作短編小説「計算し尽くせない人智を超えたもの」『白木の棺』

主人らは、早速設計図の作成にかかりました。私は、父から宮大工たるものは、頭の中にしかと図…

大河内健志
2か月前
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連作短編小説「小堀遠州様の教え」『白木の棺』

家康様の喪が開ける間なしに、造営奉行の五味金右衛門様に呼び立てられました。 何やら、中井…

大河内健志
2か月前
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連作短編小説「移りゆく時代の流れに忍びよる黒い影」『白木の棺』

次の日から、主人は中井殿のところへ、三日と開けずに行くようになりました。行くときは、朝の…

大河内健志
2か月前
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連作短編小説「時代の流れには逆らえぬ」『白木の棺』

お茶と茶菓子を持ちまして、奥の間に続く廊下を行きますと、大きな声が聞こえ来ます。主人の声…

大河内健志
2か月前
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連作短編小説「左甚五郎の若い頃」『白木の棺』

平素は温厚な与平次もさすがに、声を荒げまして「お上のお達しで、京に出てきたが、何かという…

大河内健志
3か月前
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連作短編小説「雪ふる京のうつろい」『白木の棺』

帰りが遅そうなるというてはりましたが、主人はまだ帰ってきはりません。 夕方から、雲行きが…

大河内健志
3か月前
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