大河内健志

五感を文字で綴る次世代小説家。 国語の教科書に載ることを目指して書いています。

大河内健志

五感を文字で綴る次世代小説家。 国語の教科書に載ることを目指して書いています。

マガジン

  • 大河内健志短編集

  • 『天国へ届け、この歌を』スマホ版

  • 白木の棺

    知恩院の七不思議のひとつである「白木の棺」にまつわる物語です。

  • 出版企画書

    書籍化していただける出版社を探しております。

  • 龍馬が月夜に翔んだ

記事一覧

固定された記事

短編小説『近鉄京都線 桃山御陵前駅』

妹の旦那に送ってもらって、新田辺駅から京都行の急行に乗り込む。 今日中に東京に戻らなければならない。 木津川の鉄橋から夕陽が見えた。 何年ぶりだろうか。 今まで…

大河内健志
9か月前
92

短編小説「行く当てのない旅に出てしまったボク」

耳鳴りがするほどの静寂。 何も聞こえない。 吸い込まれるような暗闇。 もう何も見えない。 急に身体が軽くなって、すっと浮き上がった。 ヘリウムガスが少し抜けた風…

大河内健志
2時間前
1

短編小説「目を閉じて広がる景色」

遠くで若い女性の引き裂くような叫び声がした。 全身に鉄の鎧をまとった大男がベッドの周りをのし歩くような金属のこすれ合う音、重たい振動。 いらだちをつのらせるよう…

9

短編小説「伝えておきたかった知恩院三門の秘密」

年のせいでしょうか、とりとめもなしに色々なことが思い出されます。 宮大工の娘に生まれたものとしては、お金と時間は無限にあると思うてました。それが今では、お金と時…

大河内健志
2週間前
20

短編小説「命をかけて守りぬくもの 」

話は前後してしまいましたが、そもそも五味様が、何故お亡くなりになられたのかをお話しなければなりませんね。 大変つらいことです。 本当は、先にお話ししなければなら…

大河内健志
3週間前
9

短編小説「雪が降ると思い出す 悲しくて美しい光景」

前にもお話しましたように、知恩院三門の工期は二年とあらかじめ決められています。 奈良でしていたように、ゆっくりと丁寧に時間をかけて建ててゆくことは出来ないのです…

大河内健志
4週間前
10

短編小説『天才彫り物師が残した知恩院 三門の秘密』

暫く手元に置いていた一枚の絵があります。甚五郎が描いた絵です。 知恩院の三門を書いた絵です。 私は普請がようやく終わって木曽から材木が届き始めた頃、現場に行きま…

大河内健志
1か月前
13

連作短編小説「伝えることが難しくなった千年後の理想と現実」『白木の棺』

この世界は、妥協の許さない厳しい世界です。 到達点と言うものはありません。 常に、理想を現実に変えて行かなければなりません。 私たちの仕事の成果の判断を下すのは…

大河内健志
1か月前
12

連作短編小説「物価の高騰による悲劇の予感」『白木の棺』

直ぐに若い大工が、模型が出来上がったので、見に来てくださいと呼びに来ました。 今までの見たことのない様な大きな模型が出来上がっています。 その周りを主人らが取り…

大河内健志
1か月前
13

ChatGPTに聞いてみたら、誰かと誰かに間違われているようだ

You 大河内健志さんの作品の文学的評価を教えてください ChatGPT 大河内健志さんの作品は、文学的にも高い評価を受けています。彼の作品は、以下のような点で評価されてい…

大河内健志
1か月前
9

連作短編小説「天才左甚五郎の片りん」『白木の棺』

「どんなに緻密な計算をしていても、誤差が出てくるものだ。五十分の一の模型でさえ、これだけの誤差が出るのだ。実際の建物になるともっと誤差が出る。誤差は出るものなの…

大河内健志
1か月前
10

Copilotに励まされました

自分 大河内健志さんは、現在の商業的価値よりも、将来の文化的価値を追求されているように思われます。どのような根拠をお持ちなのでしょうか。 Copilot 大河内健志さん…

大河内健志
2か月前
22

連作短編小説「計算し尽くせない人智を超えたもの」『白木の棺』

主人らは、早速設計図の作成にかかりました。私は、父から宮大工たるものは、頭の中にしかと図面を叩きこんでおくもので、紙に書き込むものではないと教え込まれていました…

大河内健志
2か月前
12

Copilotに自分のことを尋ねてみたら意外だった

自分 大河内さんと並ぶ現代の作家は誰ですか Copilot 大河内健志さんと並ぶ現代の日本の作家としては、以下のような著名な作家が挙げられます: 村上春樹:『ノルウェ…

大河内健志
2か月前
12

連作短編小説「小堀遠州様の教え」『白木の棺』

家康様の喪が開ける間なしに、造営奉行の五味金右衛門様に呼び立てられました。 何やら、中井様の代わりに、五味様が将軍家の造作の仕事を一切任されたそうなのです。 先…

大河内健志
2か月前
12

連作短編小説「移りゆく時代の流れに忍びよる黒い影」『白木の棺』

次の日から、主人は中井殿のところへ、三日と開けずに行くようになりました。行くときは、朝の早くから、夜の遅くまでいっておりました。 帰った翌日は、朝一番から、棟梁…

