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No.844 タモリズム「逆もまた真なり」?

『森田一義アワー 笑っていいとも!』は、1982年(昭和57年)10月4日から2014年(平成26年)3月31日まで続いた長寿番組の一つです。2002年4月5日に放送5,000回となり、「生放送単独司会世界最長記録」としてギネス世界記録に認定されたこともありました。しかし、視聴率低迷(6%台)からの回復という事で、31年半の歴史に幕を下ろすこととなりました。全放送回数は、8,054回に及んだそうです。
 
そのタモリさんに「やる気のある者は去れ」という逆説的な名言があるということを知ったのは、フリーライター・仁科友里さんの「マイナビニュース 第39回 名言ななめ斬り」(2022年12月27日)でのことでした。そこには「笑っていいとも」が長く続いた理由が伺われます。

私たち昭和生まれの者に限らず「やる気のない者は去れ」のフレーズは、日本人が大義名分として、いや金科玉条として、今もあらゆる場面で使われ続けているものです。それは教訓的であり、威圧的であり、一種暴力的でパワハラ的な響きさえします。そして、「やる気」ばかりを見て評価の対象としがちです。
 
しかし、仁科友里さんは言うのです。
「タモリのように観察眼があると、誰かが前に出た時は後ろに行くというような判断が出来るので、番組全体のバランスが保たれる。やる気のある人は前に出たがりますが、みんなが前に出ると、番組はとっちらかってしまいます。『やる気のある者は去れ』は、『よく周りを見ろ』と同義なのではないかと私は思っています。」

この指摘は、どんな職場でも当てはまるのではないかと思います。「やる気がある」がゆえに己を恃み、見落としがちな周りへの配慮。職場は個人の力よりチームの力の方が大きな成果を上げられます。特に、バラエティー番組は、個性豊かな複数の芸人たちで構成され、人を生かし、自分を生かす手練手管が求められるのでしょう。タモリさんの「名言」は、「至言」だと私は思います。そんなタモリ的パラドックスにシビレてしまうのです。
 
さて、忘れてはならない日本のもう一つの長寿番組に、「徹子の部屋」があります。「笑っていいとも」よりも6年早く、1976年(昭和51年)2月2日から始められたそうです。2015年(平成27年)5月27日には1万回を迎え、黒柳徹子さんに「同一司会者によるトーク番組」としてギネスの認定証が贈られました。47年目の今もその記録は更新され続けています。50周年という金字塔が見えるようです。
 
「ひょっとすると、ゲストよりも司会者の方が話が長い疑惑」もありますが、徹子さんの軽妙な語りはゲストを際立たせ、多方面からの質問で「視聴者の知りたい指数」を満足させてくれます。
 
「編集をせずにゲストが語ったそのままを、手を加えないで放送する」
「ゲストが聞いてほしくないことは聞かない」
「スキャンダルは扱わない」
「制作スタッフは変更しない」
をポリシーとした番組だそうです。こんな配慮も長寿たるゆえんなのかもしれません。
 
長く続けることを良しとし、長く愛することが出来る日本人がゆかしく思われるのです。


※画像は、クリエイター・山根あきらさんの、「タモリさんのCD」の一部です。トレードマークのサングラスを眼帯とした発想もユニーク。お礼を申し上げます。