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No.1201 楳若仔一郎

舞台の舞い人たちに心躍らせた春の一日でした。

昨日は、日本舞踊・楳若流(東京都江戸川区)の舞台を観るために中津文化会館を訪れました。宗家・楳若勧二郎(傘寿記念)と妹・勧柳(喜寿記念)の故郷凱旋舞踊公演です。お二人の故郷は、中津に近い豊前市でした。

戦後の舞踊界の新流派だそうです。高校時代の教え子がその楳若流の門をたたき、立派に修行し、今や師範・楳若仔一郎としてその世界で活躍中です。その彼が、懇切丁寧な案内状を送ってくれました。

11時から始まった記念舞踊公演は、15時に幕を閉じましたが、なんと、4時間もの長丁場でした。師匠・師範のほか、大分県内で日本舞踊を牽引されている人々も師の傘寿・喜寿を寿いで、祝儀の舞いを披露してくれました。中津文化会館は、多くの観客で席が埋まり、絢爛豪華にして玲瓏壮麗なる世界に遊びました。

80歳の勧二郎、77歳の勧柳は、ご高齢を物ともされぬ身のこなしとフォルムの美しさです。その体幹のブレのなさに、稽古精進のほどが察せられました。厳しい舞踊の世界に身を置き、兄妹で切磋琢磨しながら多くの流派と伍してきたのでしょう。感動させる舞いでした。

仔一郎君は、女形に定評があり、「常磐津 牡丹がさね」での早着替えに肝を抜かれました。床の間に飾っておきたいような日本人形の清らかで美しい姿が目の前にありました。深遠な世界に身を置きながら、健やかに成長する彼の雄姿に、夫婦で目尻にしわを寄せながら見入りました。

第三部(フィナーレ)は圧巻でした。勧二郎・勧柳お二人の「兄弟船」の荒波を乗り越えるシーンは、舞踊の世界で身を賭してきた生きざまを見るようでした。踊る者と観る者の心が一つになり、会場から割れんばかりの大拍手が送られました。また、仔一郎君の「天城越え」の女の情念の舞いにシビれ、胸にグッと来る名場面も観させてもらい、心に焼き付けました。

帰りの車の中で、カミさんが、いつも以上に快活に話をしました。


※画像は、クリエイター・ぷろとんさんの「藤が描かれた扇」の1葉をかたじけなくしました。昨日の舞台でも、色とりどりの扇子が活躍していました。お礼申し上げます。