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OKOPEOPLE - お香とわたしの物語

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OKOCROSSING が運営する、香りにまつわる「わたしの物語」を編み集めるプロジェクトです。https://oko-crossing.net/okolife
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2020年1月の記事一覧

「無為」 ~ つらつら匂い考 ~

「無為」 ~ つらつら匂い考 ~

香りは苦手、匂いが好き。

香道のお稽古を十年以上続けておきながら、敢えてそう言ってしまう。

香りは表現、匂いはありよう。
匂いは内から、香りは外へ。
香りは手招きをし、匂いは後ろ髪を引く

「香り」が人や物の“佇まい”に重なったその時、私の中はでえも言われぬ「匂い」に昇華する。

そんな言葉遊びはさておき、隠しおおせぬ本質が滲み出るのは”におい”の領域ではないだろうか。
かぐわしい「匂い」はも

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白檀の香りと記憶の明滅

白檀の香りと記憶の明滅

それは、パソコンの前で自動書記のようにつづられた物語だった(注:オカルトな話は出てきません)。編集者さんとの打ち合わせではエッセイを書くはずだったのに、いざ画面の前に座ってみると短編小説が生まれていた。

「OKOPEOPLE」で公開された「ながれながれて」のことだ。香りがきっかけとなった面白い体験だったので、小説のあとがき的に書いておこうと思う。

香りにいざなわれて物語の世界へお香の定期便<O

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境をつくる香り

境をつくる香り

子供の頃から、一時期を除いて和室で寝ている。毎朝、布団の中でひとつの暗闇と化している私を、仏壇から漂う1本の線香の香りが包み込む。

その度に、当たり前の日常がスタートする事。今日も東の空から太陽が昇る事。目が覚めた事。生きている事を自覚する。清澄な朝の空気に馴染む白檀の香りは、私にとって朝と夜の境であり、また大袈裟に言えば生と死の境である。

最近になって、お供物としてだけではなく、読書をする時

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