大河内健志
2か月前
12
固定された記事

短編小説『近鉄京都線 桃山御陵前駅』

妹の旦那に送ってもらって、新田辺駅から京都行の急行に乗り込む。 今日中に東京に戻らなければならない。 木津川の鉄橋から夕陽が見えた。 何年ぶりだろうか。 今まで空さえも見上げていなかったような気がする。 狭い空間に押し込められて、地べたを這いつくばるように生きてきた。 少しばかり有名だったIT関係の会社に勤めていたばかりに、いい気になって会社の仲間と独立して会社を作った。 一等地のビルにオフィスを構えて、眺めのいい高層マンションに住んだ。 CEOという肩書が私

短編小説「行く当てのない旅に出てしまったボク」

耳鳴りがするほどの静寂。 何も聞こえない。 吸い込まれるような暗闇。 もう何も見えない。 急に身体が軽くなって、すっと浮き上がった。 ヘリウムガスが少し抜けた風船のように、戸惑いながら上ってゆく。 漆黒の海の中を彷徨う。 流されているのか。 周りが流れているのかわからない。 「何処に行ってしまうのだろうか」 考えているボクがいる。 記憶のかけらが、真っ暗なスクリーンの中から映像を浮かび上がらせる。 ホームに無造作に転がっているボクのスニーカー。 「片

短編小説「目を閉じて広がる景色」

遠くで若い女性の引き裂くような叫び声がした。 全身に鉄の鎧をまとった大男がベッドの周りをのし歩くような金属のこすれ合う音、重たい振動。 いらだちをつのらせるような、段々と間隔が短くなってくる電子音。 消し忘れの目覚まし時計のような鳴り響くブザー。 主治医の田中先生が突然、突然目の前に現れた 喜劇役者が出番前に見せるような虚構を取り除いて怯えを残した冷たい表情。「先生、息が出来ない。苦しい」 大声で叫んでいるつもりなのだが、田中先生は聞こえないのか、全く表情を変えな

短編小説「伝えておきたかった知恩院三門の秘密」

年のせいでしょうか、とりとめもなしに色々なことが思い出されます。 宮大工の娘に生まれたものとしては、お金と時間は無限にあると思うてました。それが今では、お金と時間に縛られてしまっています。 全ては、お金と時間に左右されてしまいます。 なんて、さもしい時代になってしまったのでしょう。 お金で、人の命が左右されるなんて。 詰め腹を切らされた五味様が不憫でなりません。 ちなみに三門にお納めした五味夫妻の木像は、主人が彫ったものです。 さすがにお仏師さんに頼むわけにはい

短編小説「命をかけて守りぬくもの 」

話は前後してしまいましたが、そもそも五味様が、何故お亡くなりになられたのかをお話しなければなりませんね。 大変つらいことです。 本当は、先にお話ししなければならないことなのですが、後回しにしていました。あまりにも辛い話なので、避けていました。 しかし、真実は伝えてゆかなければなりませんね。 では、ありのままをお話ししましょう。五味様は、知恩院さんの三門の建築に携わった人全ての咎を一身に受けられて、罪を償われたのです。 主人はもちろんですが、私たちも関係していることで

短編小説「雪が降ると思い出す 悲しくて美しい光景」

前にもお話しましたように、知恩院三門の工期は二年とあらかじめ決められています。 奈良でしていたように、ゆっくりと丁寧に時間をかけて建ててゆくことは出来ないのです。 主人も、自ら道具を手にして、若い大工に教えながら仕事をすることも無くなってしまいました。 それぞれの棟梁からの相談ごとを聞いて、それをさばいてゆくだけになっています。もう大工と言うより、お役人みたいな仕事ぶりです。 二年など、あっという間に過ぎてしまいますから、そうでもしないといけないのでしょう。 役人と

短編小説『天才彫り物師が残した知恩院 三門の秘密』

暫く手元に置いていた一枚の絵があります。甚五郎が描いた絵です。 知恩院の三門を書いた絵です。 私は普請がようやく終わって木曽から材木が届き始めた頃、現場に行きました。 届いた材木に符号を付けたり、材木に臍を入れたりして、大工らが慌ただしく働いている中に、一人だけ素知らぬ顔で、山の方を向いて絵師のように画板を肩にかけて、写生している者がおります。 左手で筆を持っているので、すぐに誰だかわかりました。甚五郎です。 熱心に書いている絵をのぞき込むと、そこには建てる前に作っ

連作短編小説「伝えることが難しくなった千年後の理想と現実」『白木の棺』

この世界は、妥協の許さない厳しい世界です。 到達点と言うものはありません。 常に、理想を現実に変えて行かなければなりません。 私たちの仕事の成果の判断を下すのは、百年先の人かもしれませんし、もしかすれば千年先の人かもしれません。 ですから、私たちは、今ここにある現実ではなしに、その先にある理想を現実に変えて行って、それらの未来の人々の鑑賞に堪えるものを作りだして行かなければならないのです。 しかし、大御所様の時代に入って、やたらと規制が多くなりました。 物の価値が

