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No.1213 H先生の言葉

「最近の若者は頭がいい」と言われます。その理由を説明しなさい。
そんな文章表現の課題がありました。
 
なかなかの難問です。「頭がいい」の意味は拡大解釈するしかありません。いや、課題の言葉のように「最近の若者は頭がいい」という評価も成り立つのでしょうか?アバウト至極な印象を持ちました。大風呂敷なだけに、さまざまな視点や論点も賑わいを増すのでしょう。
 
最近の若者の傾向としては、ものごとの好き嫌いをハッキリ言い、曖昧さを好みません。また、先を見通したり見極めたりする能力にたけているようで、「こりゃダメだ」と思ったら、さっさと諦めて方向転換したり止めたりする面があるそうです。
 
そういえば、全国模試の問題を見るなり戦意を喪失してしまい、難問に立ち向かおうとしない生徒も見てきました。場合にもよるでしょうが、妙に諦めが良い、諦めが早いという意識構造は、人生そのものにも反映されるようで気になってしまいます。一方で、諦めのススメ派もいるようですが。
 
「ダメかもしれないが、出来るところまではとことんやってみる」
ことも大事なのではないかと老婆心ながら思ってしまうのです。
 
もう20年も前のことですが、美術のH先生からこんな話を聞きました。
「ちょうど今、生徒たちと土をこねて、器やら茶碗を作っているんですが、生徒たちはすぐに『出来た!』と言って、作るのを終わらせてしまうんです。じっくり時間をかけて少しでもいい物を作ろう、納得するところまで頑張ろうとすればいいのに、その粘りがないんです。どうせ、いいもんは作れないと、自分に高をくくっているんでしょうか?」
 
頭のいい若者は、先が読める代わりに、自分の大事な物を育てそこなっているのではないかと思いました。頭のいい人、要領の良い人、可能性をさっさと見限る人をみると、いつもH先生の言葉を思い出すのです。


※画像は、クリエイター・和える(aeru)さんの、タイトル「aeruの素材集 | みんなのフォトギャラリー」の1葉をかたじけなくしました。土をこねながら、構想も練っているのでしょうか?無心な作業なのでしょうか?お礼申し上げます。