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あれから22年


 塚本晋也監督「ほかげ」を観たので感想を。「野火」は戦時中でしたが、こちらは戦後のお話。
 前半は半分焼け残った居酒屋の中で全てが描かれ、ものすごい閉塞感と緊張感で胸が苦しくなりました。趣里演じる夫と子を戦争で亡くした居酒屋の女性、そこへ転がり込んできた復員兵と戦争孤児の少年が「擬似家族になって幸せを取り戻しました」とはいかず。毎晩のように悪夢を見て、戦争が終わっても心の傷は残り続けるのだという現実を思い知らされることに。
 初めは居酒屋の女性が主人公かと思いきや、少年が外の世界へ飛び出していく後半で「これは彼の目を通して描かれる戦後とPTSDの物語なのだ」と気付かされました。少年役の塚尾桜雅の眼差しが強く印象に残る闇市のシーンは、微かな希望と「子供たちに再び戦争を体験させるようなことが絶対あってはならない」という監督の強い意志を感じました。

 さて、あれから22年という綾小路きみまろの漫談みたいなタイトルにしたのは「ほかげ」の隣に「アメリ」のリバイバル上映のポスターがあったから。他にも「ゴーストワールド」「ヴァージン・スーサイズ」「ロッタちゃん はじめてのおつかい」「バッファロー'66」など私が大学生のミニシアターブームの頃に観た映画が続々とリバイバル上映される昨今。懐かしさともうそんなに時が経ったのかという驚きと、「ゴーストワールド」のイーニドよりブシェミ演じるシーモアの方に年齢的には近いのにあまり中身は変わっていない自分に対する諦めにも似た気持ちがないまぜに。監督のテリー・ツワイゴフはもう映画を撮っていないのかと調べていたら、最近のインタビューが出てきたのでリンクを貼っておきます。(監督の猫さん可愛い。)クリスマスシーズンにはぴったりな「バッドサンタ」も最高なので未見の方はぜひ。

 見出し画像は大掃除ついでにもう整理しようかと思っていた当時の映画パンフレットの一部。ロッタちゃんは絵本のような凝ったデザインで、すっかり忘れていたけれどイラストが奈良美智という豪華さ。(売らないで取っておくべきかまだ迷い中。)
 おかゆ嬢の年内最後の検診も終わり、今のところちゃんとお薬が効いて血液検査とエコーの結果も問題なかったので引き続き投薬を続けながら様子を見ていくことに。吐く事もなく食欲も旺盛で体重も戻ってきて一安心です。私もだいぶ落ち着いてきたので、カウリスマキの「枯葉」とヴェンダースの「PERFECT DAYS」あたりは年内に観られればと思います。