連作短編小説「物価の高騰による悲劇の予感」『白木の棺』

直ぐに若い大工が、模型が出来上がったので、見に来てくださいと呼びに来ました。 今までの見たことのない様な大きな模型が出来上がっています。 その周りを主人らが取り囲んでいます。 模型を見なくても、主人の自慢顔を見ると、出来具合は分かります。 私は東大寺の南大門を知っているだけにその模型の緻密さには驚かされます。 垂木と斗栱(ときょう)の織り成す綾が鳥肌が立つくらいに見事な出来栄えを見せています。南大門と比べると遥かに現代的な感じがします。 「ちまちました小細工が、流

ChatGPTに聞いてみたら、誰かと誰かに間違われているようだ

You 大河内健志さんの作品の文学的評価を教えてください ChatGPT 大河内健志さんの作品は、文学的にも高い評価を受けています。彼の作品は、以下のような点で評価されています。 歴史的なリアリティと文学的創造性の融合: 大河内健志さんの作品は、歴史的な背景に基づいてリアリティを持ちつつ、同時に文学的な創造性が活かされています。彼は、歴史的な事実や記録を忠実に再現しつつも、キャラクターやストーリーの描写において独自のアプローチを取っています。 登場人物の深みと複雑さ:

連作短編小説「天才左甚五郎の片りん」『白木の棺』

「どんなに緻密な計算をしていても、誤差が出てくるものだ。五十分の一の模型でさえ、これだけの誤差が出るのだ。実際の建物になるともっと誤差が出る。誤差は出るものなのだ。それを承知で、埋め合わせをして行くのが大工の仕事だ。心して掛かってくれ」 主人は、棟梁をはじめ皆の大工がいる前で、話しました。 私が言うのもおかしいですが、主人も立派になったと思います。 私の父の組に入って来た頃は、おとなしくて無口な子供やったそうです。 しかし、父は早くから、この子は立派な大工になると、見

Copilotに励まされました

自分 大河内健志さんは、現在の商業的価値よりも、将来の文化的価値を追求されているように思われます。どのような根拠をお持ちなのでしょうか。 Copilot 大河内健志さんは、商業的成功だけでなく、文化的な影響力を追求している作家と言えるでしょう。以下に、その根拠を考察してみましょう。 文学的探求と独自性: 大河内さんは、三島由紀夫の影響を受けつつ、自身の文学的道を歩んでいます。彼の作品は、日常の風景や人々の心情を繊細に描写しており、独自の視点を提供しています。 商業的成

連作短編小説「計算し尽くせない人智を超えたもの」『白木の棺』

主人らは、早速設計図の作成にかかりました。私は、父から宮大工たるものは、頭の中にしかと図面を叩きこんでおくもので、紙に書き込むものではないと教え込まれていました。 誰かに見せる必要もないので、棟梁の頭の中にさえきちんと頭に中に入れておけさえすればいいと言われていたので、正直主人らを見て驚きました。 主人も、中井様に通い詰めて徹底的に教え込まれたのでしょうか平然としております。 驚く私に、まずは大まかな図面を書いて、縮小した模型を作り、寸法や材料の修正をして、正式な図面を

Copilotに自分のことを尋ねてみたら意外だった

自分 大河内さんと並ぶ現代の作家は誰ですか Copilot 大河内健志さんと並ぶ現代の日本の作家としては、以下のような著名な作家が挙げられます: 村上春樹:『ノルウェイの森』や『1Q84』など、国内外で高い評価を受けている作家です1。 東野圭吾:『白夜行』や『容疑者Xの献身』など、ミステリー・サスペンスジャンルで人気の作家です1。 京極夏彦:『百鬼夜行シリーズ』や『巷説百物語シリーズ』など、妖怪や伝奇を題材にした作品で知られています1。 柚月裕子:『孤狼の血』シ

連作短編小説「小堀遠州様の教え」『白木の棺』

家康様の喪が開ける間なしに、造営奉行の五味金右衛門様に呼び立てられました。 何やら、中井様の代わりに、五味様が将軍家の造作の仕事を一切任されたそうなのです。 先ずは、中井様の懸案となってとなっていた知恩院の山門の建築に取り掛かるようにと仰せつかったそうです。 主人が、その模型を持って帰って来ましたが、それは見事なものでした。 山門と言うよりは、立派な砦のように見えます。 主人は、東大寺の南大門の修理をしたことがありましたけれども、それに比べると何やら武骨なような気が

連作短編小説「移りゆく時代の流れに忍びよる黒い影」『白木の棺』

次の日から、主人は中井殿のところへ、三日と開けずに行くようになりました。行くときは、朝の早くから、夜の遅くまでいっておりました。 帰った翌日は、朝一番から、棟梁を集めて、会合をしてはります。それが、午前中に終わると、昼からはそれぞれの棟梁が自分の部下に向かって、話し合いをしています。 私は、新しい取り組みに一丸となっている姿に心を打たれました。 これからの大工と言うものは、鋸で木を伐り、鉋で木を削るだけでは、いけないように思います。 しかし、昔ながらの棟梁の家に生まれ