岡本信広

経済学者。中国の人口,都市経済に興味あり。

岡本信広

経済学者。中国の人口,都市経済に興味あり。

最近の記事

人口ボーナス論(2)ー中国の経済成長の源泉

はじめに中国の労働力人口が減少しているにも関わらず,中国の経済成長は続いている。「中国に人口ボーナスはあったのか?」で述べたように,人口構造の変化が中国の経済成長を小さいながらも押し上げたことは確かである。しかし2010年代から第1の人口ボーナスはなくなっており,今後の高い経済成長は期待するのが難しい。 一方で,第2の人口ボーナスの存在がこれまでの研究で指摘されている。労働力人口が減少し,その後高齢者が増加することが見込まれると,人々は貯蓄を増やし,その貯蓄が投資を増加させ

    • 人口ボーナス論(1)ー中国に人口ボーナスはあったのか?

      はじめに人口ボーナスという議論がある。人口に占める生産年齢人口(労働者として働ける人口)の割合が上昇すれば,労働力増加によって生産が増加し,貯蓄や投資の増加をもたらして経済発展を促すという考え方である。 人口ボーナスが注目されたのはBloom and Williamson(1998)の研究で,彼らは「アジアの軌跡」と呼ばれるアジアの経済成長のうち,生産年齢人口増加による部分が1/3から半分になると試算した。 中国を対象にした中国の人口ボーナスの推計もあるわけだが,基本的に大き

      • どのような産業が地域・都市を発展させるのか?

        はじめに 地域や都市の発展には,産業が必要である。産業は所得と雇用を生み出す源泉であり,政府にとっては重要な納税者でもある。そのため各地域・都市は産業誘致に力を入れたり,起業支援を行ったりする。 そもそもどのような産業が地域・都市を発展させることができるのだろうか。 経済基盤モデル地域経済学の教科書でよく紹介されているのが,経済基盤モデル(Economic Base Model)だ。非常にシンプルであるため,その分実証分析では問題点が指摘されるが,考え方としては示唆に富む

        • 東アジア発展モデル(雁行形態論)は終わったのか?

          はじめにこれまで,開発経済学では,ぺティ=クラークの法則があり,経済は第一次産業から第二次産業へ,第二次産業から第三次産業へと変換していくとされた。実際に各国の産業構造はこのように変換してきた。 ここから導かれる含意は,経済発展初期にはまずは第2次産業,なかんずく製造業が必要ということだ。 筆者はアジア経済論も教えているが,通説では,アジアの経済発展を支えたのは製造業であり,先進国から労働集約型産業が途上国に移転し,その後資本集約型産業が途上国に移転し,途上国の製造業発展

        人口ボーナス論(2)ー中国の経済成長の源泉

          イギリス赴任

          2016年4月からのロンドン大学SOASに赴任するにあたり,どのような準備が必要だったか,ビザの取得、子供の学校選択を中心に記録を残しておきたいと思います。(2015年4月から2016年3月までの記録が中心。子供の学校では赴任後の2016年4月も含む) 目次 ■受け入れ機関の決定 ■VISAの申請 ■住まいの決定 ■受け入れ機関の決定 行き先を決めるにあたって考慮したのは、専門分野はもちろんのこと、家族の生活がしやすいところでした。 前職ですでに中国に滞在したこ

          イギリス赴任