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No.1192 心の能力

「ジョーク」はお好きですか?
 
「校長先生、絶好調!」
「うちの家内は、おっかない。」
「アルミ缶の上に、ある蜜柑。」
「のび太のママは、のびたまま。」
「温(あった)かいの、あったかい?」
等々、とんちの一休さんがドン引きしそうなダジャレですが、眉間のシワのアイロンがけの一助にはなりそうです。そのジョークの上を行く「ウィット」には、「うーん!」と考えさせられる深みが…。

2000年シドニーオリンピックサッカー決勝トーナメントの1回戦で、トルシエ監督率いる日本チームは、当時無名のアメリカチームと戦いました。この試合の前に、日本人記者がアメリカチームの監督(ブルース・アリーナ?)に、大変失礼な質問をしています。
「日本人の応援があまりに多いので、やりにくくないですか?」
すると、監督はすかさずこう応えたそうです。
「私は随分長くサッカーを観てきているが、観客が得点したのを見たことは一度もない。」
外国人の「ウィット」には、惚れ惚れさせられます。記者は返り討ちに遭いました。その試合は、2対2のまま延長戦に突入しましたが決着がつかず、遂にPK戦の4対5で日本は敗けました。トルシエ神話の崩れた試合でした。
 
もう一つ、好きな「ウィット」があります。ロシアの「アネクドート」(笑い話)として有名な古典的作品ですが、その反体制的な政治風刺の切れの良さに唸ります。

「ある男が赤の広場の塀に『フルシチョフはバカだ!』と落書きをしました。当然、官憲から逮捕され、懲役11年となりました。罪状のうち、1年は国の財産である壁を汚したため。残りの10年は国家機密漏洩罪であったためです。」
 
ぼく、笑っちゃいました!何とも、シビれる話の構成です。フルシチョフ首相をコケにした市民作家の頭の中を覗いてみたいと思うのは、こんな時です。さらにこのウィットには続編がありました。

「男が1年目の刑期を終えた頃、フルシチョフがイギリスを公式訪問しました。すると、まもなくこの落書き男は釈放されました。理由は、国家機密がもはや機密ではなくなってしまったからです。」

もう、お腹がよじれるほど笑いました。「ウィット(wit)」とは「心の能力」の意味だそうですが、恐るべきロシア市民の反骨精神、批判能力です。
 
今日、「フルシチョフ」は「〇ー〇〇」に置き換えられているかも?
「ロシアの殺し屋、恐ろしや!」


※画像は、クリエイター・きょうりゅうのたまごさんの、ロシア民話「大きなカブ」の主人公たちが布絵本から飛び出した1葉だそうです。民衆の力の大きさを思わせます。お礼申し上げます。