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むかしむかし日が向かうところに...

第1夜

ある晴れた日の夜、龍太はいつもより早くベッドに入った。夢の中では、龍太がただ一人、永遠に白い場所に立っていた。

天地が最初にできたとき、人間は龍太しか存在していなかった。しばらくして、一面白色の世界に色がついて、葦の芽が伸び、地面ができて、雲ができた。そして、土ができ、植物ができて土が固まり、初めて龍太以外の人間が1人現れた。その人は女性で、まるで龍太が見えていないかのように本を読みふけっていて、豊富な知識を持っているようだった。

龍太はただ遠くから眺めていただけで、彼女の顔も名前も知らなかったので、仮名としてミクと呼ぶことにした。
しばらくすると、今度は男女合わせて12人がやってきた。言葉を持っていないのか、彼らのほとんどは一言も発さずにちりじりになってしまい、遥か遠くへ去ってしまった。
その中で、ある1組の男女がミクの近くに座っていた。名はカズとスズという。

ある日、ミクはカズとスズの二人に、「この漂っている国を統治し、私の理想の世界を作りなさい」と命令した。二人はミクから沼矛を賜り、治める国へ赴いた。橋を渡り、着いた島は墺島。

その島の真ん中に、二人は大きな家を建てた。部屋の外側に廊下が一周している造りになっている。スズは「あなたの体はどうなっているの?私の体は成長しても足りないところが一つだけあるの」といった。カズは「僕の体は成長して、余っているところが一つだけあるの。だから、僕の余っているところで君の足りないところを塞いで、国の統治をする人を生み出そうと思うんだよ。どう?」と答え、スズは「ええ、いいわ」と言った。そこで、カズは「そしたら、この廊下を僕が右回りで、スズが左回りで進んで奥の部屋に行こう」といい、約束して歩きだそうとしたとき、スズは「まあ、なんていい男なんだ」といい、それに応えてカズは「まあ、なんていい女なんだ」と言った。言い終わった後、スズは女が先に行ったのはよくなかったと伝えた。

障子に隠れて二人を見ていた龍太は、ぼかしているのかいないのか滑稽な誘い文句に笑みをこぼしていた。
そうして生まれた子はヒムコ。二人は大事に育てようとしたが、とある日の夜、大雨で流されてしまった。
二人は話し合いの末、産んだ子が良くなかったと結論づけ、ミクのもとへ行き、教えを乞うた。ミクは、読んでいた本を閉じ、占いをはじめ、「スズが先に言ったのが良くなかったから、もう一度やり直しなさい。」と助言した。二人は助言通り行い、生まれてきた子に地方の統治をさせた。

国の統治は既に終え、今度は子を産むことに力を入れた。生まれた子のうちの一人はホノ。幼いころから火を巧みに使え、成長して威力が強くなった炎によってスズはやけどをしてしまい、倒れてしまった。その時生れてきた子の子どもはキヨ。彼女は食べ物が大好きで、両手にいつも食物をもっている。しばらくして、スズはホノを生んだことにより、遂に亡くなってしまった。

スズが亡くなってからも、ホノは常に炎をまとった剣を振り回し、人々を怖がらせた。
同じく怖くて震えている龍太は、遠くから息をひそめて様子を見ていたが、皆がこちらへ走ってくるので身を乗り出して状況を確認しようとすると、ホノが剣を持って自分の方へ向かってくるではないか。ひとたび見つかってしまうと、もう生きては帰れない。今からでは逃げられそうにないので隠れていると、やはり運悪く見つかってしまった。
龍太はつばを飲み込み、「ああ、ご勘弁を~命だけは助けてください!」と哀願するも叶わず。ホノが剣を振り上げて殺しにかかったそのとき、ベッドから転げ落ちて現実世界で起きた。

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