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「悪は存在しない」


海外版ボスターそれぞれデザインが違って楽しい

 GW後半がスタートしてあまり読む人もいないでしょうが、忘れないうちに濱口竜介監督「悪は存在しない」の感想を。
 「ドライブ・マイ・カー」でも使われていた、石橋英子による美しくもどこか不穏な音楽と下から見上げたような森の映像から始まるオープニングにまず心を持っていかれてしまいました。うどん屋での会話など笑えるシーンを挟みつつも、なんとなく続く嫌な予感は途切れることがなくラストシーンまで。人によっては唐突な幕切れに感じるかもしれませんが、後から考えると父・巧と娘・花の会話などあちこちにヒントが。
 最初に想像していた「グランピング施設を作ろうとする都会の芸能事務所の人間」と「それに反対する水挽町の住民」という単純な二項対立の話ではありませんでした。そもそも水挽町には他所から移住してきた人間も多く全面的に反対というわけでもない。また事務所側の人間も、町の住民と交流する中で気持ちに変化が訪れたりもする。わかりやすい悪を見つけて叩くことは簡単ですが、都会と地方、人間と動物、善と悪などその境界線は実は曖昧で割り切れるものではないということがとても分かりやすく描かれていたと思います。
 最近のニュースで野生の熊がトラックに俊敏な動きでアタックしている映像を観て、普段は猟友会を憎んでいる私も流石に震えました。あんなの不死身の杉本でなければ太刀打ちできないし、自然は人間に恩恵を与えると同時に命を奪うこともある。でも、それは悪と言えるのか?そもそも地球にとってみれば人間なんて迷惑でしかないし「自然と共生」なんて容易く口にするものではないなと反省しました。花はより自然に近い存在であり、濱口監督版「もののけ姫」のようにも感じられました。
 上映時間も短めで構成もシンプルなので、濱口作品を観たことがないという方にもおすすめです。それにしてもヴェネチア映画祭で銀獅子賞を授賞したにも関わらず、上映劇場が都内でたった2館なのは残念な限り。やはり「PERFECT DAYS」と扱いが違うのは広告代理店ががっちり入っていたどうかの違いでしょうか。(役所さんは良かったけれど、後から色々知って印象に変化が)

ル・シネマには監督のサインも
「ヴァージン・スーサイズ」の元ネタとしても有名ですね

 ル・シネマでは「ピクニックatハンギングロック」の4Kリストア版の上映も始まったので楽しみです。母が好きだった映画でもあり、劇場で観られるのは嬉しい。

おまけ。今年も会えたね、フレッシュネスのパクチーチキンバーガーグリーンカレー

 明日はおかゆ嬢の定期検診があるし、見出し画像の鈴木亮平版「シティハンター」「ゲゲゲの謎」「カラオケ行こ!」も配信で観たいしあっという間に私のGW後半はゲットワイルドに過ぎていきそうです。皆様も暑さにお気をつけてお過ごしください。