桃太郎参上
第2夜
夜も深くなり、換気扇の音しか聞こえないほど静かな部屋で、龍太は1人寝付けずにいた。
すると、部屋の扉が開いて、明かりが差し込んだ。眠い目を擦りながら正体を探ろうと、階段を降りると、そこは食べ物がたくさん並んだビュッフェのようだ。
辺りを見ると、何人かいて、皆美味しそうに寿司やステーキを食べているではないか。龍太も彼らに倣い、それらを食べようとするも、何か独特な、鼻を通り過ぎて脳のリミットが外れてしまいそうな匂いがする。毒が盛られているのではなさそうではあるも、手がそれを拒絶する。匂いを嗅ぐだけでは大丈夫そうだが、食べてしまえば心と体がお別れしてしまいそうな。そう思った龍太は怪しく感じ始め、食べることを躊躇った。
「ここは自分のいる場所ではない」
ビビッときた龍太は、一目散にその場から逃げようとした。今度は、逃げようとする龍太をビビッと発見した管理人が、警備員を連れて追いかけてくるでないか。
大広間を駆け抜け、廊下に飛び出し、もとの階段へ急ぐも、まだ追いかけてくる。龍太は咄嗟に椅子と机でバリケードを作るも、警備員は簡単に破壊して追いかけてくる。次の一手を考えながら逃げて行くと、冷蔵庫から桃を取り出し、警備員に向かって投げた。すると、桃からは桃太郎が生まれ、鬼退治のように警備員と戦う。少しの時間稼ぎで距離が離れた龍太は、階段のところまで辿り着き、階段の途中をハンマーで壊して二度と行き来できないようにした。
やっと部屋に着いたと胸を撫で下ろしていると、窓越しに朝日が見えた。また眠れなかったと落胆してベッドに入ろうとすると、もう既に龍太が寝ているではないか。精神だけが浮遊していたと理解して、心と体を結んだ。
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